最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
YouTube動画テロップ事件
東京地裁令和5.6.12令和4(ワ)9090損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 久野雄平
*裁判所サイト公表 2023.9.21
*キーワード:テロップ、著作物性、信義則、損害論
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■事案
YouTube動画のテロップ部分の著作物性などが争点となった事案
原告:動画配信チャンネル運営者
被告:ブログ運営者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、114条3項
1 本件テロップの著作物性
2 複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無
3 原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無
4 損害論
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■事案の概要
『本件は、別紙著作物目録記載の動画(以下「本件動画」という。)における同目録記載5の内容のテロップ(以下「本件テロップ」という。)を創作したとする原告が、被告による別紙投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」という。)の投稿は原告の著作物である本件テロップを複製、翻案及び公衆送信したものであり、本件テロップに係る原告の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)を侵害するものである旨主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害190万2113円及びこれに対する不法行為日(本件記事投稿日)である令和2年7月27日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
<経緯>
R2.06 原告が本件動画を投稿
R2.07 被告が本件記事を投稿
R3.03 原告が発信者情報開示請求提訴
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■判決内容
<争点>
1 本件テロップの著作物性
本件動画は、動物等のイメージ画像等を繋ぎ合わせたスライドショー、BGM、本件テロップ及びこれを朗読したナレーションによって構成されているものでした。
裁判所は、スライドショー及びBGMのみではストーリー性が乏しく、本件動画の内容を正しく把握することは困難で、本件テロップ及びこれを朗読したナレーションは、その余の構成部分に比して、本件動画の中で重要な役割を担うものであると判断。
結論として、本件テロップは、その作成者である原告の思想及び感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物であると判断しています(8頁)。
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2 複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無
本件テロップと本件記事の各内容の類否について、裁判所は、本件記事には、本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれ、他方、相違する部分は、句読点の有無や助詞の違い、文言の一部省略等の僅かな相違や若干の表現の修正であるなどとして、実質的にほぼ同一の内容を表現したものであると判断。
本件記事は、本件テロップに依拠したものと認められると共に、著作物である本件テロップの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者がその特徴を直接感得できるとしています。
結論として、裁判所は、被告が本件記事を被告サイト上に投稿する行為は、少なくとも過失があり、原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権、そして公衆送信権を侵害するものであると判断しています(9頁以下)。
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3 原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無
被告は、原告が第三者の著作権を侵害して作成した動画による収益が減少したとして損賠賠償を請求し、また、本件動画全体としては請求が認められない可能性があるため、本件テロップのみを対象として権利侵害を主張しているとして、原告の請求が信義則に反する旨主張しましたが、裁判所は認めていません(10頁以下)。
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4 損害論
(1)使用料相当額損害(114条3項)
本件動画の経済的価値:収益額379万4863円
仮想使用料率:3%
計12万円
(2)発信者情報の取得に要した費用
計10万円
(3)弁護士費用相当額損害
2万円
合計24万円
(11頁以下)
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■コメント
動物のイメージ画像をつなぎ合わせたYouTube動画を他人がブログに無断転載した事案となります。
オリジナルの画像部分は他人の著作物のようですし、テロップの内容も既存のものに類似するようで、著作物性や著作権侵害性の判断は、どこまで手間暇をかけて立証するかということもあるかもしれません。
YouTube動画テロップ事件
東京地裁令和5.6.12令和4(ワ)9090損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 久野雄平
*裁判所サイト公表 2023.9.21
*キーワード:テロップ、著作物性、信義則、損害論
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■事案
YouTube動画のテロップ部分の著作物性などが争点となった事案
原告:動画配信チャンネル運営者
被告:ブログ運営者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、114条3項
1 本件テロップの著作物性
2 複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無
3 原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無
4 損害論
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■事案の概要
『本件は、別紙著作物目録記載の動画(以下「本件動画」という。)における同目録記載5の内容のテロップ(以下「本件テロップ」という。)を創作したとする原告が、被告による別紙投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」という。)の投稿は原告の著作物である本件テロップを複製、翻案及び公衆送信したものであり、本件テロップに係る原告の著作権(複製権、翻案権及び公衆送信権)を侵害するものである旨主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害190万2113円及びこれに対する不法行為日(本件記事投稿日)である令和2年7月27日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
<経緯>
R2.06 原告が本件動画を投稿
R2.07 被告が本件記事を投稿
R3.03 原告が発信者情報開示請求提訴
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■判決内容
<争点>
1 本件テロップの著作物性
本件動画は、動物等のイメージ画像等を繋ぎ合わせたスライドショー、BGM、本件テロップ及びこれを朗読したナレーションによって構成されているものでした。
裁判所は、スライドショー及びBGMのみではストーリー性が乏しく、本件動画の内容を正しく把握することは困難で、本件テロップ及びこれを朗読したナレーションは、その余の構成部分に比して、本件動画の中で重要な役割を担うものであると判断。
結論として、本件テロップは、その作成者である原告の思想及び感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物であると判断しています(8頁)。
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2 複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無
本件テロップと本件記事の各内容の類否について、裁判所は、本件記事には、本件テロップと完全に一致する表現が多数含まれ、他方、相違する部分は、句読点の有無や助詞の違い、文言の一部省略等の僅かな相違や若干の表現の修正であるなどとして、実質的にほぼ同一の内容を表現したものであると判断。
本件記事は、本件テロップに依拠したものと認められると共に、著作物である本件テロップの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者がその特徴を直接感得できるとしています。
結論として、裁判所は、被告が本件記事を被告サイト上に投稿する行為は、少なくとも過失があり、原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権、そして公衆送信権を侵害するものであると判断しています(9頁以下)。
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3 原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無
被告は、原告が第三者の著作権を侵害して作成した動画による収益が減少したとして損賠賠償を請求し、また、本件動画全体としては請求が認められない可能性があるため、本件テロップのみを対象として権利侵害を主張しているとして、原告の請求が信義則に反する旨主張しましたが、裁判所は認めていません(10頁以下)。
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4 損害論
(1)使用料相当額損害(114条3項)
本件動画の経済的価値:収益額379万4863円
仮想使用料率:3%
計12万円
(2)発信者情報の取得に要した費用
計10万円
(3)弁護士費用相当額損害
2万円
合計24万円
(11頁以下)
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■コメント
動物のイメージ画像をつなぎ合わせたYouTube動画を他人がブログに無断転載した事案となります。
オリジナルの画像部分は他人の著作物のようですし、テロップの内容も既存のものに類似するようで、著作物性や著作権侵害性の判断は、どこまで手間暇をかけて立証するかということもあるかもしれません。