最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
アニメ制作管理運用契約違反事件
東京地裁令和7.2.21令和4(ワ)4461等著作権不存在確認請求事件PDF
別紙
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 間明宏充
裁判官 塚田久美子
*裁判所サイト公表 2025.4.18
*キーワード:アニメ、管理契約、製作委員会契約、二次利用、債務不履行、信義則
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■事案
アニメ作品の原作管理契約を巡り著作権者間で紛争となった事案
原告:映画企画製作会社
被告:映画会社、プロデューサー
--------------------
■結論
請求認容
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■争点
1 被告東宝の行為が本件契約所定の権利喪失事由に当たるか
2 本件契約関係解消にはやむを得ない事由が必要であるか及び当該事由の有無
3 原告による本件契約関係解消の主張が信義則に反するか
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、原告、被告東宝及び被告乙の三者で、別紙著作物目録記載の作品(以下「本件原作」という。)の著作権の帰属並びに本件原作及びアニメーション作品「ファンタジスタドール」(以下「本件作品」という。)の管理運用等を定めた契約を締結し、本件原作の著作権を共有する旨等の合意をしていたところ、被告東宝の行為が当該契約所定の権利喪失事由に該当し、被告東宝は本件原作の著作権を喪失したと主張して、原告、被告東宝及び被告乙の間で、被告東宝が本件原作の著作権を有しないことの確認を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.03 「ファンタジスタドール」原著作契約(本件契約)締結
H25.09 共同事業契約締結、製作委員会組成
H25.10 原告が被告東宝に申し入れ
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■判決内容
<争点>
1 被告東宝の行為が本件契約所定の権利喪失事由に当たるか
原告は、被告東宝が原告との協議を経ることなく本件作品の事業利用を行っているとして、被告東宝に本件契約上の不履行があると主張しました。
(1)本件契約所定の協議の意義について
本件契約が本件作品の事業利用に際してメンバーで協議を行うことを求めている趣旨について、裁判所は、「本件契約所定の協議は、被告東宝からメンバーの他の構成員に対する事業利用に係る報告をし、これに関する意見を求めると
いう方法によっても行うことができるものの、被告東宝からメンバーの他の構成員に対して事業利用に係る報告をするに当たっては、事業利用の具体的な態様や使用が予定されている図案等を併せて示す必要があるというべきである」と判断しています(16頁以下)。
(2)メンバー間の協議が不要な本件作品の事業利用の有無について
被告東宝は、被告東宝自らが本件作品の事業利用の主体となって実施する場合や、第三者に対する利用許諾を伴う事業利用であっても、取引総額が少額でかつ急を要する場合には、メンバー間の協議を経ることなく本件作品を事業利用することができると主張しました。
この点について、裁判所は、結論として、本件契約上、本件作品の事業利用の全てについてメンバー間の協議が必要と認めるのが相当であるとして、被告東宝の主張を認めていません(19頁)。
(3)被告東宝による本件作品の事業利用が本件契約に違反するかについて
本件作品のビデオグラム化事業以外は、国内番組販売、国内配信許諾、国外販売、音楽配信、広報宣伝活動、ゲーム化事業、商品化事業、出版化事業、舞台化事業、音楽化事業、音声化事業のいずれも、被告東宝による本件事業利用が、原告との協議を欠き、本件契約が規定する義務に違反すると裁判所は判断しています(19頁以下)。
(4)被告東宝の行為は本件契約8条1項5号所定の事由に当たるかについて
裁判所は、被告東宝の行為は、「本件契約に違反し、他のメンバーから文書による相当な期間を定めた催告があったにもかかわらず、当該期間内に違反を是正しないとき」(本件契約第8条1項5号)に当たると判断しています(25頁以下)。
結論として、裁判所は、被告東宝の行為は、本件契約所定の権利喪失事由に当たると判断しています。
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2 本件契約関係解消にはやむを得ない事由が必要であるか及び当該事由の有無
裁判所は、本件契約は、その契約期間が長期間に及ぶもので、本件作品の事業利用に伴って多数の第三者との間で多くの取引、契約関係が生じることが想定されているものであるとしても、本件契約の関係を解消するために、やむを得ない事由を要する旨の明示の定めはなく、また、本件契約関係を解消するためにやむを得ない事由を要することが本件契約外で合意されたと認めることもできないと判断。
結論として、本件契約の関係を解消するために、やむを得ない事由を要すると認めることはできないと判断しています(26頁以下)。
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3 原告による本件契約関係解消の主張が信義則に反するか
裁判所は、結論として原告が本件契約関係の解消を主張することが信義則に反し許されないということはできないと判断しています(28頁以下)。
結論として、裁判所は、被告東宝の行為は、本件契約所定の権利喪失事由に該当し、被告東宝は本件原作の著作権を喪失したとして、原告、被告東宝及び被告乙の間で被告東宝が本件原作の著作権を有しないことの確認を求める原告の請求は理由があると判断しています。
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■コメント
TV番組放送開始の兼ね合いもあって、著作権を25%保有するアニメ制作会社との協議を省いて幹事社が作品の展開を行ってしまい、展開のほぼすべてがアニメ制作会社との間の管理運用契約に違反すると判断されてしまっています。
原告のサイトを見ると、作品の原作者は被告クリエイティブプロデューサー、あるいは、「ファンタジスタドールプロジェクト」というふうにサイト表記からは読み取れますが、また、アニメーションプロデューサーが原告代表者ということから、作品に対する原告の実関与の度合いが強いことが伺えます。
