最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

徳冨蘆花記念文学館事件(第4事件)

東京地裁令和6.12.23令和6(ワ)70126使用差止め等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官    武富可南
裁判官    古賀千尋

*裁判所サイト公表 2025.5.9
*キーワード:編集著作物、職務著作、既判力、訴訟物

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■事案

文学館の展示物の著作権の帰属などが争点となった事案(第4訴訟)

原告:文学館元職員
被告:渋川市

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条、15条

1 本案前の争点
2 著作権の帰属先

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■事案の概要

『本件は、被告の元職員である原告が、本件文学館に展示等されている本件解説文及び本件脚本に係る著作権は原告に帰属していると主張し、被告は上記展示等により原告の当該著作権を侵害しているとして、被告に対し、著作権法112条1項に基づき本件解説文及び本件脚本の使用差止めを求めるとともに、民法709条、著作権法114条2項、3項に基づき、損害賠償金の一部として100万円の支払を求める事案である』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本案前の争点

前訴2、3判決の既判力の及ぶ範囲について、前訴2判決で判断の対象とされた訴訟物は、編集著作物としての本件各展示物に係る著作権及び著作者人格権に基づく請求権であるのに対して、本件差止請求に係る訴訟物は、本件各展示物のうち、言語の著作物としての本件解説文及び本件脚本に係る著作権に基づく請求権であり、訴訟物が異なると裁判所は判断。
また、本件における差止請求に係る訴訟物は、前訴3の控訴審における請求拡張部分の趣旨をいうところ、当該請求拡張部分は、同控訴審において全部却下されている以上、前訴3判決の既判力は、本件における差止請求に係る訴訟物に直ちに及ぶものとはいえないなどと裁判所は判断しています。

結論として、前訴2、3判決の既判力の及ぶ範囲についての被告の主張が認められず、本件の訴えが信義則違反とはされていません(8頁以下)。

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2 著作権の帰属先

本件解説文と本件脚本についての著作権の帰属について、原告の主張はいずれも認められていません(9頁以下)。

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■コメント

前訴が3つあり、都合4つ目の本人訴訟となります。

前訴1:前橋簡裁平成16(ハ)333
    前橋地裁平成16(レ)14
前訴2:前橋地裁平成31(ワ)215
    知財高裁令和3(ネ)10027
    最高裁第三小法廷令和3(オ)1225、同(受)1505
前訴3:東京地裁令和4(ワ)4676
    知財高裁令和4(ネ)10120
    最高裁第三小法廷令和5(オ)1471号、同(受)1863

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