最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

声優宣材画像事件

東京地裁令和6.2.2令和5(ワ)20793損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    間明宏充
裁判官    バヒスバラン薫

*裁判所サイト公表 2024.2.21
*キーワード:写真、撮影、業務委託、使用者責任

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■事案

依頼を受けて撮影した画像の取扱いを巡って紛争となった事案

原告:個人
被告:芸能事務所

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、23条、民法715条

1 画像の複製権、公衆送信権侵害性
2 虚偽告訴による不法行為性

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■事案の概要

『(1) 原告は、B(以下「B」という。)から、インターネットライブ配信サービスであるSHOWROOM(以下「SHOWROOM」という。)及びSNSで使用する写真画像を撮影してほしいとの依頼を受け、平成30年12月16日、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を撮影し、Bに対し、本件写真をもとにして作成した画像(以下「本件画像」という。)を提供した。』

『(2)ア 被告は、平成29年8月頃、被告の系列会社が製作するアニメに出演する声優を選考するため、「ヤオヨロズ声優発掘オーディション」(以下「本件オーディション」という。)を開催した。
イ Bは、本件オーディションに参加申込みをしたため、被告は、Bとの間でSHOWROOMの配信に関する契約(以下「本件配信契約」という。)を締結し、Bに対し、SHOWROOMの公式アカウントを貸与し、Bは、同アカウントから本件オーディションの選考のためのライブ配信をした。
ウ したがって、前記イの本件配信契約時以後、遅くとも後記(3)の時点までの間、被告とBとの間に実質的な指揮監督関係が存在していたから、被告は、ある事業のために他人であるBを使用する者であった。』

『(3)ア Bは、平成31年1月頃、前記(2)の被告の事業の執行について、Bのファンである複数の第三者に対し、本件画像の一部を複製して作成した年賀状を配布した。
イ Bは、平成31年3月頃、前記(2)の被告の事業の執行について、短文投稿サービスであるTwitter(以下「Twitter」という。)上の「B’非公式応援アカウント」との名称のアカウント開設者に対し、本件画像の一部を複製した画像を提供した。
ウ Bは、遅くとも令和4年頃までに、前記(2)の被告の事業の執行について、原告はTwitter上でBのことを悪く言っているなどと虚偽の事実を述べ、原告を名誉毀損で告訴した。』

『(4) Bには、前記(3)ア及びイの著作権侵害並びに同ウの虚偽告訴の各不法行為(以下「本件各不法行為」という。)につき故意又は過失がある。
(5) 原告は、Bによる本件各不法行為により、多大な精神的苦痛を受け、これを金銭に換算すると160万円を下らない。
(6) よって、原告は、被告に対し、Bによる本件各不法行為に係る使用者責任(710条、715条1項)に基づいて、合計160万円の慰謝料及びこれに対する本件各不法行為の後の日である令和5年10月19日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。』
(1頁以下)

<経緯>

H29.08 被告がヤオヨロズ声優発掘オーディション開催
H30.12 原告がBから依頼を受けて本件写真を撮影
H31.01 Bが本件画像の一部を複製して作成した年賀状を配布
H31.03 Bが本件画像の一部を複製して作成した画像をTwitter向けに提供
R04   Bが原告に対して名誉毀損で告訴

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■判決内容

<争点>

1 画像の複製権、公衆送信権侵害性
2 虚偽告訴による不法行為性

裁判所は、本件各不法行為時に、被告とBとの間に実質的な指揮監督関係があったことを基礎付ける事実が認定できないこと、また、本件各不法行為が、被告の事業の執行についてされたとの事実を認めることはできないなどとして、原告の主張を認めていません(3頁以下)。

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■コメント

本人訴訟ということもあって主張が整理されていません。また、どのような画像だったか別紙添付がなく不明です。
原告がどのようないきさつで声優志望者と思われるBから撮影の依頼を受けたのかわかりませんが、その後の関係悪化を理由に画像の取扱いについて齟齬が生じた事案となります。