最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ファスト映画損害賠償請求事件

東京地裁令和5.8.24令和4(ワ)12062損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官    久野雄平
裁判官    吉野弘子

*裁判所サイト公表 2023.9.12
*キーワード:ファスト映画、翻案権、公衆送信権、損害論、CODA

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■事案

映画製作会社13社によるファスト映画に関する損害賠償請求の事案

原告:映画製作会社ら13社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法27条、23条、114条3項

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

『本件は、原告らが、被告、A及びB(以下、A及びBを「Aら」という。)は原告らの著作物である別紙著作物目録記載の映画の著作物を編集して作成した動画をインターネット上の動画投稿サイト「YouTube」に投稿し、これによって原告らの著作権(翻案権、公衆送信権)を侵害したと主張して、被告に対し、民法709条(損害額につき、著作権法(以下「法」という。)114条3項)に基づき、一部請求として、前記主文記載の額の損害賠償及びこれらに対する令和5年6月30日(訴状送達の日(公示送達の効力発生日)の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

R04.05 被告、A、Bに対して本件提起
R04.06 被告につき口頭弁論分離
R04.11 A、Bにつき全部認容判決

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

被告及びAらは、故意によって映画の著作物である本件各映画作品について、原告らがそれぞれ有する著作権(翻案権、公衆送信権)を侵害したと裁判所は認定しています(3頁)。

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2 損害論

裁判所は、原告らが本件各映画作品に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、YouTube上で視聴する場合の本件各映画作品それぞれのレンタル価格等を考慮して定める金額に、本件各動画のYouTube上での再生数を乗じて算定するのが相当であると説示。

■諸事情
本件各映画作品の各レンタル価格(HD画質のもの) 1作品当たり400円
YouTubeプラットフォーム手数料 30%
被告及びAらが本件侵害行為によって得た広告収益 700万円
映画作品 54点

■ライセンス料相当額(114条3項)
本件各動画の再生数1回当たり 200円

結論として、1社あたり213万円から1億8576万円のなかで各社の損害額が認定されています(3頁以下)。

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■コメント

ファスト映画(2時間ほどの映画を10分程度にまとめた動画)に関する損害賠償請求事件です。被告は公示送達による呼出しを受けたものの、口頭弁論期日に出頭せず答弁書その他の準備書面も提出しておらず、全部認容の結論となっています。
事案の詳しい内容については、CODAのプレスリリースをご参照ください。

「ファスト映画:所在不明のアップローダーに対し5億円の損害賠償を命じる判決」
CODA(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 )
リリース(2023/8/24)