最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

聖教新聞写真引用事件

東京地裁令和6.9.26令和5(ワ)70388損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官    古賀千尋
裁判官    坂本達也

*裁判所サイト公表 2024.10.31
*キーワード:引用

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■事案

新聞掲載写真のツイッター無断投稿が引用にあたるかどうかが争点となった事案

原告:宗教法人
被告:原告会員

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法32条1項

1 引用の成否

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■事案の概要

『1 本件は、宗教法人である原告が、その会員である被告に対し、被告がインターネット上のいわゆる短文投稿サイトTwitter(以下「ツイッター」という。)において、原告が出版する聖教新聞に掲載された別紙写真目録記載の各写真(以下、同目録の番号順に「本件写真1」などといい、全ての写真を併せて「本件各写真」という。)を複製しこれを掲載したことが、原告保有に係る本件各写真の著作権(送信可能化権)を侵害すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金419万1500円及びこれに対する最後の不法行為日である令和元年10月21日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『2 本件審理経過と中核的争点
 当事者双方は、侵害論、損害論とも、2往復で主張立証を終了し(第1回口頭弁論調書参照)、裁判所は、当事者の主張立証の内容を検討し、当事者双方に対し、その結果をレビュー期日(本件においては第5回口頭弁論期日をいい、裁判所の検討期間後にその検討結果を共有した上で今後の進行を協議する期日をいう。以下同じ。)で伝えることとした。
 そして、裁判所は、レビュー期日において、本件の中核的争点が引用の抗弁であるとして、その判断基準を示した上、原告に対しては、被告による利用行為が原告に及ぼす影響に限り、被告に対しては、本件各写真の利用目的等に限り、主張立証を補充するよう求めた(第5回口頭弁論調書参照)。
 上記主張立証の補充後、裁判所は、本件訴訟が裁判をするのに熟したものと判断し、弁論を終結した。』
(1頁以下)

本件各写真:聖教新聞掲載の写真

<経緯>

H30.10 被告がツイッターに投稿

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■判決内容

<争点>

1 引用の成否

裁判所は、引用の意義に言及した上で、結論として、
「上記認定に係る本件各写真の性質、その利用目的、ツイッターへの掲載態様、著作権者である原告に及ぼす影響の程度などを、社会通念に照らして総合考慮すれば、被告が聖教新聞掲載に係る本件各写真をスマートフォンで写してこれをツイッターに掲載して利用する行為は、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内であると認めるのが相当である。
 したがって、被告による本件各写真の利用は、著作権法32条1項にいう引用に該当するものであるから、違法なものとはいえない。」

として、引用の成立を肯定しています(11頁以下)。

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■コメント

引用の抗弁の成否が争点となった事案となります。