最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
リゾートガール半袖Tシャツ事件
東京地裁令和5.9.29令和3(ワ)10991損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 間明宏充
裁判官 バヒスバラン薫
*裁判所サイト公表 2023.10.16
*キーワード:応用美術論、イラスト、複製、翻案、同一性保持権、商標的使用、損害論、差止の範囲
--------------------
■事案
半袖Tシャツに利用されたイラストの著作物性などが争点となった事案
原告:アパレル会社
被告:アパレル会社
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項、27条、20条、114条1項
1 原告イラスト2の著作物性並びに著作権及び著作者人格権の帰属
2 著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の有無
3 同一性保持権侵害の有無
4 原告商標と被告標章の類否
5 商標的使用該当性
6 損害の発生の有無及び額
7 差止め及び廃棄の必要性
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、被告に対し、被告が販売する別紙被告製品目録記載のTシャツ(以下「被告製品」という。)に付した別紙被告イラスト目録記載のイラスト(以下「被告イラスト」又は「被告標章」ということがある。)が、別紙原告イラスト目録記載2のイラスト(以下「原告イラスト2」という。)に係る原告の著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)並びに原告が有する別紙商標権目録記載の商標権(以下「原告商標権」といい、同商標権に係る登録商標を「原告商標」という。)を侵害しているとして、(1)著作権法112条 1 項に基づく原告イラスト2の複製、翻案及び譲渡の差止め、(2)商標法36条1項に基づく被告の販売するTシャツに被告イラストを付すこと及び被告イラストを付したTシャツの譲渡等の差止め及び(3)著作権法112条2項又は商標法36条2項に基づく被告製品の廃棄及び被告イラストの画像データの削除(廃棄請求及び削除請求はいずれも選択的併合)並びに(4)不法行為(民法709条)に基づく損害金合計412万2672円(著作権法114条1項又は商標法38条1項1号による逸失利益262万2672円、著作者人格権侵害による無形損害100万円及び弁護士費用50万円(逸失利益及び弁護士費用の合計額である312万2672円の損害賠償請求の範囲で選択的併合))及びこれに対する令和3年6月3日(不法行為の後の日である訴状送達の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H25.04 原告イラスト1制作
H27.07 原告商標出願
H29 原告イラスト2グッズ販売
R01.09 被告製品販売
--------------------
■判決内容
<争点>
1 原告イラスト2の著作物性並びに著作権及び著作者人格権の帰属
(1)原告イラスト2の著作物性
裁判所は、美術の著作物性について応用美術論に言及し、機能との分離把握の基準を示した上で、実用性を有する有体物であるTシャツ等に印刷して利用することが予定されている原告イラスト2について検討。
実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となる美的特性を把握することが可能であると判断。
また、原告イラスト2の創作性もあるとして、原告イラスト2の著作物性(2条1項1号)を肯定しています(25頁以下)。
(2)著作権及び著作者人格権の帰属
職務著作(15条)として原告に帰属する原告イラスト1を、原告代表者が改変して作成されたのが原告イラスト2であるとして、原告イラスト2の著作権及び著作者人格権は原告に帰属するものと裁判所は判断しています。
--------------------
2 著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の有無
結論として、被告イラストの作成について、原告の原告イラスト2に係る翻案権(27条)侵害が成立すると裁判所は判断しています(28頁以下)。
--------------------
3 同一性保持権侵害の有無
被告は、原告イラスト2を改変して被告イラストを作成し、これを使用して被告製品を販売しており、結論として、裁判所は、被告イラストの作成は、原告の「意に反して」された改変に該当するとして原告の同一性保持権(20条1項)を侵害すると判断しています(30頁)。
--------------------
4 原告商標と被告標章の類否
原告商標と被告標章の類否について、裁判所は、原告商標と被告標章との間において誤認混同のおそれがあると判断しています(31頁以下)。
--------------------
5 商標的使用該当性
被告は、被告標章を被告製品に付して使用していたとして、被告標章の使用は自他識別機能を果たす態様での使用であるといえ、商標的使用に該当すると裁判所は判断しています(34頁以下)。
結論として、商標権侵害性が肯定されています。
--------------------
6 損害の発生の有無及び額
(1)著作権侵害による原告の逸失利益(114条1項)
・被告製品販売数合計468枚
・利益額5178円/枚
・著作権者の販売等の能力に応じた額 468枚分
・販売することができないとする事情 被告製品の譲渡数量の70%
68着×5178円×0.3=72万6991円
(35頁以下)
(2)同一性保持権侵害による損害
10万円
(3)弁護士費用相当額損害
8万円
合計90万6991円(72万6991円+10万円+8万円)
なお、本件において、原告の商標権侵害による損害額が著作権等侵害による損害額よりも多額になることを認めるに足りる事情は認められないとして、別途損害額は算定されていません。
--------------------
7 差止め及び廃棄の必要性
販売の差止めと被告製品及び被告イラストの画像データの廃棄の必要性が認められています(112条 39頁以下)。
また、被告が、その販売するTシャツに被告標章を付し、又は被告標章を付したTシャツを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示することを差止めと、被告製品及び被告標章の画像データの廃棄の必要性が認められています(商標法36条)。
結論として、主文の内容で差止め及び廃棄の必要性が認められています。
--------------------
■コメント
