最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
医療系アニメーション制作契約事件(控訴審)
知財高裁令和6.3.28令和5(ネ)10093損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 水野正則
*裁判所サイト公表 2024.4.25
*キーワード:映画製作契約、映画製作者、氏名表示権、損害論
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■事案
医療系のアニメーション映像製作契約を巡って著作権の帰属などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):アニメーション制作事業者
被控訴人(1審被告):出版社
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■結論
原判決一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項7号、16条、29条1項、19条
1 本件映像の著作物性及び「映画の著作物」該当性
2 本件映像の著作者
3 本件映像の著作権者
4 著作者名表示の省略の可否
5 故意又は過失の有無
6 損害の有無及びその額
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■事案の概要
『本件は、控訴人が、被控訴人がインターネット上の動画共有サイトであるYouTube(本件サイト)において原判決別紙映像目録記載の映像(本件映像)の一部(本件複製映像)を、控訴人の氏名又は屋号を著作者として表示することなく公開した行為により、本件映像に係る控訴人の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたと主張し、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金660万円(著作権法114条3項に基づく損害400万円、著作権侵害による逸失利益100万円、著作者人格権侵害による慰謝料100万円及び弁護士費用60万円)及びこれに対する平成29年8月3日(被控訴人が本件複製映像を本件サイトにおいて公開した日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は、控訴人の請求のうち、55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)及びこれに対する令和2年12月22日(被控訴人が本件サイトにおける本件複製映像の公開を停止した日)から支払済みまで現行の民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、控訴人のその余の請求を棄却したので、控訴人が原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴した。なお、被控訴人は、控訴も附帯控訴もしなかった。』
(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件映像の著作物性及び「映画の著作物」該当性
本件映像は、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で作成されたものであり、かつ、思想又は感情を創作的に表現したものであるとしたうえで、本件映像は、本件書籍の付属物として、DVDに固定されたものであり、本件映像は、著作権法2条3項にいう「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」に当たるから、映画の著作物(10条1項7号)であると判断されています(9頁以下)。
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2 本件映像の著作者
本件映像の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者(16条)は、控訴人であって、A医師、被控訴人、C医師及びD医師はこれに当たらないと判断されています(11頁以下)。
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3 本件映像の著作権者
本件書籍を出版し、控訴人との間で本件映像の制作に関する委託契約を締結してその対価を控訴人に支払う法的義務を負ったと認められる被控訴人が、最終的に不足分の費用を負担すべき立場にあったと認められるなどとして、本件映像の映画製作者、すなわち、本件映像を製作する意思を有し、その製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として、「映画の著作物」である本件映像の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者は、被控訴人であると認めるのが相当であると裁判所は判断。本件映像の映画製作者は、被控訴人であると判断しています。
結論として、本件映像の著作者である控訴人は、被控訴人に対し、本件映像の製作に参加することを約束していたと認められ、29条1項により、本件映像の著作権は、その映画製作者である被控訴人に帰属すると判断されています(13頁以下)。
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4 著作者名表示の省略の可否
被控訴人が本件映像に係る控訴人の著作者人格権(氏名表示権)を侵害したと判断されています(17頁)。
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5 故意又は過失の有無
少なくとも被控訴人に過失があったと認められています(17頁以下)。
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6 損害の有無及びその額
(1)著作者人格権(氏名表示権)侵害による損害
慰謝料80万円
(2)弁護士費用相当額損害
8万円
合計88万円(18頁以下)
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■コメント
アニメーション映像制作契約を巡り、映像の著作権の帰属や氏名表示権侵害性が争点となった事案の控訴審です。
なお、本件映像の著作権の帰属の判断が原審と異なりますが、結論には影響していません。
損害論として、原審で55万円(氏名表示権侵害に係る慰謝料50万円、弁護士費用相当額損害5万円)であったのが増額の判断となっています。
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■過去のブログ記事
