最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
アパレル商品画像無断使用事件
東京地裁令和5.5.18令和4(ワ)13979著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2023.9.22
*キーワード:写真、商品写真、著作物性、複製、翻案、同一性保持権、氏名表示権、損害論
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■事案
モデルの自撮り写真や商品写真の著作物性などが争点となった事案
原告:モデル兼アパレル経営者
被告:アパレル会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、19条、20条、114条3項
1 原告写真の著作物性
2 原告写真の著作者及び著作権者・著作者人格権者
3 複製権及び翻案権侵害の有無
4 公衆送信権及び送信可能化権侵害の有無
5 同一性保持権侵害の有無
6 氏名表示権侵害の有無
7 被告の故意又は過失の有無
8 原告の損害額
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■事案の概要
『本件は、原告が、別紙原告著作物目録記載の各写真(以下、同目録記載の番号順に「原告写真1」などといい、これらを一括して「原告写真」という。)の著作権を有するところ、被告が、その運営するウェブサイト、写真・動画共有サービス「インスタグラム」及び短文投稿サービス「ツイッター」において、別紙被告写真目録記載の各写真(以下、同目録記載の番号順に「被告写真1」などといい、これらを一括して「被告写真」という。)を掲載した行為は、原告写真に係る原告の著作権(複製権、翻案権、公衆送信権及び送信可能化権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害すると主張して、被告に対し、著作権及び著作者人格権に基づき被告写真の利用の差止め(著作権法112条1項)を求めると共に、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為(民法709条)に基づき1541万0912円の損害賠償及びうち500万円については令和4年7月24日(訴状送達の日の翌日)から、うち1041万0912円については令和5年2月11日(訴え変更申立書送達の日の翌日)から、それぞれ支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H28 原告写真撮影
R03.04 被告が運営サイト、インスタグラム、ツイッターに被告写真掲載
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■判決内容
<争点>
1 原告写真の著作物性
原告写真は、原告の取扱商品の販売促進目的で撮影され、被写体は原告自身がモデルとなっていたり、商品自体が撮影されているものでした。
原告写真の著作物性及び著作者について、裁判所は、写真の著作物の意義(著作権法10条1項8号)に言及した上で、本件のあてはめとしては、原告写真はいずれも写真の著作物であると判断しています(13頁以下)。
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2 原告写真の著作者及び著作権者・著作者人格権者
裁判所は、結論として、原告がその著作者として原告写真の著作権及び著作者人格権を有すると判断しています(13頁以下)。
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3 複製権及び翻案権侵害の有無
裁判所は335点余に及ぶ被告写真のウェブサイト等への被告による掲載行為について、複製や翻案の意義に言及した上で、結論として、原告の複製権又は翻案権を侵害するものであると判断しています(15頁以下)。
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4 公衆送信権及び送信可能化権侵害の有無
被告による被告写真のウェブサイト等への掲載行為について、裁判所は、公衆送信権及び送信可能化権侵害を認定しています(20頁)。
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5 同一性保持権侵害の有無
裁判所は、改変の意義(20条1項)に言及した上で、本件に関して、原告写真を翻案したと判断される被告写真については、その改変により原告写真とは別の著作物を創作するに至ったものであり、著作者である原告の意に反する改変を行ったものといえると裁判所は判断。
結論として、これらの被告写真の被告ウェブサイト等への掲載は、対応する原告写真に係る原告の同一性保持権の侵害にあたると裁判所は判断しています(20頁以下)。
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6 氏名表示権侵害の有無
被告が被告ウェブサイト等に被告写真を掲載するに当たり、原告の氏名が表示されていない点について、氏名表示権侵害が認定されています(21頁)。
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7 被告の故意又は過失の有無
裁判所は、被告は、被告写真の被告ウェブサイト等への掲載による原告の著作権及び著作者人格権侵害につき、少なくとも過失があると認定しています(22頁以下)。
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8 原告の損害額
(1)著作権侵害による損害額
201万円
(2)慰謝料
15万円
(3)弁護士費用相当額損害
21万6000円
合計237万6000円(23頁以下)。
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■コメント
アパレル写真の無断使用の事案となりますが、点数が多い点が特徴的な事案となります。
別紙添付がないので、商品画像の雰囲気がよくわかりませんでした。
話しは逸れますが、損害額の算定の際にアマナの料金表が判決のなかでも斟酌の可否が検討されていますが、そのアマナ、
2023/7/3マーケットニュース
特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)アマナ
https://www.jpx.co.jp/news/1023/20230703-11.html
2023/9/20ヤフーニュース
東証グロース上場、画像、映像企画制作のアマナ(東京)が事業再生ADR手続きを申請
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c79f97b80e9a4afa2f2cd5953d00e3cf1d02cf0?fbclid=IwAR3sriOz9M7lv4qG-Tmo_dQ2FhaQBe6rq2pPfMkAzCZTLKyvjV-E_7kDfvg_aem_AW3Cyu4kNO2tMz5g5ngTsCbFlXVFg-2oxyOd-b5_MJidOey1Z5QehJoxIqUvqo8hLdw
業界的には、債権を回収できるか動向を注視しているところです。
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■追記(2023.10.17)
「案件実績のお知らせ(東京地判令和5年5月18日(令和4年(ワ)第13979号 著作権侵害差止等請求事件))」
2023.10.17 Tue by Kobayashi & Yugeta Law Office.(小林・弓削田 法律事務所)
https://www.yu-kobalaw.com/information/information-1274
