最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

勝ち馬予想情報プログラム事件

大阪地裁令和5.4.24令和2(ワ)4948損害賠償等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官    峯健一郎
裁判官    杉浦一輝

*裁判所サイト公表 2023.5.11
*キーワード:営業秘密、プログラム、著作物性

   --------------------

■事案

勝ち馬予想情報プログラムの著作物性などが争点となった事案

原告:競馬情報提供会社
被告:競馬情報提供会社、原告元従業員ら

   --------------------

■結論

請求棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項4号

1 不正競争防止法関連
2 本件プログラム及び本件ブログは原告の著作物であるか
3 被告会社、被告P1及び被告P2に利益分配に係る共同不法行為が成立するか

   --------------------

■事案の概要

『原告と被告会社は、いずれも、インターネット上で、顧客に対して競馬の勝ち馬を数値を用いて予想したもの(指数)を掲載した競馬新聞を提供するサービスを行っているところ、本件は、原告が、
(1) 被告らが、共謀の上、(1)被告P1及び被告P2が、原告に在職中、本件情報が保存されたパソコン等を原告事務所から持ち出した行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号又は7号の不正競争に該当する、(2)被告会社が、本件プログラム及び本件ブログを利用して競馬新聞を作成し、顧客に提供した行為が原告の著作権(公衆送信権、送信可能化権、複製権及び翻案権)を侵害する、と主張し、被告らに対し、連帯して、不競法3条又は著作権法112条に基づき、本件情報及び本件プログラムの全部又は一部の使用等の差止め及び廃棄等を求めるとともに、不競法4条又は民法709条に基づき、損害合計3960万8184円及びこれに対する前記各行為後の日(各訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、
(2) 被告会社、被告P1及び被告P2が、共謀の上、被告会社が原告に対して分配すべき売上金の一部を隠匿するなどして原告への支払を免れた行為が共同不法行為を構成すると主張し、同被告らに対し、民法709条及び719条1項に基づき、損害合計1598万7468円及びこれに対する前同様の遅延損害金の連帯支払を求める
事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H17 被告P1が競馬情報ブログ開設
H18 被告P1が被告会社設立

本件プログラム:IDM指数作成プログラム及び指数作成手法
本件ブログ:ハイブリッド競馬新聞ブログ「P1VSP4 馬券対決+競馬研究ブログ」
IDM:当該馬の能力値(素点)に、観察者が馬自体の観察やレース内容、条件等の観察によって評価した種々の要素を加えた結果算出される数値

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 不正競争防止法関連

原告は、本件情報を本件パソコン及び本件サーバー上のハードディスクに保存していたことを前提として、被告P1及び被告P2が本件パソコン等を持ち出した行為が不競法2条1項4号又は7号に当たる旨を主張しました。
結論として、裁判所は原告の主張を認めていません(15頁以下)。

   --------------------

2 本件プログラム及び本件ブログは原告の著作物であるか

まず、本件プログラム(IDM指数作成プログラム及び指数作成手法)の著作物性について、裁判所は、原告が創作性があると主張する、IDM構成要素の選択やその数値化等は、プログラムの具体的記述の前提となるアイデアにすぎず、本件プログラムのうちプログラムの具体的記述に該当する部分は、単純な加減乗(除)の部分であるというべきであり、その指令の表現自体は上記アイデアと一体のものであって、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に作成者の個性が表れているとはいえないと判断。
結論として、本件プログラムの著作物性を否定しています(17頁以下)。

次に、本件ブログについて、裁判所は結論として、原告の著作物ではないとして、原告の主張を認めていません。

以上から、本件プログラム及び本件ブログは、いずれも原告の著作物であるとは認められず、この点に関する原告の主張は認められていません。

   --------------------

3 被告会社、被告P1及び被告P2に利益分配に係る共同不法行為が成立するか

原告は、被告会社が、利益分配契約に基づき、原告に対して経費を適正に支出し売上金を開示すべき義務を負っていたことを指摘して、被告会社、被告P1及び被告P2が原告に支払うべき利益を不当に免れた行為は、共同不法行為を構成する旨を主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません(19頁)。

   --------------------

■コメント

退職従業員との紛争事案となります。