最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
彼岸花モデル写真批判ツイート事件
大阪地裁令和5.10.26令和5(ワ)4054損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 島田美喜子
裁判官 峯健一郎
*裁判所サイト公表 2023.11.15
*キーワード:名誉毀損、写真、ツイート、氏名表示権、同一性保持権、引用、時事の事件の報道、業務妨害
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■事案
写真作品を批判したツイートの著作権侵害性、名誉毀損性などが争点となった事案
原告:写真家
被告:個人
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法19条、20条、32条、41条
1 本件投稿において原告の氏名表示がされているか
2 本件投稿(被告投稿画像の掲載)の氏名表示に関して原告の承諾があったといえるか
3 被告投稿画像中、本件作品1、同3に白線等を付したことが、本件作品の「やむを得ない」改変かどうか
4 本件投稿(被告投稿画像の掲載)が著作権法32条1項の「引用」に当たるか
5 本件投稿が著作権法41条の「時事の事件の報道のための利用」に当たるか
6 本件投稿が、原告の名誉を毀損し、又は業務を妨害するか
7 本件投稿が、原告の名誉を毀損する場合、違法性が阻却されるか
8 損害論
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■事案の概要
『本件は、原告が、被告の後記本件投稿が原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害し、原告の名誉を毀損する又は原告の業務を妨害する不法行為(民法709条)であるとして、損害賠償金として合計330万円及びこれに対する不法行為の日(令和3年10月10日)から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R3.09 原告が本件作品を制作(写真3点)
R3.09 モデルが本件作品をツイート
R3.10 被告がツイート(本件投稿)
R3 原告が発信者情報開示請求
東京地裁令和3年22189仮処分命令申立事件
R4 東京地裁令和4年9828発信者情報開示請求事件
知財高裁令和4年10092控訴事件
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■判決内容
<争点>
1 本件投稿において原告の氏名表示がされているか
本件作品に原告はウォーターマークを付していましたが、裁判所は、結論として、本件投稿においては原告の氏名表示がされていると認めることはできないと判断しています(9頁)。
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2 本件投稿(被告投稿画像の掲載)の氏名表示に関して原告の承諾があったといえるか
裁判所は、原告の本件モデルに対する氏名表示に関する承諾は、原告の被告に対する承諾とは関係がないとして、被告の主張を認めていません(9頁以下)。
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3 被告投稿画像中、本件作品1、同3に白線等を付したことが、本件作品の「やむを得ない」改変かどうか
裁判所は、本件作品は写真であり、本件作品の批評対象を明確にする方法として本件作品に白線等を付す以外に別途文字で説明するなどの方法も容易に考えられる上、付された白線も少なくないとして、被告が白線等を付した行為を著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に該当すると認めることはできないと判断しています(10頁)。
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4 本件投稿(被告投稿画像の掲載)が著作権法32条1項の「引用」に当たるか
裁判所は、本件投稿は、本件作品に対する被告の感想ないし批評を述べる目的で本件作品を引用したこと自体は否定できないものの、本件投稿の大部分は被告投稿画像が占め、文章は極めて短い文(「彼岸花をとても潰している」)であるとして、本件投稿の閲覧者において、本件投稿を見れば本件作品の全体を把握できるようになるものといえるとして、上記目的との関係において、本件投稿における本件作品の引用の方法ないし態様が社会通念上合理的な範囲内のものであるということはできないと判断。被告の引用の主張を認めていません(10頁)。
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5 本件投稿が著作権法41条の「時事の事件の報道のための利用」に当たるか
裁判所は、本件投稿は「時事の事件」にも、「報道」にも該当しないとして、被告の主張を認めていません(11頁)。
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6 本件投稿が、原告の名誉を毀損し、又は業務を妨害するか
裁判所は、本件投稿は、本件作品の撮影者である原告の社会的評価を客観的に低下させる行為と認められ、名誉毀損に該当すると判断。なお、業務妨害については成立を否定しています(11頁以下)。
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7 本件投稿が、原告の名誉を毀損する場合、違法性が阻却されるか
裁判所は、結論として、本件投稿について違法性が阻却されると認めることはできないと判断しています(12頁以下)。
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8 損害論
裁判所は、損害論として、本件投稿により原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)の各侵害、並びに、名誉毀損により受けた精神的苦痛に対する慰謝料額として20万円を認定しています(13頁)。
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■コメント
公園内での写真撮影にあたって、モデルの背景にある彼岸花をモデルが潰しているとの批判を、その写真に白い線などを付してツイートした事案になります。
