最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
医療用画像管理システム事件
大阪地裁令和7.2.17令和5(ワ)11871著作権確認等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 島田美喜子
裁判官 西尾太一
*裁判所サイト公表 2025.3.26
*キーワード:著作物性、職務著作、覚書、確認の利益
--------------------
■事案
医療用画像管理システムなどの権利関係が争点となった事案
原告:被告元勤務医師
被告:医療法人
--------------------
■結論
一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、15条1項
1 本件作品1が著作物であるか
2 本件作品2が著作物であるか
3 本件作品3が著作物であるか
4 原告が本件作品3の著作者であるか
5 本件システムが原告の著作物に該当するか
6 本件各作品及び本件システムが職務著作に該当するか
7 本件各作品につき著作権侵害又はそのおそれがあるか
8 本件覚書に違反した不法行為に基づき、本件システムの使用等の差止めを求めることができるか
--------------------
■事案の概要
『原告の請求(訴訟物)
(1) 請求の趣旨1項
本件作品1、同2及び同3が、いずれも著作物であり、かつ原告がその著作権者であることを前提とする、被告に対する、各作品の著作権及び著作者人格権(以下「著作権等」という。)の確認請求
(2) 請求の趣旨2項及び3項
(1)記載の原告の著作権等に基づく被告の各著作物の改変、複製、頒布又は翻案及び使用の差止め請求
(3)請求の趣旨4項の主位的請求
(1)記載の原告の著作権等に基づく、本件各作品を利用した本件システムの使用の差止め請求
(4) 請求の趣旨4項の予備的請求
本件システムについてされた、原告が定めたルールに基づき原告の許諾を得て使用する旨の原被告間の合意に被告が違反し、本件システムを継続使用していることが不法行為であるとする、不法行為に基づく差止請求』
(2頁以下)
本件作品1 :「比較による相対化を基にした画像診断の方法」論文
本件作品2 :読影・判定支援のフローチャート
本件作品3 :コンピューター・タブレットシステムの画面レイアウト
本件システム:被告において用いられている医療用システム
<経緯>
H06 原告が被告に勤務
H15 被告がタブレット開発
H14 原告が医療用画像管理システム導入検討中核メンバー就任
H16 原告が医療情報システムグループアドバイザー就任
H17 原被告覚書締結
H21 原告が本件作品1著作権登録
R01 原告が本件システムにAボタン搭載
R04 原告が退職
R04 原告が解除通知
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■判決内容
<争点>
1 本件作品1が著作物であるか
本件作品1の論文について、裁判所は結論として、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって、著作物であると判断しています(9頁以下)。
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2 本件作品2が著作物であるか
本件作品2のフローチャートについて、裁判所は結論として、本件作品1の基となったアイディアを単にありふれた表現で図示したものにすぎないというべきであって、それ単体としては創作性を欠くものというべきであるとして著作物性を否定しています(10頁)。
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3 本件作品3が著作物であるか
本件作品3のシステムの画面レイアウトについて、裁判所は結論として、本件作品1の基となったアイディアを単にありふれた表現でシステムの画面レイアウトに落とし込んだものにすぎないから、それ自体には創作性が認められず、著作物には該当しないと判断しています(10頁以下)。
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4 原告が本件作品3の著作者であるか
本件作品3の画面レイアウトについて、裁判所は結論として、仮に本件作品3になんらかの創作性が認められるとしても、これを実際に創作したのは委託先の日立ソフトであり、被告及び日立ソフト間の著作権の取扱いの定めによっては、被告が著作権を有することもあり得るが、少なくとも、原告が本件作品3の著作権者となる余地はないなどとして、著作者、著作権者性を否定しています(11頁)。
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5 本件システムが原告の著作物に該当するか
裁判所は結論として、本件システムについて、原告の著作者性を否定しています(11頁以下)。
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6 本件各作品及び本件システムが職務著作に該当するか
裁判所は、本件作品2、同3及び本件システムは、いずれも、著作物に該当しないか、又は著作物に該当したとしても原告に著作権等が帰属するものではなく、また、本件作品1については、職務著作に該当するか否かにかかわらず、原告が著作権等を有するものと判断しています(12頁以下)。
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7 本件各作品につき著作権侵害又はそのおそれがあるか
裁判所は結論として、本件作品1について、著作権侵害又はそのおそれがあるとは認めていません(13頁)。
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8 本件覚書に違反した不法行為に基づき、本件システムの使用等の差止めを求めることができるか
裁判所は、本覚書(別紙2参照)を根拠とする原告の主張を認めていません(13頁以下)。
結論として、本件作品1については、確認の利益もあり、著作権及び著作者人格権を有することを確認する限度で理由があると判断しています。
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■コメント
医療法人で利用する医療用画像管理システムの開発にあたり、医師の関与の度合いや覚書の意味合いが問題となった事案です。
医療用画像管理システム事件
