最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

腹ばいアザラシ黒塗り改変イラスト事件

大阪地裁令和6.1.30令和5(ワ)6100損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 武宮英子
裁判官    阿波野右起
裁判官    峯健一郎

*裁判所サイト公表 2024.2.14
*キーワード:イラスト、著作物、氏名権、名誉感情、平穏生活権

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■事案

ツイッターアイコン画像用イラストの著作物性などが争点となった事案

原告:司法書士
被告:司法書士

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件各投稿が不法行為を構成するか
2 損害の発生及びその額

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告によるツイッター(インターネットを利用して短文のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク。現在の名称は「X」であるが、以下、名称変更の前後を問わず「ツイッター」という。)への投稿が、原告の氏名権、著作権(複製権及び公衆送信権)、平穏生活権及び名誉感情を侵害し、不法行為を構成すると主張し、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償金150万円及びこれに対する最終の不法行為の日の翌日である令和3年3月23日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件各投稿が不法行為を構成するか

(1)氏名権侵害性

被告は、本件アカウントを通じて本件各投稿を行っていましたが、本件投稿1では、本件アカウントにおける名前(原告の氏名である「P1」)及びユーザー名(原告が経営する法人グループの総称である「(省略)」)が表示されており、本件投稿2ないし4では、「P1」がリツイートした旨が表示されていることに加え、所定の操作によって本件アカウントにおける名前等が表示されることが認められ、本件各投稿に接した閲覧者は、投稿者として原告の氏名を認識するものと認められると裁判所は判断。
被告は本件各投稿において原告の氏名を冒用したといえるとして、本件各投稿は、原告の氏名権を侵害すると判断しています(6頁)。

(2)著作権侵害性

本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラストにし、その下部に「(省略)」と記載したものでした。
裁判所は、結論として、本件イラストは、作成者の思想又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたものであると認められ、「著作物」に該当すると判断しています(6頁以下)。
そして、本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省略)」という表記が黒塗りされたものでした。
被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加えることなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態にしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害すると裁判所は判断。
P3氏から原告が著作権譲渡を受けていることを前提に原告の主張を認めています。

(3)平穏生活権侵害性

原告は、被告が、ツイッターの自動投稿サービスを用いて、連日、趣旨不明の投稿を自動的に行うように設定し、アカウントが凍結されるとすぐに新しいアカウントを作成して投稿を続けたことなどを指摘して、原告の平穏生活権が侵害された旨を主張しましたが、裁判所は認めていません(8頁)。

(4)名誉感情侵害性

裁判所は、本件投稿1については、閲覧者に対して原告は趣旨不明な投稿をする人物であるとの印象を与え、原告の名誉感情を侵害するものと判断しています(8頁以下)。

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2 損害の発生及びその額
氏名権、名誉感情侵害性を理由とする慰謝料として15万円が認定されています。
なお、著作権(複製権及び公衆送信権)侵害性については、原告は本件イラストの著作者ではないため、著作者人格権侵害性といったことはなく、慰謝料は認められていません(9頁以下)。

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■コメント

当事者双方が士業者で、被告が原告になりすましてツイッターに投稿していた事案となります。
画像の別紙添付がないので、どのようなイラストだったかはわかりません。
なお、本件の当事者であるかは不明ですが、司法書士が当事者の発信者情報開示請求関連の別訴として、以下の事案があります。

司法書士ツイッター異議控訴事件(対NTTコミュニケーションズ)
知財高裁令和5.12.13令和5(ネ)10082発信者情報開示命令申立却下決定に対する異議控訴事件
判決文