東京地裁令和5.8.30令和3(ワ)12304損害賠償請求事件
原審記事
医療系アニメーション制作契約事件(控訴審)
知財高裁令和6.3.28令和5(ネ)10093損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 水野正則
*裁判所サイト公表 2024.4.25
*キーワード:映画製作契約、映画製作者、氏名表示権、損害論
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■事案
医療系のアニメーション映像製作契約を巡って著作権の帰属などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審原告):アニメーション制作事業者
被控訴人(1審被告):出版社
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■結論
原判決一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項7号、16条、29条1項、19条
1 本件映像の著作物性及び「映画の著作物」該当性
2 本件映像の著作者
3 本件映像の著作権者
4 著作者名表示の省略の可否
5 故意又は過失の有無
6 損害の有無及びその額
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■事案の概要
『本件は、控訴人が、被控訴人がインターネット上の動画共有サイトであるYouTube(本件サイト)において原判決別紙映像目録記載の映像(本件映像)の一部(本件複製映像)を、控訴人の氏名又は屋号を著作者として表示することなく公開した行為により、本件映像に係る控訴人の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたと主張し、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金660万円(著作権法114条3項に基づく損害400万円、著作権侵害による逸失利益100万円、著作者人格権侵害による慰謝料100万円及び弁護士費用60万円)及びこれに対する平成29年8月3日(被控訴人が本件複製映像を本件サイトにおいて公開した日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は、控訴人の請求のうち、55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)及びこれに対する令和2年12月22日(被控訴人が本件サイトにおける本件複製映像の公開を停止した日)から支払済みまで現行の民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、控訴人のその余の請求を棄却したので、控訴人が原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴した。なお、被控訴人は、控訴も附帯控訴もしなかった。』
(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件映像の著作物性及び「映画の著作物」該当性
本件映像は、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で作成されたものであり、かつ、思想又は感情を創作的に表現したものであるとしたうえで、本件映像は、本件書籍の付属物として、DVDに固定されたものであり、本件映像は、著作権法2条3項にいう「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」に当たるから、映画の著作物(10条1項7号)であると判断されています(9頁以下)。
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2 本件映像の著作者
本件映像の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者(16条)は、控訴人であって、A医師、被控訴人、C医師及びD医師はこれに当たらないと判断されています(11頁以下)。
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3 本件映像の著作権者
本件書籍を出版し、控訴人との間で本件映像の制作に関する委託契約を締結してその対価を控訴人に支払う法的義務を負ったと認められる被控訴人が、最終的に不足分の費用を負担すべき立場にあったと認められるなどとして、本件映像の映画製作者、すなわち、本件映像を製作する意思を有し、その製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として、「映画の著作物」である本件映像の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者は、被控訴人であると認めるのが相当であると裁判所は判断。本件映像の映画製作者は、被控訴人であると判断しています。
結論として、本件映像の著作者である控訴人は、被控訴人に対し、本件映像の製作に参加することを約束していたと認められ、29条1項により、本件映像の著作権は、その映画製作者である被控訴人に帰属すると判断されています(13頁以下)。
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4 著作者名表示の省略の可否
被控訴人が本件映像に係る控訴人の著作者人格権(氏名表示権)を侵害したと判断されています(17頁)。
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5 故意又は過失の有無
少なくとも被控訴人に過失があったと認められています(17頁以下)。
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6 損害の有無及びその額
(1)著作者人格権(氏名表示権)侵害による損害
慰謝料80万円
(2)弁護士費用相当額損害
8万円
合計88万円(18頁以下)
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■コメント
アニメーション映像制作契約を巡り、映像の著作権の帰属や氏名表示権侵害性が争点となった事案の控訴審です。
なお、本件映像の著作権の帰属の判断が原審と異なりますが、結論には影響していません。
損害論として、原審で55万円(氏名表示権侵害に係る慰謝料50万円、弁護士費用相当額損害5万円)であったのが増額の判断となっています。
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■過去のブログ記事
東京地裁令和5.8.30令和3(ワ)12304損害賠償請求事件
原審記事