最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ヒーローコンテンツ特掲不記載事件

大阪地裁令和8.1.20令和5(ワ)9267著作物使用差止請求事件PDF
別紙

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 松川充康
裁判官    阿波野右起
裁判官    西尾太一

*裁判所サイト公表 2026.1.30
*キーワード:イラスト、キャラクター、制作委託契約、著作権の帰属、特掲、法人著作、著作者人格権不行使合意

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■事案

ヒーローコンテンツの著作権の帰属などの確認が争点となった事案

原告:プロダクション
被告:ガス販売会社、広告代理店

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法15条1項、27条、28条、61条2項

1 確認の利益
2 原告が本件著作物1ないし4及び11を創作したか
3 法人著作の成否
4 著作権譲渡の合意の成否
5 著作者人格権不行使合意の成否
6 錯誤の有無

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■事案の概要

『原告と被告らとの間において、別紙1「著作物目録」記載の各著作物につき、原告が複製権、公衆送信権、翻案権、二次的著作物に関する原著作者の権利その他一切の著作権及び著作者人格権を有することを確認する』事案(2頁)

〈経緯〉

H29 原告が広告代理店と制作委託契約締結
H29 原告が悪の秘密結社に対して参画打診
H30 原告がガス販売会社と使用許諾契約締結
R02 ドゲンジャーズ企画に参画

ヒーローコンテンツ:ヤマシロンなど

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■判決内容

<争点>

1 確認の利益

原告は、被告らとの関係において、原告が本件各著作物に関する著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めました。
この点について、裁判所は、確認の利益について結論として、原告と被告ら間の本件各著作物の著作権及び著作者人格権に係る現在の紛争の抜本的解決のため、本件訴えには確認の利益が認められると判断しています(25頁以下)。

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2 原告が本件著作物1ないし4及び11を創作したか

本件各著作物のうち、本件著作物1ないし4及び11については、訴外悪の秘密結社が創作したことについては争いがない前提のもと、原告も共同して創作した共同著作物で、原告も共同著作者といえるかが争点となっています(26頁以下)。
結論として、裁判所は、原告は、本件著作物1ないし4及び11に関して共同著作者であると認めています。
以上から、原告は、本件各著作物全部について、著作者であると認められています。

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3 法人著作の成否

被告らは、原告が本件各著作物を被告山代ガスの職務上、作成したものであるため、本件各著作物が原告の創作したものであったとしても著作者となるのは被告山代ガスであり、原告には著作権及び著作者人格権は帰属しない旨主張しました(30頁以下)。
この点について、裁判所は、結論として、被告らの法人著作物性の主張を認めていません。

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4 著作権譲渡の合意の成否

被告らは、原告が、被告山代ガスに対して本件各著作物に関する著作権を著作権法27条及び28条に定める権利を含めて譲渡する旨の合意をした旨主張しました(31頁以下)。
この点について、裁判所は、結論として、原告及び被告らの間で、著作権法61条2項の推定を覆滅させるべき事由があるとは認められず、本件各著作物に関する著作権のうち、著作権法27条及び28条の権利は原告に留保されていると判断。被告らの主張を認めていません。

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5 著作者人格権不行使合意の成否

本件各著作物に関する著作者人格権を行使しない旨が合意されていたかどうかについて、裁判所は、原告及び被告らの間では、本件各著作物の著作権が、全般としては原告から被告山代ガスに譲渡されたものの、著作権法27条及び28条に定める権利については原告に留保されており、著作者人格権のうち同一性保持権について、黙示で不行使の合意があったとするのは、著作権法27条及び28条の権利が原告に留保されたことと整合せず、当事者の合理的意思解釈として採用できないなどと判断。
結論として、公表権、氏名表示権を除く、同一性保持権についての不行使合意の成立を否定しています(40頁以下)。

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6 錯誤の有無

原告は、原告及び被告らの間では、本件各著作物に係る翻案権等の譲渡及び著作者人格権不行使の合意がされていないものと誤信していた上、被告山代ガスが原告を自らの業務の従事者と位置づけていたとは想像もつかなかったことから、これらの点について錯誤があり、改正前民法95条により、本件各著作権の移転原因である本件委託契約1全部が無効であると主張しました。
この点について、裁判所は、本件委託契約1全体を無効とすべきような錯誤の成立を否定しています(42頁)。

結論として、原告と被告らとの間において、各著作物について、原告が翻案権等の著作権法27条に定める権利及び同法28条に定める権利並びに著作者人格権を有すること(ただし、原告は、被告らに対し、著作者人格権のうち同一性保持権を行使することはできるが、公表権及び氏名表示権を行使することはできない。)を確認する限度で理由があるとして認容されています。

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■コメント

制作委託契約書に特掲(61条2項)がなく、紛争の一因となっています。
ガス販売会社の創立50周年記念事業として広告宣伝用にヒーローコンテンツが制作されましたが、途中から別の制作会社が参入するなどして、権利関係について齟齬が生じた事案となります。