最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

漫画海賊版損害賠償請求事件(対クラウドフレア)

東京地裁令和7.11.19令和4(ワ)2388損害賠償等請求事件PDF
別紙1
別紙2

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 高橋 彩
裁判官    西山芳樹
裁判官    瀧澤惟子

*裁判所サイト公表 2025.11.21
*キーワード:海賊版、出版社、出版権、侵害幇助性、損害論

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■事案

漫画海賊版サイトへのインターネットサービス事業者による出版権侵害の幇助性などが争点となった事案

原告:出版社ら
被告:インターネットセキュリティ業米国法人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法47条の4、114条3項、通則法17条、情報流通プラットフォーム対処法3条1項柱書本文

1 国際裁判管轄の有無
2 被告が自動公衆送信の主体に当たるか
3 関係役務提供者として被告の損害賠償責任が制限されないか
4 被告が本件運営者による原告らの出版権の侵害を幇助したか
5 本件キャッシュデータの自動公衆送信が電子計算機における著作物の利用に付随する利用として著作物を利用できる場合に当たるか
6 原告らの損害の発生及びその額

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■事案の概要

『本件は、出版社である原告らが、被告に対し、原告らが出版権を有する別紙著作物目録記載1〜4の各漫画(以下「本件著作物1」などといい、これらを「本件各著作物」と総称する。)の複製データが海賊版サイトから配信された際に、被告がコンテンツ・デリバリー・ネットワークサービス(以下「被告サービス」という。)を提供したことにより、原告らの出版権(公衆送信権)が侵害されたと主張して、各原告に対し、不法行為(主位的に民法709条、予備的に同法719条2項)に基づく損害賠償金の一部である1億2650万円及びこれに対する不法行為以後の日である令和4年10月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで同法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である(損害期間は、原告KADOKAWA及び原告講談社につき令和3年12月14日から令和4年2月28日まで、原告集英社につき令和3年1月8日から令和4年2月28日まで、原告小学館につき令和2年5月8日から令和4年2月28日までであり、以下「本件損害期間」ということがある。)。』

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■判決内容

<争点>

1 国際裁判管轄の有無

裁判所は、原告らが出版権を有する本件各著作物の複製データである本件コンテンツ及び本件キャッシュデータが被告サーバから日本国内のエンドユーザ(本件エンドユーザ)に対して自動公衆送信されたことで、原告らの出版権が侵害され、日本国内で損害が生じたという客観的事実を認めることができることから、不法行為の結果が発生した地は日本国内にあるといえると判断。
結論として、本件訴えについて、民事訴訟法3条の3第8号に基づく国際裁判管轄が認められる。また、本件における準拠法は、加害行為の結果が発生した地の法である日本法であると判断しています(法の適用に関する通則法17条)(23頁)。

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2 被告が自動公衆送信の主体に当たるか

裁判所は、自動公衆送信の主体性について最高裁の判断に言及しつつ、本件について、ホスト型配信及びキャッシュ型配信における自動公衆送信の主体は被告ではなく本件運営者であったと判断しています(26頁以下)。
結論として、被告による出版権侵害は認められないとして、原告らの主位的請求はいずれも理由がないと判断されています。

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3 関係役務提供者として被告の損害賠償責任が制限されないか

結論として、被告の出版権侵害の幇助による損害賠償責任は、情報流通プラットフォーム対処法3条1項の規定の適用により制限されないものと判断されています(28頁以下)。

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4 被告が本件運営者による原告らの出版権の侵害を幇助したか

裁判所は、本件運営者が、被告サービスにより多くの配信を効率的に行うことができたこと、また、被告が、本件利用契約に際して何らの本人確認手続が行われなかったものと推認されることを理由に、被告は、本件各ウェブサイトについて被告サービスを提供することにより、本件運営者による原告らの出版権の侵害を容易にしたということができ、これは、本件運営者による原告らの出版権の侵害の幇助行為に当たるといえると判断しています。
また、被告は、本件通知の受領から1か月を経過した時点で被告サービスの提供を停止することができたと認められるから、同時点で被告サービスの提供を停止する義務を負うところ、これを怠ったものといえると裁判所は判断。
結論として、被告は、本件時点以降、本件運営者による原告らの出版権の侵害を過失により幇助したものと認められると判断しています(33頁以下)。

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5 本件キャッシュデータの自動公衆送信が電子計算機における著作物の利用に付随する利用として著作物を利用できる場合に当たるか

被告は、キャッシュ型配信において本件キャッシュデータを自動公衆送信することによる本件各著作物の利用は、著作権法47条の4第1項2号又は同項柱書により著作物を利用することができる場合に当たり、出版権の侵害に当たらないと主張しましたが、裁判所は、キャッシュ型配信における本件キャッシュデータの自動公衆送信が47条の4第1項柱書本文の「付随する利用に供することを目的とする場合」に当たるということはできないなどとして、被告の主張を認めていません(35頁以下)。

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6 原告らの損害の発生及びその額

(1)本件各著作物の1話当たりの使用料相当額損害(114条3項)
(2)弁護士費用相当額損害

いずれも別紙記載の金額

KADOKAWA
    1億2140万0928円
講談社 4億6755万7860円
集英社24億0974万0203円
小学館 6億3742万2086円

(40頁以下)

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■コメント

漫画作品の海賊版の流通を助長したとして、コンテンツデリバリーネットワークサービス事業者の幇助責任が肯定されています。

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■参考サイト

KADOKAWA 米クラウドフレア社に対する勝訴(著作権侵害判決)のお知らせ(2025.11.19)
ニュースリリース

ITmedia NEWS 「「海賊版サイトへのCDN提供継続」で約5億円の損害賠償命令、クラウドフレアに出版4社勝訴」(2025年11月19日 19時07分)
記事