大阪地裁令和7.2.17令和5(ワ)11871著作権確認等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 島田美喜子
裁判官 西尾太一
*裁判所サイト公表 2025.3.26
*キーワード:著作物性、職務著作、覚書、確認の利益
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■事案
医療用画像管理システムなどの権利関係が争点となった事案
原告:被告元勤務医師
被告:医療法人
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■結論
一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、15条1項
1 本件作品1が著作物であるか
2 本件作品2が著作物であるか
3 本件作品3が著作物であるか
4 原告が本件作品3の著作者であるか
5 本件システムが原告の著作物に該当するか
6 本件各作品及び本件システムが職務著作に該当するか
7 本件各作品につき著作権侵害又はそのおそれがあるか
8 本件覚書に違反した不法行為に基づき、本件システムの使用等の差止めを求めることができるか
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■事案の概要
『原告の請求(訴訟物)
(1) 請求の趣旨1項
本件作品1、同2及び同3が、いずれも著作物であり、かつ原告がその著作権者であることを前提とする、被告に対する、各作品の著作権及び著作者人格権(以下「著作権等」という。)の確認請求
(2) 請求の趣旨2項及び3項
(1)記載の原告の著作権等に基づく被告の各著作物の改変、複製、頒布又は翻案及び使用の差止め請求
(3)請求の趣旨4項の主位的請求
(1)記載の原告の著作権等に基づく、本件各作品を利用した本件システムの使用の差止め請求
(4) 請求の趣旨4項の予備的請求
本件システムについてされた、原告が定めたルールに基づき原告の許諾を得て使用する旨の原被告間の合意に被告が違反し、本件システムを継続使用していることが不法行為であるとする、不法行為に基づく差止請求』
(2頁以下)
本件作品1 :「比較による相対化を基にした画像診断の方法」論文
本件作品2 :読影・判定支援のフローチャート
本件作品3 :コンピューター・タブレットシステムの画面レイアウト
本件システム:被告において用いられている医療用システム
<経緯>
H06 原告が被告に勤務
H15 被告がタブレット開発
H14 原告が医療用画像管理システム導入検討中核メンバー就任
H16 原告が医療情報システムグループアドバイザー就任
H17 原被告覚書締結
H21 原告が本件作品1著作権登録
R01 原告が本件システムにAボタン搭載
R04 原告が退職
R04 原告が解除通知
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■判決内容
<争点>
1 本件作品1が著作物であるか
本件作品1の論文について、裁判所は結論として、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであって、著作物であると判断しています(9頁以下)。
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2 本件作品2が著作物であるか
本件作品2のフローチャートについて、裁判所は結論として、本件作品1の基となったアイディアを単にありふれた表現で図示したものにすぎないというべきであって、それ単体としては創作性を欠くものというべきであるとして著作物性を否定しています(10頁)。
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3 本件作品3が著作物であるか
本件作品3のシステムの画面レイアウトについて、裁判所は結論として、本件作品1の基となったアイディアを単にありふれた表現でシステムの画面レイアウトに落とし込んだものにすぎないから、それ自体には創作性が認められず、著作物には該当しないと判断しています(10頁以下)。
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4 原告が本件作品3の著作者であるか
本件作品3の画面レイアウトについて、裁判所は結論として、仮に本件作品3になんらかの創作性が認められるとしても、これを実際に創作したのは委託先の日立ソフトであり、被告及び日立ソフト間の著作権の取扱いの定めによっては、被告が著作権を有することもあり得るが、少なくとも、原告が本件作品3の著作権者となる余地はないなどとして、著作者、著作権者性を否定しています(11頁)。
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5 本件システムが原告の著作物に該当するか
裁判所は結論として、本件システムについて、原告の著作者性を否定しています(11頁以下)。
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6 本件各作品及び本件システムが職務著作に該当するか
裁判所は、本件作品2、同3及び本件システムは、いずれも、著作物に該当しないか、又は著作物に該当したとしても原告に著作権等が帰属するものではなく、また、本件作品1については、職務著作に該当するか否かにかかわらず、原告が著作権等を有するものと判断しています(12頁以下)。
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7 本件各作品につき著作権侵害又はそのおそれがあるか
裁判所は結論として、本件作品1について、著作権侵害又はそのおそれがあるとは認めていません(13頁)。
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8 本件覚書に違反した不法行為に基づき、本件システムの使用等の差止めを求めることができるか
裁判所は、本覚書(別紙2参照)を根拠とする原告の主張を認めていません(13頁以下)。
結論として、本件作品1については、確認の利益もあり、著作権及び著作者人格権を有することを確認する限度で理由があると判断しています。
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■コメント
医療法人で利用する医療用画像管理システムの開発にあたり、医師の関与の度合いや覚書の意味合いが問題となった事案です。