彼岸花モデル写真批判ツイート事件
大阪地裁令和5.10.26令和5(ワ)4054損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 島田美喜子
裁判官 峯健一郎
*裁判所サイト公表 2023.11.15
*キーワード:名誉毀損、写真、ツイート、氏名表示権、同一性保持権、引用、時事の事件の報道、業務妨害
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■事案
写真作品を批判したツイートの著作権侵害性、名誉毀損性などが争点となった事案
原告:写真家
被告:個人
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法19条、20条、32条、41条
1 本件投稿において原告の氏名表示がされているか
2 本件投稿(被告投稿画像の掲載)の氏名表示に関して原告の承諾があったといえるか
3 被告投稿画像中、本件作品1、同3に白線等を付したことが、本件作品の「やむを得ない」改変かどうか
4 本件投稿(被告投稿画像の掲載)が著作権法32条1項の「引用」に当たるか
5 本件投稿が著作権法41条の「時事の事件の報道のための利用」に当たるか
6 本件投稿が、原告の名誉を毀損し、又は業務を妨害するか
7 本件投稿が、原告の名誉を毀損する場合、違法性が阻却されるか
8 損害論
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■事案の概要
『本件は、原告が、被告の後記本件投稿が原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害し、原告の名誉を毀損する又は原告の業務を妨害する不法行為(民法709条)であるとして、損害賠償金として合計330万円及びこれに対する不法行為の日(令和3年10月10日)から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R3.09 原告が本件作品を制作(写真3点)
R3.09 モデルが本件作品をツイート
R3.10 被告がツイート(本件投稿)
R3 原告が発信者情報開示請求
東京地裁令和3年22189仮処分命令申立事件
R4 東京地裁令和4年9828発信者情報開示請求事件
知財高裁令和4年10092控訴事件
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■判決内容
<争点>
1 本件投稿において原告の氏名表示がされているか
本件作品に原告はウォーターマークを付していましたが、裁判所は、結論として、本件投稿においては原告の氏名表示がされていると認めることはできないと判断しています(9頁)。
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2 本件投稿(被告投稿画像の掲載)の氏名表示に関して原告の承諾があったといえるか
裁判所は、原告の本件モデルに対する氏名表示に関する承諾は、原告の被告に対する承諾とは関係がないとして、被告の主張を認めていません(9頁以下)。
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3 被告投稿画像中、本件作品1、同3に白線等を付したことが、本件作品の「やむを得ない」改変かどうか
裁判所は、本件作品は写真であり、本件作品の批評対象を明確にする方法として本件作品に白線等を付す以外に別途文字で説明するなどの方法も容易に考えられる上、付された白線も少なくないとして、被告が白線等を付した行為を著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に該当すると認めることはできないと判断しています(10頁)。
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4 本件投稿(被告投稿画像の掲載)が著作権法32条1項の「引用」に当たるか
裁判所は、本件投稿は、本件作品に対する被告の感想ないし批評を述べる目的で本件作品を引用したこと自体は否定できないものの、本件投稿の大部分は被告投稿画像が占め、文章は極めて短い文(「彼岸花をとても潰している」)であるとして、本件投稿の閲覧者において、本件投稿を見れば本件作品の全体を把握できるようになるものといえるとして、上記目的との関係において、本件投稿における本件作品の引用の方法ないし態様が社会通念上合理的な範囲内のものであるということはできないと判断。被告の引用の主張を認めていません(10頁)。
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5 本件投稿が著作権法41条の「時事の事件の報道のための利用」に当たるか
裁判所は、本件投稿は「時事の事件」にも、「報道」にも該当しないとして、被告の主張を認めていません(11頁)。
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6 本件投稿が、原告の名誉を毀損し、又は業務を妨害するか
裁判所は、本件投稿は、本件作品の撮影者である原告の社会的評価を客観的に低下させる行為と認められ、名誉毀損に該当すると判断。なお、業務妨害については成立を否定しています(11頁以下)。
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7 本件投稿が、原告の名誉を毀損する場合、違法性が阻却されるか
裁判所は、結論として、本件投稿について違法性が阻却されると認めることはできないと判断しています(12頁以下)。
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8 損害論
裁判所は、損害論として、本件投稿により原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)の各侵害、並びに、名誉毀損により受けた精神的苦痛に対する慰謝料額として20万円を認定しています(13頁)。
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■コメント
公園内での写真撮影にあたって、モデルの背景にある彼岸花をモデルが潰しているとの批判を、その写真に白い線などを付してツイートした事案になります。