最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
親子カフェ内装設計図事件
知財高裁令和5.1.31令和4(ネ)10079著作権侵害による損害賠償、損害賠償反訴請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官 本吉弘行
裁判官 岡山忠広
原審 横浜地裁令和3(ワ)1498等
*裁判所サイト公表 2023.2.14
*キーワード:設計図、店舗内装、著作物性
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■事案
商業施設の店舗内装の設計図や内装の著作物性が争点となった事案
控訴人:設計士
被控訴人:親子カフェ運営事業会社
--------------------
■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項6号
1 原告設計図ないし原告内装の著作物性
2 著作権の譲渡ないし利用許諾の有無等
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■事案の概要
『本件は、控訴人において、被控訴人が一審被告キャピタランドの管理運営する本件商業施設に本件店舗を出店するに際し、控訴人が本件店舗の内装工事に係る原判決別紙図面目録記載の図面(原告設計図)を作成したところ、被控訴人が控訴人に無断で一審被告キャピタランドに対し原告設計図の利用を許諾し、一審被告キャピタランドが原告設計図に基づく内装工事を発注して本件店舗を完成させて、原告設計図に表現されている内装(原告内装)を複製し、本件店舗が開店した後は、本件店舗を経営する被控訴人らが、原告内装の複製物である本件店舗を公衆に提示すると共に、ウェブサイトに画像等を掲載して公衆送信して、控訴人の原告設計図ないし原告内装に係る著作権及び著作者人格権を侵害したなどと主張して、不法行為による損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権に基づき、被控訴人に対し、450万円((1)原告設計図の無断利用等による損害150万円、(2)原告内装の無断複製等による損害150万円、(3)本件店舗の使用等により同被告らが得た利益150万円)及びこれに対する本件店舗の開業日である平成26年4月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお、一審段階では、他の一審被告らに対する各種請求や、被控訴人及び一審被告ママスクエアによる反訴請求が存在した。)。』
『原判決が控訴人の本訴請求と、被控訴人及び一審被告ママスクエアの反訴請求をいずれも棄却したところ、控訴人が、被控訴人に対する本訴請求を棄却した部分について、控訴を提起した。控訴人は、原審においては、前記(1)及び(2)の損害賠償請求並びに前記(3)の不当利得返還請求を単純併合としていたが、当審においては、(1)及び(2)を選択的請求とし、(3)を予備的請求とする旨、併合の態様を変更し、また、遅延損害金の起算点を令和3年4月20日(訴状の作成日付)とする旨、不服の範囲を限定した。』
(1頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 原告設計図ないし原告内装の著作物性
控訴人は、原判決は、原告設計図の作成において、表現手法がCADやCGを用いた機械的なものであることから創作性を否定したが、設計図は施主、施工者、メーカー及び作業職人に向ける共通言語であり、特に、設計者と施工者が異なる場合は、設計図面以外での詳細な情報伝達手段はないから、原告設計図全体では創作性があると認められるべきである旨、控訴審で補充主張しました。
この点について、控訴審は、
『設計図が工事に携わる者に共通して利用されるものであることは、むしろ、多くの場合、様々な関係者が施工内容を理解することができるよう、作図上の表現方法や内装の具体的な表現は実用的、機能的でありふれたものにならざるを得ないことを示すものというべきであり、現に、原告設計図や原告設計図の具体的な表現内容が実用的、機能的でありふれたものである』
などとして、結論としては、原審同様、原告設計図や原告内装について著作物性を否定しています(3頁以下)。
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2 著作権の譲渡ないし利用許諾の有無等
なお、「念のため」として、控訴人が被控訴人において原告設計図を自由に利用することを承諾したかどうかについて、控訴審は言及しています(5頁)。
『建物やその内装の完成のための手段であり、通常それ自体が鑑賞の対象となるものではない設計図の性質からして、設計に係る契約においては、特段の合意がない限り、設計報酬とは別に設計図ないし内装の著作権についての使用料請求権が設計者に留保されるとは認め難く、本件で特段の合意がされたと認めるべき証拠もない。これを裏返して言えば、控訴人は、本件設計等契約において、被控訴人に対し、原告設計図に基づき、自ら又は第三者をして本件店舗の内装工事を施工し、工事完了後は本件店舗で親子カフェの営業を行うこと等を当然に了承していたもので、著作権ないし著作者人格権を行使しないことが契約締結の前提となっていたものというべきである。』
結論として、原審同様、控訴人の主張は認められていません。
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■コメント
原審を確認していないので事案の詳細が不明ですが、「控訴人が誰からも設計図に係る報酬を得られないことについては同情すべき面もあるが、報酬請求権が時効消滅した以上、やむを得ないというほかない。」(5頁参照)ということで契約関係上の齟齬があった事案かと思われます。
