最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

料理写真無断転載事件(控訴審) 

知財高裁令和7.11.6令和7(ネ)10044等各損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF
原審
東京地方裁判所令和5(ワ)15310(原審第一事件)、同6(ワ)5142(原審第二事件) 裁判所サイト未登載

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 響
裁判官    菊池絵理
裁判官    頼 晋一

*裁判所サイト公表 2025.12.5
*キーワード:料理、写真、著作物性、引用、慰謝料

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■事案

ツイッターに掲載した料理写真の著作物性などが争点となった事案

控訴人兼附帯被控訴人(原審第二事件被告):個人
被控訴人兼附帯控訴人(原審第一事件、同第二事件原告):個人

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■結論

本件控訴棄却、本件附帯控訴一部変更

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■争点

条文 著作権法21条、23条、32条

1 本件各投稿による権利侵害(名誉感情、プライバシー権、著作権及び著作者人格権)の有無及び共同性
2 損害額

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告Yらによるツイッター上の本件各投稿が、原告の名誉感情、プライバシー権、著作権及び著作人格権を侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、300万円及びこれに対する各不法行為の後である令和4年8月15日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『原審第一事件は、原告が原審被告A、原審被告B及びCに対し共同不法行為に基づき損害賠償金の連帯支払を求める事件であり、原審第二事件は、原告が被告Yに対し共同不法行為に基づき損害賠償請金の支払を求める事件である。両事件は、併合審理され、原審第一事件のCに対する請求に係る部分は、原審における訴えの取下げにより終了した。』

『原審は、被告Y及び原審被告Aに対する各請求について、連帯して20万円及びこれに対する令和4年8月15日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を命ずる限度で認容し、その余の請求を棄却し、原審被告Bに対する請求については全部棄却した。被告Yは、敗訴部分を不服として本件控訴をしたが、原審被告Aは控訴しなかった。原告は附帯控訴して被告Yに対する請求を全額認容するよう求めた。』

『したがって、当審における審理の対象は、原告の被告Yに対する請求全部である(ただし、原告は、原審被告A、被告Y及びCが意思を通じ合って原告に対する侮辱その他の不法行為を行った旨主張しているので、その限度では、本件各投稿のうち原審被告A及びCが行った各投稿も審理の対象となる。)。なお、原告は、原審においては、著作者人格権侵害の内容として、同一性保持権のみならず、公表権侵害も主張していたが、当審において、同一性保持権侵害のみを主張する旨、その主張を変更した。』
(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件各投稿による権利侵害(名誉感情、プライバシー権、著作権及び著作者人格権)の有無及び共同性

(侮辱の不法行為性について略)

番号44乃至50に係る著作権等の侵害性について、控訴審は、
「本件写真(甲14の1から7まで)は原告が撮影したものであるが、写真の構図や陰影等は一義的に決まるものではなく、原告の創意工夫があることが推認されるから、本件写真におよそ創作的表現が含まれていないということはできない。したがって、本件写真は、原告の著作物であり、これに反する被告Yの主張は採用することができない。」
などとして、結論として、複製権、公衆送信権侵害性は認め、同一性保持権侵害性、引用の抗弁は認めていません(11頁以下)。

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2 損害額

(侮辱の不法行為の損害論について略)

控訴審は、著作財産権侵害による精神的損害と著作物人格権侵害による精神的損害とは両立し得るものであって、両者の訴訟物は別である旨の最高裁判例(最高裁昭和58年(オ)第516号昭和61年5月30日第二小法廷判決(パロディモンタージュ写真事件)に言及した上で、著作財産権侵害により精神的損害が発生することは否定されない(民法710条参照)と説示。著作権(複製権、公衆送信権)侵害により原告が受けた精神的損害を慰謝するための慰謝料について、1万円をもって相当と判断しています(13頁以下)。

結論として、原告の被告Yに対する請求は、侮辱による不法行為による慰謝料として20万円、著作権侵害による慰謝料として1万円が認められ(計21万円)、これと異なる原判決について一部変更、本件控訴は理由がないとして棄却の判断となっています。

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■コメント

原審にアクセスできておらず、料理の写真がどのような内容のものだったか未確認です。
損害論については、同一性保持権侵害性が否定されていますが、複製権や公衆送信権侵害の部分で慰謝料が認められています。

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■参考判例

最高裁昭和61.5.30昭和58(オ)516(第二小法廷)
判示事項:
一個の行為により同一著作物についての著作財産権と著作者人格権とが侵害されたことを理由とする著作財産権に基づく慰藉料請求及び著作者人格権に基づく慰藉料請求と訴訟物の個数
判決文

「複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが(旧著作権法(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの。以下「法」という。)二条ないし一〇条、二三条等)、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである。」