別紙にイラストや製品が掲載されているので、双方のイラストの内容がよくわかります。
リゾートガール半袖Tシャツ事件
東京地裁令和5.9.29令和3(ワ)10991損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 間明宏充
裁判官 バヒスバラン薫
*裁判所サイト公表 2023.10.16
*キーワード:応用美術論、イラスト、複製、翻案、同一性保持権、商標的使用、損害論、差止の範囲
--------------------
■事案
半袖Tシャツに利用されたイラストの著作物性などが争点となった事案
原告:アパレル会社
被告:アパレル会社
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項、27条、20条、114条1項
1 原告イラスト2の著作物性並びに著作権及び著作者人格権の帰属
2 著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の有無
3 同一性保持権侵害の有無
4 原告商標と被告標章の類否
5 商標的使用該当性
6 損害の発生の有無及び額
7 差止め及び廃棄の必要性
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、被告に対し、被告が販売する別紙被告製品目録記載のTシャツ(以下「被告製品」という。)に付した別紙被告イラスト目録記載のイラスト(以下「被告イラスト」又は「被告標章」ということがある。)が、別紙原告イラスト目録記載2のイラスト(以下「原告イラスト2」という。)に係る原告の著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)並びに原告が有する別紙商標権目録記載の商標権(以下「原告商標権」といい、同商標権に係る登録商標を「原告商標」という。)を侵害しているとして、(1)著作権法112条 1 項に基づく原告イラスト2の複製、翻案及び譲渡の差止め、(2)商標法36条1項に基づく被告の販売するTシャツに被告イラストを付すこと及び被告イラストを付したTシャツの譲渡等の差止め及び(3)著作権法112条2項又は商標法36条2項に基づく被告製品の廃棄及び被告イラストの画像データの削除(廃棄請求及び削除請求はいずれも選択的併合)並びに(4)不法行為(民法709条)に基づく損害金合計412万2672円(著作権法114条1項又は商標法38条1項1号による逸失利益262万2672円、著作者人格権侵害による無形損害100万円及び弁護士費用50万円(逸失利益及び弁護士費用の合計額である312万2672円の損害賠償請求の範囲で選択的併合))及びこれに対する令和3年6月3日(不法行為の後の日である訴状送達の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H25.04 原告イラスト1制作
H27.07 原告商標出願
H29 原告イラスト2グッズ販売
R01.09 被告製品販売
--------------------
■判決内容
<争点>
1 原告イラスト2の著作物性並びに著作権及び著作者人格権の帰属
(1)原告イラスト2の著作物性
裁判所は、美術の著作物性について応用美術論に言及し、機能との分離把握の基準を示した上で、実用性を有する有体物であるTシャツ等に印刷して利用することが予定されている原告イラスト2について検討。
実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となる美的特性を把握することが可能であると判断。
また、原告イラスト2の創作性もあるとして、原告イラスト2の著作物性(2条1項1号)を肯定しています(25頁以下)。
(2)著作権及び著作者人格権の帰属
職務著作(15条)として原告に帰属する原告イラスト1を、原告代表者が改変して作成されたのが原告イラスト2であるとして、原告イラスト2の著作権及び著作者人格権は原告に帰属するものと裁判所は判断しています。
--------------------
2 著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の有無
結論として、被告イラストの作成について、原告の原告イラスト2に係る翻案権(27条)侵害が成立すると裁判所は判断しています(28頁以下)。
--------------------
3 同一性保持権侵害の有無
被告は、原告イラスト2を改変して被告イラストを作成し、これを使用して被告製品を販売しており、結論として、裁判所は、被告イラストの作成は、原告の「意に反して」された改変に該当するとして原告の同一性保持権(20条1項)を侵害すると判断しています(30頁)。
--------------------
4 原告商標と被告標章の類否
原告商標と被告標章の類否について、裁判所は、原告商標と被告標章との間において誤認混同のおそれがあると判断しています(31頁以下)。
--------------------
5 商標的使用該当性
被告は、被告標章を被告製品に付して使用していたとして、被告標章の使用は自他識別機能を果たす態様での使用であるといえ、商標的使用に該当すると裁判所は判断しています(34頁以下)。
結論として、商標権侵害性が肯定されています。
--------------------
6 損害の発生の有無及び額
(1)著作権侵害による原告の逸失利益(114条1項)
・被告製品販売数合計468枚
・利益額5178円/枚
・著作権者の販売等の能力に応じた額 468枚分
・販売することができないとする事情 被告製品の譲渡数量の70%
68着×5178円×0.3=72万6991円
(35頁以下)
(2)同一性保持権侵害による損害
10万円
(3)弁護士費用相当額損害
8万円
合計90万6991円(72万6991円+10万円+8万円)
なお、本件において、原告の商標権侵害による損害額が著作権等侵害による損害額よりも多額になることを認めるに足りる事情は認められないとして、別途損害額は算定されていません。
--------------------
7 差止め及び廃棄の必要性
販売の差止めと被告製品及び被告イラストの画像データの廃棄の必要性が認められています(112条 39頁以下)。
また、被告が、その販売するTシャツに被告標章を付し、又は被告標章を付したTシャツを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示することを差止めと、被告製品及び被告標章の画像データの廃棄の必要性が認められています(商標法36条)。
結論として、主文の内容で差止め及び廃棄の必要性が認められています。
--------------------
■コメント
別紙にイラストや製品が掲載されているので、双方のイラストの内容がよくわかります。