最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
韓流商品ECサイト画像虚偽事実告知事件(控訴審)
大阪高裁令和6.1.26令和5(ネ)1384等損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 奥野寿則
裁判官 渡部佳寿子
原審 大阪地裁令和5.5.11令和3(ワ)11472損害賠償請求事件
原審判決
*裁判所サイト公表 2024.2.13
*キーワード:商品画像、著作物性、虚偽事実告知、スメルゲット事件
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■事案
ECサイト掲出の韓流単語帳などの画像の著作物性などが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):韓流商品販売事業者
被控訴人兼付帯控訴人(1審原告):韓流商品販売会社
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■結論
控訴棄却、附帯控訴一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項21号
1 被告各画像等の著作物性
2 虚偽事実告知性
3 損害論
4 1審原告の本訴提起等の不法行為性(略)
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■事案の概要
『本件は、アマゾンジャパン合同会社(アマゾン)の運営するインターネットショッピングサイト(アマゾンサイト)上に開設した原告サイトにおいて商品を販売している一審原告が、被告サイトにおいて同種商品を販売している一審被告に対し、一審被告がアマゾンに対して原告サイト上に掲載された画像(原告各画像)及び商品名が一審被告の著作権を侵害しているとして申告した行為(本件各申告)が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為又は不法行為に該当する旨主張して、不競法4条又は民法709条による損害賠償請求権に基づき、本件各申告によって被ったとする損害73万4620円(逸失利益9万1200円、問題対応に要した人件費14万3420円及び弁護士費用相当額50万円の合計額)の損害賠償及びこれに対する最終申告日の後の日である令和3年10月25日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『原審は、本件各申告が不競法2条1項21号の虚偽事実の告知に当たると判断した上、同法4条に基づき、一審原告の請求を5万2492円(本件申告1、3ないし7、9及び10に係る不正競争行為による損害額合計)及びこれに対する上記遅延損害金の支払を求める限度で認容したため、これを不服とする一審被告が敗訴部分について本件控訴を提起し、一審原告が敗訴部分について附帯控訴を提起した。』
(2頁以下)
<経緯>
R3.07 1審被告がアマゾンに申告、出品停止
R3.08 出品再開
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■判決内容
<争点>
1 被告各画像等の著作物性
(1)商品画像、商品名の著作物性
写真集、卓上カレンダー、単語帳といった商品10点の画像について、原審ではいずれも思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、著作物とは認められないと判断していました。
控訴審では、写真集と卓上カレンダーの商品画像については著作物性を否定しましたが、単語帳に関する被告画像3については、原審に反して著作物性を肯定しています(10頁以下)。
なお、本件各商品の商品名の著作物性も争点となっていますが、原審同様、控訴審でも著作物性は認められていません。
(2)原告画像3の掲載が被告画像3についての著作権侵害に当たるか
原告画像3と被告画像3にはアイデアに共通点はあるものの、原告画像は、被告画像3の表現上の本質的特徴を直接感得させるものではないとして、結論として著作権侵害性を否定しています(13頁以下)。
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2 虚偽事実告知性
1審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名について、1審被告の著作権を侵害しているとのアマゾンに対する本件各申告の内容は、すべて虚偽の事実であるとして、結論として、原審同様、不正競争防止法2条1項21号の虚偽事実告知に該当すると判断されています(13頁以下)。
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3 損害論
原審では、逸失利益として4万7492円、弁護士費用相当額損害5000円、合計5万2492円が認定されていましたが、控訴審では5万3179円と商品1個販売分が加算されて増額されています(18頁以下)。
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■コメント
原審ではすべての商品画像の著作物性が否定されましたが、控訴審では単語帳の画像については著作物性を肯定しています。
もっとも、デッドコピーといったものではなかったため著作権侵害性は否定されており、結論としては、原審同様、虚偽事実告知成立の判断となっています。
(なお、控訴審判決PDFには画像が別紙添付されていますので、被告画像3を含め、どのような商品画像であったかが分かります。)
商品画像の著作物性の先例としては、スメルゲット事件(知財高裁平成18.3.29平成17(ネ)10094請負代金請求控訴事件)がありますが、写真の著作物性に関する最近の裁判例の傾向(著作物性を否定しない)からすると、本事案では控訴審の判断のほうが原審よりも傾向には整合的かとは考えられます。
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■参考判例
スメルゲット事件(控訴審)
