最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
YouTuber逮捕動画引用事件(控訴審)
知財高裁令和5.3.30令和4(ネ)10118等損害賠償請求・同反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官 中村 恭
裁判官 岡山忠広
*裁判所サイト公表 2023.4.7
*キーワード:動画、モザイク、引用、同一性保持権、氏名表示権
原審 東京地裁令和4.10.28令和3(ワ)28420損害賠償請求事件
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■事案
動画にモザイク処理などを施しての投稿が同一性保持権侵害や引用にあたるかどうかが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(第1審本訴被告・第1審反訴原告):YouTuber
被控訴人兼附帯控訴人(第1審本訴原告・第1審反訴被告):個人
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■結論
本訴一部変更、反訴棄却
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■争点
条文 著作権法32条1項、19条、20条
1 本訴請求(略)
2 反訴請求
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■事案の概要
『一審被告は、平成30年8月3日、インターネット上の動画投稿サイトYouTube において開設した「【A】」の名のチャンネル(被告チャンネル)で、一審原告が警察官に逮捕された状況を撮影した「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題する動画(本件逮捕動画)を投稿した。本件本訴は、一審原告が、一審被告に対し、一審被告が本件逮捕動画を被告チャンネルに投稿したことが一審原告の社会的評価を低下させるものであり、また、一審原告の肖像権及びプライバシー権を侵害するものであって、これにより一審原告は精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、60万円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(令和3年8月17日となる。)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『一審原告は、YouTube において開設した「【A】 SNS被害」という名のチャンネル(原告チャンネル)で、令和2年9月12日に(1)「人気YouTuber【A】氏によるプライバーシーの侵害 職権乱用による不当逮捕の瞬間 白バイ隊員による一般人暴行」と題する動画(原告動画1)を、同月22日に(2)「【B】【A】さん コラボ動画について【B】優しすぎる。パチンコ実況パチンコ攻略」と題する動画(原告動画2)を、同年10月3日に(3)「殴り書きの答弁書 【A】さん裁判の内容初公開 衝撃の言い訳」と題する動画(原告動画3)をそれぞれ投稿した。』
『本件反訴は、一審被告が、一審原告に対し、(1)原告動画1は本件逮捕動画にモザイク処理と音声の加工を施して動画を挿入したものであり、原告動画1を YouTube に投稿する行為は本件逮捕動画に係る一審被告の著作権及び公衆送信権を侵害するものであり、こうしたモザイク処理等の変更は一審被告の同一性保持権侵害に当たり、また、原告動画1の投稿に際して一審被告が本件逮捕動画の著作者であることを明示していないため、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(2)原告動画2は、一審被告が他の者と一緒に撮影した動画(被告動画1)を切り抜いて投稿したものであるところ、被告動画1には原判決別紙本件イラスト目録記載のイラスト(本件イラスト)が掲載されているから、こうした原告動画2をYouTube に投稿する行為は本件イラストに係る一審被告の複製権又は公衆送信権を侵害するものであり、また、原告動画2において一審被告が本件イラストの著作者であることが明示されておらず、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(3)(ア)原告動画3は、一審被告が募金する際の状況等を撮影、編集した動画(被告動画2)を切り抜いて無断で転載したものであり、こうした原告動画3をYouTube に投稿する行為は被告動画2に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであり、また、被告動画2の一部を切り抜いて変更を加える行為は一審被告の同一性保持権を侵害するものであるし、原告動画3の掲載に際して一審被告が被告動画2の著作者であることを明示しておらず、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(イ)原告動画3には一審被告が別訴で提出した答弁書が掲載されているが、郵便番号が公開され、一部は伏字になっているとはいえ一審被告の傷病名を読み取ることができるものであるから、一審被告のプライバシー権を侵害するものであり、こうした一審原告による(1)ないし(3)の動画の投稿行為によって、一審被告にライセンス料相当額の損害及び著作者人格権侵害による慰謝料相当額等の損害が生じたと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、合計438万7900円及びこれに対する最後の不法行為の日である令和2年10月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『原判決は、本訴請求については、(1)本件逮捕動画は一審原告の社会的評価を低下させるものであり、専ら公益を図る目的に出たものとはいえないから違法性は阻却されるものではなく、また、本件逮捕動画は一審原告の肖像権を侵害するものであり、一審被告による名誉棄損及び肖像権が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料としては30万円をもって相当であるから、一審原告の請求は、30万円及びこれに対する令和3年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断した。』