アニメ制作管理運用契約違反事件
東京地裁令和7.2.21令和4(ワ)4461等著作権不存在確認請求事件PDF
別紙
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 間明宏充
裁判官 塚田久美子
*裁判所サイト公表 2025.4.18
*キーワード:アニメ、管理契約、製作委員会契約、二次利用、債務不履行、信義則
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■事案
アニメ作品の原作管理契約を巡り著作権者間で紛争となった事案
原告:映画企画製作会社
被告:映画会社、プロデューサー
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■結論
請求認容
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■争点
1 被告東宝の行為が本件契約所定の権利喪失事由に当たるか
2 本件契約関係解消にはやむを得ない事由が必要であるか及び当該事由の有無
3 原告による本件契約関係解消の主張が信義則に反するか
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■事案の概要
『本件は、原告が、原告、被告東宝及び被告乙の三者で、別紙著作物目録記載の作品(以下「本件原作」という。)の著作権の帰属並びに本件原作及びアニメーション作品「ファンタジスタドール」(以下「本件作品」という。)の管理運用等を定めた契約を締結し、本件原作の著作権を共有する旨等の合意をしていたところ、被告東宝の行為が当該契約所定の権利喪失事由に該当し、被告東宝は本件原作の著作権を喪失したと主張して、原告、被告東宝及び被告乙の間で、被告東宝が本件原作の著作権を有しないことの確認を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.03 「ファンタジスタドール」原著作契約(本件契約)締結
H25.09 共同事業契約締結、製作委員会組成
H25.10 原告が被告東宝に申し入れ
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■判決内容
<争点>
1 被告東宝の行為が本件契約所定の権利喪失事由に当たるか
原告は、被告東宝が原告との協議を経ることなく本件作品の事業利用を行っているとして、被告東宝に本件契約上の不履行があると主張しました。
(1)本件契約所定の協議の意義について
本件契約が本件作品の事業利用に際してメンバーで協議を行うことを求めている趣旨について、裁判所は、「本件契約所定の協議は、被告東宝からメンバーの他の構成員に対する事業利用に係る報告をし、これに関する意見を求めると
いう方法によっても行うことができるものの、被告東宝からメンバーの他の構成員に対して事業利用に係る報告をするに当たっては、事業利用の具体的な態様や使用が予定されている図案等を併せて示す必要があるというべきである」と判断しています(16頁以下)。
(2)メンバー間の協議が不要な本件作品の事業利用の有無について
被告東宝は、被告東宝自らが本件作品の事業利用の主体となって実施する場合や、第三者に対する利用許諾を伴う事業利用であっても、取引総額が少額でかつ急を要する場合には、メンバー間の協議を経ることなく本件作品を事業利用することができると主張しました。
この点について、裁判所は、結論として、本件契約上、本件作品の事業利用の全てについてメンバー間の協議が必要と認めるのが相当であるとして、被告東宝の主張を認めていません(19頁)。
(3)被告東宝による本件作品の事業利用が本件契約に違反するかについて
本件作品のビデオグラム化事業以外は、国内番組販売、国内配信許諾、国外販売、音楽配信、広報宣伝活動、ゲーム化事業、商品化事業、出版化事業、舞台化事業、音楽化事業、音声化事業のいずれも、被告東宝による本件事業利用が、原告との協議を欠き、本件契約が規定する義務に違反すると裁判所は判断しています(19頁以下)。
(4)被告東宝の行為は本件契約8条1項5号所定の事由に当たるかについて
裁判所は、被告東宝の行為は、「本件契約に違反し、他のメンバーから文書による相当な期間を定めた催告があったにもかかわらず、当該期間内に違反を是正しないとき」(本件契約第8条1項5号)に当たると判断しています(25頁以下)。
結論として、裁判所は、被告東宝の行為は、本件契約所定の権利喪失事由に当たると判断しています。
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2 本件契約関係解消にはやむを得ない事由が必要であるか及び当該事由の有無
裁判所は、本件契約は、その契約期間が長期間に及ぶもので、本件作品の事業利用に伴って多数の第三者との間で多くの取引、契約関係が生じることが想定されているものであるとしても、本件契約の関係を解消するために、やむを得ない事由を要する旨の明示の定めはなく、また、本件契約関係を解消するためにやむを得ない事由を要することが本件契約外で合意されたと認めることもできないと判断。
結論として、本件契約の関係を解消するために、やむを得ない事由を要すると認めることはできないと判断しています(26頁以下)。
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3 原告による本件契約関係解消の主張が信義則に反するか
裁判所は、結論として原告が本件契約関係の解消を主張することが信義則に反し許されないということはできないと判断しています(28頁以下)。
結論として、裁判所は、被告東宝の行為は、本件契約所定の権利喪失事由に該当し、被告東宝は本件原作の著作権を喪失したとして、原告、被告東宝及び被告乙の間で被告東宝が本件原作の著作権を有しないことの確認を求める原告の請求は理由があると判断しています。
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■コメント
TV番組放送開始の兼ね合いもあって、著作権を25%保有するアニメ制作会社との協議を省いて幹事社が作品の展開を行ってしまい、展開のほぼすべてがアニメ制作会社との間の管理運用契約に違反すると判断されてしまっています。
原告のサイトを見ると、作品の原作者は被告クリエイティブプロデューサー、あるいは、「ファンタジスタドールプロジェクト」というふうにサイト表記からは読み取れますが、また、アニメーションプロデューサーが原告代表者ということから、作品に対する原告の実関与の度合いが強いことが伺えます。