親子カフェ内装設計図事件
知財高裁令和5.1.31令和4(ネ)10079著作権侵害による損害賠償、損害賠償反訴請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官 本吉弘行
裁判官 岡山忠広
原審 横浜地裁令和3(ワ)1498等
*裁判所サイト公表 2023.2.14
*キーワード:設計図、店舗内装、著作物性
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■事案
商業施設の店舗内装の設計図や内装の著作物性が争点となった事案
控訴人:設計士
被控訴人:親子カフェ運営事業会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項6号
1 原告設計図ないし原告内装の著作物性
2 著作権の譲渡ないし利用許諾の有無等
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■事案の概要
『本件は、控訴人において、被控訴人が一審被告キャピタランドの管理運営する本件商業施設に本件店舗を出店するに際し、控訴人が本件店舗の内装工事に係る原判決別紙図面目録記載の図面(原告設計図)を作成したところ、被控訴人が控訴人に無断で一審被告キャピタランドに対し原告設計図の利用を許諾し、一審被告キャピタランドが原告設計図に基づく内装工事を発注して本件店舗を完成させて、原告設計図に表現されている内装(原告内装)を複製し、本件店舗が開店した後は、本件店舗を経営する被控訴人らが、原告内装の複製物である本件店舗を公衆に提示すると共に、ウェブサイトに画像等を掲載して公衆送信して、控訴人の原告設計図ないし原告内装に係る著作権及び著作者人格権を侵害したなどと主張して、不法行為による損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権に基づき、被控訴人に対し、450万円((1)原告設計図の無断利用等による損害150万円、(2)原告内装の無断複製等による損害150万円、(3)本件店舗の使用等により同被告らが得た利益150万円)及びこれに対する本件店舗の開業日である平成26年4月25日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお、一審段階では、他の一審被告らに対する各種請求や、被控訴人及び一審被告ママスクエアによる反訴請求が存在した。)。』
『原判決が控訴人の本訴請求と、被控訴人及び一審被告ママスクエアの反訴請求をいずれも棄却したところ、控訴人が、被控訴人に対する本訴請求を棄却した部分について、控訴を提起した。控訴人は、原審においては、前記(1)及び(2)の損害賠償請求並びに前記(3)の不当利得返還請求を単純併合としていたが、当審においては、(1)及び(2)を選択的請求とし、(3)を予備的請求とする旨、併合の態様を変更し、また、遅延損害金の起算点を令和3年4月20日(訴状の作成日付)とする旨、不服の範囲を限定した。』
(1頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 原告設計図ないし原告内装の著作物性
控訴人は、原判決は、原告設計図の作成において、表現手法がCADやCGを用いた機械的なものであることから創作性を否定したが、設計図は施主、施工者、メーカー及び作業職人に向ける共通言語であり、特に、設計者と施工者が異なる場合は、設計図面以外での詳細な情報伝達手段はないから、原告設計図全体では創作性があると認められるべきである旨、控訴審で補充主張しました。
この点について、控訴審は、
『設計図が工事に携わる者に共通して利用されるものであることは、むしろ、多くの場合、様々な関係者が施工内容を理解することができるよう、作図上の表現方法や内装の具体的な表現は実用的、機能的でありふれたものにならざるを得ないことを示すものというべきであり、現に、原告設計図や原告設計図の具体的な表現内容が実用的、機能的でありふれたものである』
などとして、結論としては、原審同様、原告設計図や原告内装について著作物性を否定しています(3頁以下)。
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2 著作権の譲渡ないし利用許諾の有無等
なお、「念のため」として、控訴人が被控訴人において原告設計図を自由に利用することを承諾したかどうかについて、控訴審は言及しています(5頁)。
『建物やその内装の完成のための手段であり、通常それ自体が鑑賞の対象となるものではない設計図の性質からして、設計に係る契約においては、特段の合意がない限り、設計報酬とは別に設計図ないし内装の著作権についての使用料請求権が設計者に留保されるとは認め難く、本件で特段の合意がされたと認めるべき証拠もない。これを裏返して言えば、控訴人は、本件設計等契約において、被控訴人に対し、原告設計図に基づき、自ら又は第三者をして本件店舗の内装工事を施工し、工事完了後は本件店舗で親子カフェの営業を行うこと等を当然に了承していたもので、著作権ないし著作者人格権を行使しないことが契約締結の前提となっていたものというべきである。』
結論として、原審同様、控訴人の主張は認められていません。
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■コメント
原審を確認していないので事案の詳細が不明ですが、「控訴人が誰からも設計図に係る報酬を得られないことについては同情すべき面もあるが、報酬請求権が時効消滅した以上、やむを得ないというほかない。」(5頁参照)ということで契約関係上の齟齬があった事案かと思われます。