『他方、反訴請求については、(1)原告動画1の投稿は、本件逮捕動画に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画1において本件逮捕動画を引用することは公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、同一性保持権侵害又は氏名表示権を侵害するものではない、(2)原告動画2の投稿は、本件イラストに係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画2において本件イラストを引用することは公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものではない、(3)(ア)原告動画3の投稿は、被告動画2に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画3において被告動画2の各場面の画像を引用することは、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、被告動画2の同一性保持権侵害及び氏名表示権を侵害するものではない、(イ)原告動画3において別訴の答弁書を掲載し投稿した目的は、別訴における一審被告の言い分を明らかにする目的であり、郵便番号という情報が公開されているとしても、社会通念上許容される限度を逸脱した違法な行為であるとまではいえず、また、掲載されている答弁書の一部伏字部分から一審被告の傷病名は明らかにされたとはいえないから、原告動画3は一審被告のプライバシー権を侵害するものではない旨判断して、一審被告の反訴請求をいずれも棄却した。』
『これに対し、一審被告は、一審被告の敗訴部分を不服として控訴し、一審原告は、一審原告敗訴部分を不服として附帯控訴をした。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本訴請求(略)
2 反訴請求
(1)原告動画1
(ア)著作権侵害性
結論として、引用の成立が認められています(17頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
原告動画1における顔のモザイク処理や音声の加工は、1審原告の名誉権、肖像権及びプライバシーが侵害されることを回避するために必要な措置であったなどとして、同一性保持権、氏名表示権侵害性を認めていません。
(2)原告動画2
(ア)著作権侵害性
原告動画2における本件イラストについて、引用の成立が認められています(19頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
結論として、著作者名の表示を省略することができるとして、氏名表示権侵害性を否定しています。
(3)原告動画3
(ア)著作権侵害性
結論として、引用の成立が認められています(20頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
テロップを付すことはやむを得ない改変であるなどとして、結論として同一性保持権、氏名表示権侵害性を否定しています。
原審同様、反訴請求は控訴審でも棄却となっています。
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■コメント
動画の引用のされ方について争点となった事案となります。
YouTuber逮捕動画引用事件(控訴審)
知財高裁令和5.3.30令和4(ネ)10118等損害賠償請求・同反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官 中村 恭
裁判官 岡山忠広
*裁判所サイト公表 2023.4.7
*キーワード:動画、モザイク、引用、同一性保持権、氏名表示権
原審 東京地裁令和4.10.28令和3(ワ)28420損害賠償請求事件
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■事案
動画にモザイク処理などを施しての投稿が同一性保持権侵害や引用にあたるかどうかが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(第1審本訴被告・第1審反訴原告):YouTuber
被控訴人兼附帯控訴人(第1審本訴原告・第1審反訴被告):個人
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■結論
本訴一部変更、反訴棄却
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■争点
条文 著作権法32条1項、19条、20条
1 本訴請求(略)
2 反訴請求
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■事案の概要
『一審被告は、平成30年8月3日、インターネット上の動画投稿サイトYouTube において開設した「【A】」の名のチャンネル(被告チャンネル)で、一審原告が警察官に逮捕された状況を撮影した「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題する動画(本件逮捕動画)を投稿した。本件本訴は、一審原告が、一審被告に対し、一審被告が本件逮捕動画を被告チャンネルに投稿したことが一審原告の社会的評価を低下させるものであり、また、一審原告の肖像権及びプライバシー権を侵害するものであって、これにより一審原告は精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、60万円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(令和3年8月17日となる。)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『一審原告は、YouTube において開設した「【A】 SNS被害」という名のチャンネル(原告チャンネル)で、令和2年9月12日に(1)「人気YouTuber【A】氏によるプライバーシーの侵害 職権乱用による不当逮捕の瞬間 白バイ隊員による一般人暴行」と題する動画(原告動画1)を、同月22日に(2)「【B】【A】さん コラボ動画について【B】優しすぎる。パチンコ実況パチンコ攻略」と題する動画(原告動画2)を、同年10月3日に(3)「殴り書きの答弁書 【A】さん裁判の内容初公開 衝撃の言い訳」と題する動画(原告動画3)をそれぞれ投稿した。』
