最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
コーヒー豆保存容器事件
大阪地裁令和6.7.2令和5(ワ)5412著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 武宮英 子
裁判官 島田美喜子
裁判官 西尾太一
*裁判所サイト公表 2024.7.22
*キーワード:著作物性、応用美術、保存容器、キャニスター
--------------------
■事案
コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)のデザインの著作物性が争点となった事案
原告:木工製品制作販売個人事業主
被告:販売店舗運営者、アトリエ運営個人事業主
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項
1 原告各作品の著作物性の有無
2 複製又は翻案の有無(依拠性)
3 氏名表示権の侵害
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、別紙被告作品目録記載の各作品(以下、総称して「被告各作品」という。)を制作、販売等する被告らの行為は、原告の著作権(複製権又は翻案権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害するとして、被告らに対し、(1)著作権法(以下「法」という。)112条1項に基づき、被告各作品の制作等の差止めを、(2)同条2項に基づき、被告各製品の廃棄を、(3)共同不法行為に基づき、損害賠償金500万円及び不法行為後の各訴状送達の日の翌日(令和5年7月23日)から支払済みまでの民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H30 原告がキャニスター制作販売
R04 被告P3が被告各作品を制作
R04 被告P2が販売
R04 原告が警告
--------------------
■判決内容
<争点>
1 原告各作品の著作物性の有無
コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)である原告各作品の著作物性の有無について、裁判所は、著作物性の意義、応用美術論について言及し、
「応用美術のうち、美術工芸品以外の量産品であっても、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できる場合には、美術の著作物に当たると解するのが相当である。」(8頁)
として、分離評価基準について説示。
本件へのあてはめとして、
「原告各作品は、コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)であるから(争いなし)、実用目的を有する量産品であるといえる。原告各作品が、保存容器という実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているか否かについてみると、原告各作品は、ストレートガラスカップと木製の蓋から構成されており、ストレートガラスカップに装飾のある木製の蓋を組み合わせること自体はアイデアであるところ、前者(ストレートガラスカップ部分)には、保存容器として必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性が備わっているとは認められない(原告もこの部分について、創作的表現が備わっている旨の主張はしていない。)。」
また、
「後者(木製の蓋部分)は、先端側から順に略球形、円盤型、円錐型からなる3段から構成され、各段の境目はくびれの構成となっているところ、このような構成は持ち運びや内容物の収納、ストレートガラスカップに対する蓋の着脱を容易するために必要な構成であるから、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとはいえない。」(9頁)
などとして、結論として、原告各作品は創作性がなく、著作物であると認めていません。
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2 複製又は翻案の有無(依拠性)
裁判所は、事案に鑑み依拠性について検討していますが、結論として依拠性を否定しています(9頁以下)。
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3 氏名表示権の侵害
原告の氏名表示権の侵害性についても裁判所は否定しています(10頁)。
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■コメント
判決文に別紙が添付されていて、キャニスターがどのようなものであったかが分かります。
この保存容器のデザインの保護を著作権で争うのは難しく、例えば、スティック型加湿器形態模倣事件(東京地裁平成28.1.14平成27(ワ)7033不正競争差止等請求事件、知財高裁平成28.11.30平成28(ネ)10018不正競争差止等請求控訴事件)のように量産品のデザインの保護については、不正競争防止法での対応も考えられますが、本事案では争点とされていません。
コーヒー豆保存容器事件
大阪地裁令和6.7.2令和5(ワ)5412著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 武宮英 子
裁判官 島田美喜子
裁判官 西尾太一
*裁判所サイト公表 2024.7.22
*キーワード:著作物性、応用美術、保存容器、キャニスター
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■事案
コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)のデザインの著作物性が争点となった事案
原告:木工製品制作販売個人事業主
被告:販売店舗運営者、アトリエ運営個人事業主
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項
1 原告各作品の著作物性の有無
2 複製又は翻案の有無(依拠性)
3 氏名表示権の侵害
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■事案の概要
『本件は、原告が、別紙被告作品目録記載の各作品(以下、総称して「被告各作品」という。)を制作、販売等する被告らの行為は、原告の著作権(複製権又は翻案権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害するとして、被告らに対し、(1)著作権法(以下「法」という。)112条1項に基づき、被告各作品の制作等の差止めを、(2)同条2項に基づき、被告各製品の廃棄を、(3)共同不法行為に基づき、損害賠償金500万円及び不法行為後の各訴状送達の日の翌日(令和5年7月23日)から支払済みまでの民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H30 原告がキャニスター制作販売
R04 被告P3が被告各作品を制作
R04 被告P2が販売
R04 原告が警告
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■判決内容
<争点>
1 原告各作品の著作物性の有無
コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)である原告各作品の著作物性の有無について、裁判所は、著作物性の意義、応用美術論について言及し、
「応用美術のうち、美術工芸品以外の量産品であっても、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できる場合には、美術の著作物に当たると解するのが相当である。」(8頁)
として、分離評価基準について説示。
本件へのあてはめとして、
「原告各作品は、コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)であるから(争いなし)、実用目的を有する量産品であるといえる。原告各作品が、保存容器という実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているか否かについてみると、原告各作品は、ストレートガラスカップと木製の蓋から構成されており、ストレートガラスカップに装飾のある木製の蓋を組み合わせること自体はアイデアであるところ、前者(ストレートガラスカップ部分)には、保存容器として必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性が備わっているとは認められない(原告もこの部分について、創作的表現が備わっている旨の主張はしていない。)。」
また、
「後者(木製の蓋部分)は、先端側から順に略球形、円盤型、円錐型からなる3段から構成され、各段の境目はくびれの構成となっているところ、このような構成は持ち運びや内容物の収納、ストレートガラスカップに対する蓋の着脱を容易するために必要な構成であるから、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとはいえない。」(9頁)
などとして、結論として、原告各作品は創作性がなく、著作物であると認めていません。
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2 複製又は翻案の有無(依拠性)
裁判所は、事案に鑑み依拠性について検討していますが、結論として依拠性を否定しています(9頁以下)。
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3 氏名表示権の侵害
原告の氏名表示権の侵害性についても裁判所は否定しています(10頁)。
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■コメント
判決文に別紙が添付されていて、キャニスターがどのようなものであったかが分かります。
この保存容器のデザインの保護を著作権で争うのは難しく、例えば、スティック型加湿器形態模倣事件(東京地裁平成28.1.14平成27(ワ)7033不正競争差止等請求事件、知財高裁平成28.11.30平成28(ネ)10018不正競争差止等請求控訴事件)のように量産品のデザインの保護については、不正競争防止法での対応も考えられますが、本事案では争点とされていません。