最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「幻想水滸伝」楽曲無許諾編曲事件(控訴審)
知財高裁令和5.4.20令和4(ネ)10115著作権侵害損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 勝又来未子
裁判官 中島朋宏
原審:東京地裁令和4.9.8令和3(ワ)3201著作権侵害損害賠償等請求事件
判決文
別紙
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2023.5.8
*キーワード:レコード製作、許諾
--------------------
■事案
ロールプレイングゲーム「幻想水滸伝」の楽曲の無許諾複製、翻案などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審被告):音楽制作会社、代表社員
被控訴人(1審原告):ゲームコンテンツ制作会社
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、28条、26条の2第1項、23条1項
1 本件編曲行為、本件録音・複製行為、本件譲渡・配信行為及び本件輸入行為の主体
2 本件編曲行為による原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)侵害の成否
3 本件録音・複製行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権)侵害の成否
4 本件譲渡・配信行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。))侵害の成否
5 本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否
6 1審原告の損害額
--------------------
■事案の概要
『(1) 本件は、被控訴人が、控訴人らに対し、原判決別紙被告ら物件目録記載2の各楽曲(以下、まとめて「本件楽曲」という。)及び本件楽曲を収録した同目録記載1のアルバム(以下「本件アルバム」ということがある。)に係る控訴人らの次のアの各侵害行為により、被控訴人が著作権を有する原判決別紙著作物目録記載の各楽曲のうち赤字で記載された楽曲(原告楽曲)に係る著作権が侵害されたと主張して、次のイの各請求をする事案である。
ア 侵害行為
(ア) 控訴人らが原告楽曲に依拠してオーケストラ演奏のための本件楽曲の譜面を作成し、もって原告楽曲の編曲をした行為(本件編曲行為)は、被控訴人の原告楽曲に係る著作権(翻案権。著作権法(以下、単に「法」ということがある。)27条)を侵害したものである。
(イ) 控訴人らが本件楽曲をオーケストラ等により演奏させてこれを録音し、もって録音・複製をした行為(本件録音・複製行為)は、被控訴人の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(複製権。法28条、21条)を侵害したものである。
(ウ) 控訴人らが本件楽曲及び本件楽曲を収録したコンパクト・ディスク(本件CD)を音楽配信サイト等において販売し、もって本件楽曲及びその複製物の譲渡・配信をした行為(本件譲渡・配信行為)は、被控訴人の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。)。法28条、26条の2第1項、23条1項)を侵害したものである。
(エ) 控訴人らが本件CDの販売等に当たり、国外で制作された本件CDを輸入した行為(本件輸入行為)は、被控訴人の著作権を侵害したものである(法113条1項1号)。
イ 請求
(ア) 法112条1項に基づき、本件アルバム及び本件楽曲の複製、送信可能化及び公衆送信の差止め並びに本件CDの複製、輸入及び譲渡の差止めを求めるとともに、同条2項に基づき、本件楽曲の音源を収録した媒体及び本件CDの廃棄を求める請求
(イ) 不法行為(民法709条、719条1 項前段)又は会社法597条に基づき、損害賠償合計429万1680円及びうち379万1680円(法114条2項又は3項の損害金)に対する不法行為の後である令和2年4月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5%の割合による、うち50万円(弁護士費用相当損害金)に対する訴状送達の日の翌日である令和3年2月24日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による各遅延損害金の連帯支払を求める請求』
『(2) 原審は、前記(1)ア(ア)〜(エ)の本件編曲行為による翻案権の侵害、本件録音・複製行為による複製権の侵害、本件譲渡・配信行為による譲渡権及び公衆送信権(送信可能化権を含む。)の侵害並びに本件輸入行為による法113条1項1号に基づく著作権の侵害をいずれも認め、同イ(ア)の被控訴人の差止め及び廃棄の各請求をいずれも認容するとともに、同イ(イ)の損害賠償請求について、法114条2項の損害を61万6403円と、同条3項の損害を150万円と認め、より高額である後者の150万円及び弁護士費用相当額15万円の合計165万円並びにうち150万円に対する令和2年4月1日から年5%の割合による、うち15万円に対する令和3年2月24日から年3%の割合による各遅延損害金の連帯支払を控訴人らに請求する限度で認容し、その余の損害賠償請求を棄却した。』
『(3) 原判決を不服として、控訴人らが控訴を提起した。』(2頁以下)
<経緯>
H30.05 VGM社設立
H30.07 1審被告Aが1審原告に音楽レコードにおける楽曲使用料の支払申請
1審被告Aがクラウドファンディング開始
H30.09 1審原告が拒絶回答
H30.11 VGM社業務のイスラエル法人への移譲との通知
H31.01 イスラエル法人(CLASSICAL社)設立
H31.01 本件楽曲のピアノ演奏及びその録音
H31.03 本件楽曲のオーケストラ演奏の録音
R03.02 本訴提起、VGM社を債務者とする仮処分命令申立
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件編曲行為、本件録音・複製行為、本件譲渡・配信行為及び本件輸入行為の主体