『本件反訴は、一審被告が、一審原告に対し、(1)原告動画1は本件逮捕動画にモザイク処理と音声の加工を施して動画を挿入したものであり、原告動画1を YouTube に投稿する行為は本件逮捕動画に係る一審被告の著作権及び公衆送信権を侵害するものであり、こうしたモザイク処理等の変更は一審被告の同一性保持権侵害に当たり、また、原告動画1の投稿に際して一審被告が本件逮捕動画の著作者であることを明示していないため、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(2)原告動画2は、一審被告が他の者と一緒に撮影した動画(被告動画1)を切り抜いて投稿したものであるところ、被告動画1には原判決別紙本件イラスト目録記載のイラスト(本件イラスト)が掲載されているから、こうした原告動画2をYouTube に投稿する行為は本件イラストに係る一審被告の複製権又は公衆送信権を侵害するものであり、また、原告動画2において一審被告が本件イラストの著作者であることが明示されておらず、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(3)(ア)原告動画3は、一審被告が募金する際の状況等を撮影、編集した動画(被告動画2)を切り抜いて無断で転載したものであり、こうした原告動画3をYouTube に投稿する行為は被告動画2に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであり、また、被告動画2の一部を切り抜いて変更を加える行為は一審被告の同一性保持権を侵害するものであるし、原告動画3の掲載に際して一審被告が被告動画2の著作者であることを明示しておらず、一審被告の氏名表示権を侵害するものである、(イ)原告動画3には一審被告が別訴で提出した答弁書が掲載されているが、郵便番号が公開され、一部は伏字になっているとはいえ一審被告の傷病名を読み取ることができるものであるから、一審被告のプライバシー権を侵害するものであり、こうした一審原告による(1)ないし(3)の動画の投稿行為によって、一審被告にライセンス料相当額の損害及び著作者人格権侵害による慰謝料相当額等の損害が生じたと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、合計438万7900円及びこれに対する最後の不法行為の日である令和2年10月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『原判決は、本訴請求については、(1)本件逮捕動画は一審原告の社会的評価を低下させるものであり、専ら公益を図る目的に出たものとはいえないから違法性は阻却されるものではなく、また、本件逮捕動画は一審原告の肖像権を侵害するものであり、一審被告による名誉棄損及び肖像権が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料としては30万円をもって相当であるから、一審原告の請求は、30万円及びこれに対する令和3年3月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断した。』
『他方、反訴請求については、(1)原告動画1の投稿は、本件逮捕動画に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画1において本件逮捕動画を引用することは公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、同一性保持権侵害又は氏名表示権を侵害するものではない、(2)原告動画2の投稿は、本件イラストに係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画2において本件イラストを引用することは公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものではない、(3)(ア)原告動画3の投稿は、被告動画2に係る一審被告の複製権及び公衆送信権を侵害するものであるが、原告動画3において被告動画2の各場面の画像を引用することは、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであって、引用の抗弁が成立するものであり、また、被告動画2の同一性保持権侵害及び氏名表示権を侵害するものではない、(イ)原告動画3において別訴の答弁書を掲載し投稿した目的は、別訴における一審被告の言い分を明らかにする目的であり、郵便番号という情報が公開されているとしても、社会通念上許容される限度を逸脱した違法な行為であるとまではいえず、また、掲載されている答弁書の一部伏字部分から一審被告の傷病名は明らかにされたとはいえないから、原告動画3は一審被告のプライバシー権を侵害するものではない旨判断して、一審被告の反訴請求をいずれも棄却した。』
『これに対し、一審被告は、一審被告の敗訴部分を不服として控訴し、一審原告は、一審原告敗訴部分を不服として附帯控訴をした。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本訴請求(略)
2 反訴請求
(1)原告動画1
(ア)著作権侵害性
結論として、引用の成立が認められています(17頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
原告動画1における顔のモザイク処理や音声の加工は、1審原告の名誉権、肖像権及びプライバシーが侵害されることを回避するために必要な措置であったなどとして、同一性保持権、氏名表示権侵害性を認めていません。
(2)原告動画2
(ア)著作権侵害性
原告動画2における本件イラストについて、引用の成立が認められています(19頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
結論として、著作者名の表示を省略することができるとして、氏名表示権侵害性を否定しています。
(3)原告動画3
(ア)著作権侵害性
結論として、引用の成立が認められています(20頁以下)。
(イ)著作者人格権侵害性
テロップを付すことはやむを得ない改変であるなどとして、結論として同一性保持権、氏名表示権侵害性を否定しています。
原審同様、反訴請求は控訴審でも棄却となっています。
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■コメント
動画の引用のされ方について争点となった事案となります。