原告著作物目録を掲載していただいています。336点の画像がたいへん参考になります。
アパレル商品画像無断使用事件
東京地裁令和5.5.18令和4(ワ)13979著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2023.9.22
*キーワード:写真、商品写真、著作物性、複製、翻案、同一性保持権、氏名表示権、損害論
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■事案
モデルの自撮り写真や商品写真の著作物性などが争点となった事案
原告:モデル兼アパレル経営者
被告:アパレル会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、19条、20条、114条3項
1 原告写真の著作物性
2 原告写真の著作者及び著作権者・著作者人格権者
3 複製権及び翻案権侵害の有無
4 公衆送信権及び送信可能化権侵害の有無
5 同一性保持権侵害の有無
6 氏名表示権侵害の有無
7 被告の故意又は過失の有無
8 原告の損害額
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■事案の概要
『本件は、原告が、別紙原告著作物目録記載の各写真(以下、同目録記載の番号順に「原告写真1」などといい、これらを一括して「原告写真」という。)の著作権を有するところ、被告が、その運営するウェブサイト、写真・動画共有サービス「インスタグラム」及び短文投稿サービス「ツイッター」において、別紙被告写真目録記載の各写真(以下、同目録記載の番号順に「被告写真1」などといい、これらを一括して「被告写真」という。)を掲載した行為は、原告写真に係る原告の著作権(複製権、翻案権、公衆送信権及び送信可能化権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害すると主張して、被告に対し、著作権及び著作者人格権に基づき被告写真の利用の差止め(著作権法112条1項)を求めると共に、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為(民法709条)に基づき1541万0912円の損害賠償及びうち500万円については令和4年7月24日(訴状送達の日の翌日)から、うち1041万0912円については令和5年2月11日(訴え変更申立書送達の日の翌日)から、それぞれ支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H28 原告写真撮影
R03.04 被告が運営サイト、インスタグラム、ツイッターに被告写真掲載
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■判決内容
<争点>
1 原告写真の著作物性
原告写真は、原告の取扱商品の販売促進目的で撮影され、被写体は原告自身がモデルとなっていたり、商品自体が撮影されているものでした。
原告写真の著作物性及び著作者について、裁判所は、写真の著作物の意義(著作権法10条1項8号)に言及した上で、本件のあてはめとしては、原告写真はいずれも写真の著作物であると判断しています(13頁以下)。
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2 原告写真の著作者及び著作権者・著作者人格権者
裁判所は、結論として、原告がその著作者として原告写真の著作権及び著作者人格権を有すると判断しています(13頁以下)。
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3 複製権及び翻案権侵害の有無
裁判所は335点余に及ぶ被告写真のウェブサイト等への被告による掲載行為について、複製や翻案の意義に言及した上で、結論として、原告の複製権又は翻案権を侵害するものであると判断しています(15頁以下)。
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4 公衆送信権及び送信可能化権侵害の有無
被告による被告写真のウェブサイト等への掲載行為について、裁判所は、公衆送信権及び送信可能化権侵害を認定しています(20頁)。
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5 同一性保持権侵害の有無
裁判所は、改変の意義(20条1項)に言及した上で、本件に関して、原告写真を翻案したと判断される被告写真については、その改変により原告写真とは別の著作物を創作するに至ったものであり、著作者である原告の意に反する改変を行ったものといえると裁判所は判断。
結論として、これらの被告写真の被告ウェブサイト等への掲載は、対応する原告写真に係る原告の同一性保持権の侵害にあたると裁判所は判断しています(20頁以下)。
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6 氏名表示権侵害の有無
被告が被告ウェブサイト等に被告写真を掲載するに当たり、原告の氏名が表示されていない点について、氏名表示権侵害が認定されています(21頁)。
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7 被告の故意又は過失の有無
裁判所は、被告は、被告写真の被告ウェブサイト等への掲載による原告の著作権及び著作者人格権侵害につき、少なくとも過失があると認定しています(22頁以下)。
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8 原告の損害額
(1)著作権侵害による損害額
201万円
(2)慰謝料
15万円
(3)弁護士費用相当額損害
21万6000円
合計237万6000円(23頁以下)。
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■コメント
アパレル写真の無断使用の事案となりますが、点数が多い点が特徴的な事案となります。
別紙添付がないので、商品画像の雰囲気がよくわかりませんでした。
話しは逸れますが、損害額の算定の際にアマナの料金表が判決のなかでも斟酌の可否が検討されていますが、そのアマナ、
2023/7/3マーケットニュース
特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)アマナ
https://www.jpx.co.jp/news/1023/20230703-11.html
2023/9/20ヤフーニュース
東証グロース上場、画像、映像企画制作のアマナ(東京)が事業再生ADR手続きを申請
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c79f97b80e9a4afa2f2cd5953d00e3cf1d02cf0?fbclid=IwAR3sriOz9M7lv4qG-Tmo_dQ2FhaQBe6rq2pPfMkAzCZTLKyvjV-E_7kDfvg_aem_AW3Cyu4kNO2tMz5g5ngTsCbFlXVFg-2oxyOd-b5_MJidOey1Z5QehJoxIqUvqo8hLdw
業界的には、債権を回収できるか動向を注視しているところです。
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■追記(2023.10.17)
「案件実績のお知らせ(東京地判令和5年5月18日(令和4年(ワ)第13979号 著作権侵害差止等請求事件))」
2023.10.17 Tue by Kobayashi & Yugeta Law Office.(小林・弓削田 法律事務所)
https://www.yu-kobalaw.com/information/information-1274
原告著作物目録を掲載していただいています。336点の画像がたいへん参考になります。