最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
不動産賃貸物件写真事件
東京地裁令和6.2.7令和4(ワ)9461削除請求等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 バヒスバラン薫
裁判官 木村洋一
*裁判所サイト公表 2024.3.16
*キーワード:賃貸物件、建築、不動産、写真、著作物性、職務著作、ライセンス料相当額損害
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■事案
不動産賃貸物件を紹介する目的で撮影された写真の著作物性などが争点となった事案
原告:不動産会社
被告:不動産会社、原告元従業員
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、15条1項、114条3項
1 本件各写真の著作物性
2 本件各写真に係る著作権の帰属
3 被告らによる著作権侵害行為の有無
4 権利濫用の成否
5 損害の発生及び額
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■事案の概要
『本件は、原告が、被告らが共同して別紙写真目録記載の各写真(以下、同目録の「番号」欄の番号の順に「本件写真1」、「本件写真2」などといい、これらを併せて「本件各写真」という。)を、被告会社の管理する賃貸物件(以下「被告物件」という。)に係るウェブサイトに掲載した行為が、原告の本件各写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害すると主張して、被告らに対し、民法709条及び719条1項に基づき、216万円(著作権法114条3項により算定される損害額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告会社については令和4年6月4日、被告Xについては同月8日)から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(ただし、各被告への請求範囲が重なる部分に限り連帯支払)を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H30.01 被告会社代表者が原告を退職
R03.03 被告会社設立
R03.09 被告Xが原告退職、被告会社に就職
R04.03 原告が被告らに写真削除等を通知
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■判決内容
<争点>
1 本件各写真の著作物性
本件各写真は、「賃貸物件の外観・内観及び周辺環境等を撮影したものであること、本件各写真の撮影は、賃貸物件の内容を分かりやすく需要者に伝えるため、明るさや撮影角度等を調整して行われたものであること、本件各写真の中には、対象を広く写真に収めるため、パノラマ写真を撮影できるカメラを利用して撮影されたものも含まれて」いるといったものでした(8頁)。
本件各写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、結論として肯定しています。
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2 本件各写真に係る著作権の帰属
本件各写真(108枚)のうち71枚については、原告の職務著作(15条1項)としてその著作者は原告であり、著作権は原告に帰属すると判断されています(9頁以下)。
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3 被告らによる著作権侵害行為の有無
裁判所は、結論として、被告会社の管理する賃貸物件に関して、原告の許諾を得ることなく原告の写真を被告のウェブサイトに掲載した行為が、原告の写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を被告らが侵害する共同不法行為と判断しています(12頁)。
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4 権利濫用の成否
被告らは、本件訴訟は原告代表者による私怨によるものであるとして、権利濫用を主張しましたが、裁判所は被告らの主張を認めていません(12頁)。
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5 損害の発生及び額
物件写真の撮影代行サービスの料金やウェイブサイト掲載期間など諸事情を勘案の上、裁判所はライセンス料相当額損害(114条3項)として、写真1枚当たり1000円×71枚の合計7万1000円と判断しています(12頁以下)。
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■コメント
不動産賃貸物件の外観や内観の写真の著作物性などが争点となった事案です。
賃貸物件写真については、マンションであれば外観やエントランスなど、不動産業者としては画像の使いまわしや他社へのレンタルにメリットがあり、不動産の所有者に許諾を得た上で画像のライセンスをするサービスも展開されています。
注文建築物の写真であれば、建築会社から建築専門撮影業者への業務委託契約のなかで画像の著作権の帰属が規定されます(通常の情報成果物の業務委託契約書雛形であれば、著作権譲渡がデフォルトです)。施主との関係もあり、撮影業者が画像の著作権を保持するよりも、譲渡を認めつつ、ポートフォリオなどでの二次利用を認めさせるのが現実的な対応になっているかと考えられます。
不動産賃貸物件写真事件
東京地裁令和6.2.7令和4(ワ)9461削除請求等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 バヒスバラン薫
裁判官 木村洋一
*裁判所サイト公表 2024.3.16
*キーワード:賃貸物件、建築、不動産、写真、著作物性、職務著作、ライセンス料相当額損害
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■事案
不動産賃貸物件を紹介する目的で撮影された写真の著作物性などが争点となった事案
原告:不動産会社
被告:不動産会社、原告元従業員
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、15条1項、114条3項
1 本件各写真の著作物性
2 本件各写真に係る著作権の帰属
3 被告らによる著作権侵害行為の有無
4 権利濫用の成否
5 損害の発生及び額
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■事案の概要
『本件は、原告が、被告らが共同して別紙写真目録記載の各写真(以下、同目録の「番号」欄の番号の順に「本件写真1」、「本件写真2」などといい、これらを併せて「本件各写真」という。)を、被告会社の管理する賃貸物件(以下「被告物件」という。)に係るウェブサイトに掲載した行為が、原告の本件各写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害すると主張して、被告らに対し、民法709条及び719条1項に基づき、216万円(著作権法114条3項により算定される損害額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告会社については令和4年6月4日、被告Xについては同月8日)から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(ただし、各被告への請求範囲が重なる部分に限り連帯支払)を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H30.01 被告会社代表者が原告を退職
R03.03 被告会社設立
R03.09 被告Xが原告退職、被告会社に就職
R04.03 原告が被告らに写真削除等を通知
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■判決内容
<争点>
1 本件各写真の著作物性
本件各写真は、「賃貸物件の外観・内観及び周辺環境等を撮影したものであること、本件各写真の撮影は、賃貸物件の内容を分かりやすく需要者に伝えるため、明るさや撮影角度等を調整して行われたものであること、本件各写真の中には、対象を広く写真に収めるため、パノラマ写真を撮影できるカメラを利用して撮影されたものも含まれて」いるといったものでした(8頁)。
本件各写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、結論として肯定しています。
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2 本件各写真に係る著作権の帰属
本件各写真(108枚)のうち71枚については、原告の職務著作(15条1項)としてその著作者は原告であり、著作権は原告に帰属すると判断されています(9頁以下)。
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3 被告らによる著作権侵害行為の有無
裁判所は、結論として、被告会社の管理する賃貸物件に関して、原告の許諾を得ることなく原告の写真を被告のウェブサイトに掲載した行為が、原告の写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を被告らが侵害する共同不法行為と判断しています(12頁)。
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4 権利濫用の成否
被告らは、本件訴訟は原告代表者による私怨によるものであるとして、権利濫用を主張しましたが、裁判所は被告らの主張を認めていません(12頁)。
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5 損害の発生及び額
物件写真の撮影代行サービスの料金やウェイブサイト掲載期間など諸事情を勘案の上、裁判所はライセンス料相当額損害(114条3項)として、写真1枚当たり1000円×71枚の合計7万1000円と判断しています(12頁以下)。
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■コメント
不動産賃貸物件の外観や内観の写真の著作物性などが争点となった事案です。
賃貸物件写真については、マンションであれば外観やエントランスなど、不動産業者としては画像の使いまわしや他社へのレンタルにメリットがあり、不動産の所有者に許諾を得た上で画像のライセンスをするサービスも展開されています。
注文建築物の写真であれば、建築会社から建築専門撮影業者への業務委託契約のなかで画像の著作権の帰属が規定されます(通常の情報成果物の業務委託契約書雛形であれば、著作権譲渡がデフォルトです)。施主との関係もあり、撮影業者が画像の著作権を保持するよりも、譲渡を認めつつ、ポートフォリオなどでの二次利用を認めさせるのが現実的な対応になっているかと考えられます。