原審では、本件編曲行為について、1審被告Aが自ら行ったものであること、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為については、1審被告Aが少なくとも1審被告会社らと共同して行ったものであることがそれぞれ認められるとして、本件輸入行為についても、1審被告Aが少なくとも1審被告会社及びVGM社等と共同して行ったものと認められると判断していました。
控訴審でも、原審の判断が維持されています(8頁以下)。
--------------------
2 本件編曲行為による原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)侵害の成否
原審では、本件楽曲は原告楽曲を翻案したものであり、本件編曲行為は、1審原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
3 本件録音・複製行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権)侵害の成否
原審では、本件録音・複製行為のうち、本件楽曲のピアノ演奏及びその録音が、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権 28条、21条)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
4 本件譲渡・配信行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。))侵害の成否
原審では、本件譲渡・配信行為は、本件楽曲をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供するとともに、公衆送信(送信可能化を含む)したものであり、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む) 28条、26条の2第1項、23条1項)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
5 本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否
原審では、本件CDは、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作権の侵害となるべき行為により作成された物といえるとして、本件CDを輸入した本件輸入行為は、1審原告の著作権を侵害するものとみなされる(113条1項1号)と判断されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
6 1審原告の損害額
原審では、以下の損害額が認定されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
・使用料相当額150万円(114条2項)
・弁護士費用相当額損害10万円
--------------------
■コメント
レコード製作にあたり、ライセンス処理を簡便にしてしまいたいという思考(イスラエル著作権法に則り製作の強制許諾)が被告側にあったような事案になります(原審判決24頁以下参照)。
「幻想水滸伝」楽曲無許諾編曲事件(控訴審)
知財高裁令和5.4.20令和4(ネ)10115著作権侵害損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 勝又来未子
裁判官 中島朋宏
原審:東京地裁令和4.9.8令和3(ワ)3201著作権侵害損害賠償等請求事件
判決文
別紙
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2023.5.8
*キーワード:レコード製作、許諾
--------------------
■事案
ロールプレイングゲーム「幻想水滸伝」の楽曲の無許諾複製、翻案などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審被告):音楽制作会社、代表社員
被控訴人(1審原告):ゲームコンテンツ制作会社
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、28条、26条の2第1項、23条1項
1 本件編曲行為、本件録音・複製行為、本件譲渡・配信行為及び本件輸入行為の主体
2 本件編曲行為による原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)侵害の成否
3 本件録音・複製行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権)侵害の成否
4 本件譲渡・配信行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。))侵害の成否
5 本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否
6 1審原告の損害額
--------------------
■事案の概要
『(1) 本件は、被控訴人が、控訴人らに対し、原判決別紙被告ら物件目録記載2の各楽曲(以下、まとめて「本件楽曲」という。)及び本件楽曲を収録した同目録記載1のアルバム(以下「本件アルバム」ということがある。)に係る控訴人らの次のアの各侵害行為により、被控訴人が著作権を有する原判決別紙著作物目録記載の各楽曲のうち赤字で記載された楽曲(原告楽曲)に係る著作権が侵害されたと主張して、次のイの各請求をする事案である。
ア 侵害行為
(ア) 控訴人らが原告楽曲に依拠してオーケストラ演奏のための本件楽曲の譜面を作成し、もって原告楽曲の編曲をした行為(本件編曲行為)は、被控訴人の原告楽曲に係る著作権(翻案権。著作権法(以下、単に「法」ということがある。)27条)を侵害したものである。
(イ) 控訴人らが本件楽曲をオーケストラ等により演奏させてこれを録音し、もって録音・複製をした行為(本件録音・複製行為)は、被控訴人の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(複製権。法28条、21条)を侵害したものである。
(ウ) 控訴人らが本件楽曲及び本件楽曲を収録したコンパクト・ディスク(本件CD)を音楽配信サイト等において販売し、もって本件楽曲及びその複製物の譲渡・配信をした行為(本件譲渡・配信行為)は、被控訴人の二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。)。法28条、26条の2第1項、23条1項)を侵害したものである。