知財高裁平成18.3.29平成17(ネ)10094請負代金請求控訴事件
判決文
韓流商品ECサイト画像虚偽事実告知事件(控訴審)
大阪高裁令和6.1.26令和5(ネ)1384等損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 奥野寿則
裁判官 渡部佳寿子
原審 大阪地裁令和5.5.11令和3(ワ)11472損害賠償請求事件
原審判決
*裁判所サイト公表 2024.2.13
*キーワード:商品画像、著作物性、虚偽事実告知、スメルゲット事件
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■事案
ECサイト掲出の韓流単語帳などの画像の著作物性などが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):韓流商品販売事業者
被控訴人兼付帯控訴人(1審原告):韓流商品販売会社
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■結論
控訴棄却、附帯控訴一部変更
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項21号
1 被告各画像等の著作物性
2 虚偽事実告知性
3 損害論
4 1審原告の本訴提起等の不法行為性(略)
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■事案の概要
『本件は、アマゾンジャパン合同会社(アマゾン)の運営するインターネットショッピングサイト(アマゾンサイト)上に開設した原告サイトにおいて商品を販売している一審原告が、被告サイトにおいて同種商品を販売している一審被告に対し、一審被告がアマゾンに対して原告サイト上に掲載された画像(原告各画像)及び商品名が一審被告の著作権を侵害しているとして申告した行為(本件各申告)が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為又は不法行為に該当する旨主張して、不競法4条又は民法709条による損害賠償請求権に基づき、本件各申告によって被ったとする損害73万4620円(逸失利益9万1200円、問題対応に要した人件費14万3420円及び弁護士費用相当額50万円の合計額)の損害賠償及びこれに対する最終申告日の後の日である令和3年10月25日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『原審は、本件各申告が不競法2条1項21号の虚偽事実の告知に当たると判断した上、同法4条に基づき、一審原告の請求を5万2492円(本件申告1、3ないし7、9及び10に係る不正競争行為による損害額合計)及びこれに対する上記遅延損害金の支払を求める限度で認容したため、これを不服とする一審被告が敗訴部分について本件控訴を提起し、一審原告が敗訴部分について附帯控訴を提起した。』
(2頁以下)
<経緯>
R3.07 1審被告がアマゾンに申告、出品停止
R3.08 出品再開
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■判決内容
<争点>
1 被告各画像等の著作物性
(1)商品画像、商品名の著作物性
写真集、卓上カレンダー、単語帳といった商品10点の画像について、原審ではいずれも思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、著作物とは認められないと判断していました。
控訴審では、写真集と卓上カレンダーの商品画像については著作物性を否定しましたが、単語帳に関する被告画像3については、原審に反して著作物性を肯定しています(10頁以下)。
なお、本件各商品の商品名の著作物性も争点となっていますが、原審同様、控訴審でも著作物性は認められていません。
(2)原告画像3の掲載が被告画像3についての著作権侵害に当たるか
原告画像3と被告画像3にはアイデアに共通点はあるものの、原告画像は、被告画像3の表現上の本質的特徴を直接感得させるものではないとして、結論として著作権侵害性を否定しています(13頁以下)。
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2 虚偽事実告知性
1審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名について、1審被告の著作権を侵害しているとのアマゾンに対する本件各申告の内容は、すべて虚偽の事実であるとして、結論として、原審同様、不正競争防止法2条1項21号の虚偽事実告知に該当すると判断されています(13頁以下)。
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3 損害論
原審では、逸失利益として4万7492円、弁護士費用相当額損害5000円、合計5万2492円が認定されていましたが、控訴審では5万3179円と商品1個販売分が加算されて増額されています(18頁以下)。
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■コメント
原審ではすべての商品画像の著作物性が否定されましたが、控訴審では単語帳の画像については著作物性を肯定しています。
もっとも、デッドコピーといったものではなかったため著作権侵害性は否定されており、結論としては、原審同様、虚偽事実告知成立の判断となっています。
(なお、控訴審判決PDFには画像が別紙添付されていますので、被告画像3を含め、どのような商品画像であったかが分かります。)
商品画像の著作物性の先例としては、スメルゲット事件(知財高裁平成18.3.29平成17(ネ)10094請負代金請求控訴事件)がありますが、写真の著作物性に関する最近の裁判例の傾向(著作物性を否定しない)からすると、本事案では控訴審の判断のほうが原審よりも傾向には整合的かとは考えられます。
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■参考判例
スメルゲット事件(控訴審)
知財高裁平成18.3.29平成17(ネ)10094請負代金請求控訴事件
判決文