(エ) 控訴人らが本件CDの販売等に当たり、国外で制作された本件CDを輸入した行為(本件輸入行為)は、被控訴人の著作権を侵害したものである(法113条1項1号)。
イ 請求
(ア) 法112条1項に基づき、本件アルバム及び本件楽曲の複製、送信可能化及び公衆送信の差止め並びに本件CDの複製、輸入及び譲渡の差止めを求めるとともに、同条2項に基づき、本件楽曲の音源を収録した媒体及び本件CDの廃棄を求める請求
(イ) 不法行為(民法709条、719条1 項前段)又は会社法597条に基づき、損害賠償合計429万1680円及びうち379万1680円(法114条2項又は3項の損害金)に対する不法行為の後である令和2年4月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5%の割合による、うち50万円(弁護士費用相当損害金)に対する訴状送達の日の翌日である令和3年2月24日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による各遅延損害金の連帯支払を求める請求』
『(2) 原審は、前記(1)ア(ア)〜(エ)の本件編曲行為による翻案権の侵害、本件録音・複製行為による複製権の侵害、本件譲渡・配信行為による譲渡権及び公衆送信権(送信可能化権を含む。)の侵害並びに本件輸入行為による法113条1項1号に基づく著作権の侵害をいずれも認め、同イ(ア)の被控訴人の差止め及び廃棄の各請求をいずれも認容するとともに、同イ(イ)の損害賠償請求について、法114条2項の損害を61万6403円と、同条3項の損害を150万円と認め、より高額である後者の150万円及び弁護士費用相当額15万円の合計165万円並びにうち150万円に対する令和2年4月1日から年5%の割合による、うち15万円に対する令和3年2月24日から年3%の割合による各遅延損害金の連帯支払を控訴人らに請求する限度で認容し、その余の損害賠償請求を棄却した。』
『(3) 原判決を不服として、控訴人らが控訴を提起した。』(2頁以下)
<経緯>
H30.05 VGM社設立
H30.07 1審被告Aが1審原告に音楽レコードにおける楽曲使用料の支払申請
1審被告Aがクラウドファンディング開始
H30.09 1審原告が拒絶回答
H30.11 VGM社業務のイスラエル法人への移譲との通知
H31.01 イスラエル法人(CLASSICAL社)設立
H31.01 本件楽曲のピアノ演奏及びその録音
H31.03 本件楽曲のオーケストラ演奏の録音
R03.02 本訴提起、VGM社を債務者とする仮処分命令申立
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件編曲行為、本件録音・複製行為、本件譲渡・配信行為及び本件輸入行為の主体
原審では、本件編曲行為について、1審被告Aが自ら行ったものであること、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為については、1審被告Aが少なくとも1審被告会社らと共同して行ったものであることがそれぞれ認められるとして、本件輸入行為についても、1審被告Aが少なくとも1審被告会社及びVGM社等と共同して行ったものと認められると判断していました。
控訴審でも、原審の判断が維持されています(8頁以下)。
--------------------
2 本件編曲行為による原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)侵害の成否
原審では、本件楽曲は原告楽曲を翻案したものであり、本件編曲行為は、1審原告の原告楽曲に係る著作権(翻案権)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
3 本件録音・複製行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権)侵害の成否
原審では、本件録音・複製行為のうち、本件楽曲のピアノ演奏及びその録音が、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権 28条、21条)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
4 本件譲渡・配信行為による原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む。))侵害の成否
原審では、本件譲渡・配信行為は、本件楽曲をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供するとともに、公衆送信(送信可能化を含む)したものであり、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(譲渡権、公衆送信権(送信可能化権を含む) 28条、26条の2第1項、23条1項)を侵害するものと認められていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
5 本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否
原審では、本件CDは、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作権の侵害となるべき行為により作成された物といえるとして、本件CDを輸入した本件輸入行為は、1審原告の著作権を侵害するものとみなされる(113条1項1号)と判断されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
--------------------
6 1審原告の損害額
原審では、以下の損害額が認定されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。
・使用料相当額150万円(114条2項)
・弁護士費用相当額損害10万円
--------------------
■コメント
レコード製作にあたり、ライセンス処理を簡便にしてしまいたいという思考(イスラエル著作権法に則り製作の強制許諾)が被告側にあったような事案になります(原審判決24頁以下参照)。