最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

映画「ハレンチ君主いんびな休日」事件(控訴審)

知財高裁令和5.2.7令和4(ネ)10090等損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官    浅井 憲
裁判官    中島朋宏

*裁判所サイト公表 2023.2.9
*キーワード:映画、脚本、公表権、時事の事件の報道、名誉毀損

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■事案

試写会での映画の上映と脚本の公表の関係について争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(1審原告):映画監督、脚本家
被控訴人兼附帯控訴人、被控訴人(1審被告):出版社、映画会社ら

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■結論

控訴棄却、附帯控訴棄却

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■争点

条文 著作権法18条、41条

1 本件記載1乃至4の名誉毀損の成否(略)
2 本件記事による本件脚本に係る控訴人らの公表権侵害の成否
3 本件映画の公開中止による控訴人X1の期待権侵害の成否(略)
4 本件データ等の廃棄による控訴人X1の人格権侵害の成否(略)
5 本件映画の著作権の帰属(略)
6 損害額(略)

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■事案の概要

『控訴人X1は、原判決別紙1記載の映画(以下「本件映画」という。)の脚本(以下「本件脚本」という。)を制作し、本件映画の監督を務めるなどした者、控訴人X2は、控訴人X1とともに本件脚本を制作した者、被控訴人新潮社は、平成30年3月1日に発売された週刊新潮2018年3月8日号(以下「本件週刊誌」という。)において、本件脚本の一部(原判決別紙5)を引用した上、原判決別紙4の記事(以下「本件記事」という。)を掲載した者、被控訴人オーピー映画は、控訴人X1から、本件映画の著作権の譲渡を受けた者、被控訴人大蔵映画は、被控訴人オーピー映画から、本件映画の著作権の譲渡を受けた者である。
 本件は、(1)控訴人らが、本件記事の記載内容は控訴人らの名誉を毀損すると主張し、不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人新潮社に対し、それぞれ220万円及びこれに対する不法行為の日(本件週刊誌の発売の日)である平成30年3月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、(2)控訴人らが、本件脚本を無断で引用することは控訴人らの著作者人格権(公表権)を侵害すると主張し、不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人新潮社に対し、それぞれ110万円及びこれに対する不法行為の日(本件週刊誌の発売の日)である平成30年3月1日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、(3)控訴人らが、本件記事の記載内容は控訴人らの名誉を毀損すると主張し、民法723条に基づいて、被控訴人新潮社に対し、前記第1の1(4)のとおりの謝罪広告の掲載を求め、(4)控訴人X1が、被控訴人大蔵映画に対する取材に基づいて被控訴人新潮社が掲載した本件記事(控訴人X1の謝罪等に関する部分)は控訴人X1の名誉を毀損すると主張し、共同不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人新潮社及び被控訴人大蔵映画に対し、220万円及びこれに対する不法行為の日(本件週刊誌の発売の日)である平成30年3月1日から支払済みまで上記改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、(5)控訴人X1が、被控訴人大蔵映画及び被控訴人オーピー映画(以下、両被控訴人を併せて「被控訴人大蔵映画ら」という。)は本件映画の公開を中止し、これにより、本件映画が公開され、観客により視聴されることに対する控訴人X1の期待権を侵害したと主張し、共同不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人大蔵映画らに対し、110万円及びこれに対する不法行為の日の後(本件映画の公開延期決定の日の翌日)である平成30年2月17日から支払済みまで上記改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、(6)控訴人X1が、被控訴人大蔵映画らは本件映画に係る完成作品及びその他一切の映像素材のデータ(以下「本件データ等」という。)を廃棄し、これにより、控訴人X1の人格権を侵害したと主張し、共同不法行為に基づく損害賠償として、被控訴人大蔵映画らに対し、110万円及びこれに対する不法行為の日の後である令和4年3月4日(請求の拡張申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、(7)控訴人X1が、本件映画の著作権の譲渡契約は被控訴人オーピー映画の債務不履行により解除されたと主張し、被控訴人オーピー映画との間で、控訴人X1が本件映画の著作権を有することの確認を求める事案である。』

『原審は、控訴人らの上記(2)の請求をそれぞれ33万円及びこれに対する上記の遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余をいずれも棄却し、控訴人ら又は控訴人X1の上記(1)及び(3)ないし(7)の請求をいずれも棄却したところ、控訴人ら及び被控訴人新潮社は、いずれも自己の敗訴部分を不服として、それぞれ本件各控訴及び本件各附帯控訴をした。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

2 本件記事による本件脚本に係る控訴人らの公表権侵害の成否

控訴審での補充主張として被控訴人新潮社は、本件記事の掲載は時事の事件(本件映画の公開中止)の報道に該当するものであり、本件脚本は当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られる著作物であり、被控訴人新潮社は報道の目的上正当な範囲内において本件脚本を引用しているのであるから、本件記事の掲載による本件脚本の引用(公表)は著作権法41条に基づいて許されると主張しました。

この点について、控訴審は、
「著作権法41条は、著作権の制限に関する規定(同法第2章第3節第5款)であり、現に、同法50条は、「この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」と定めるところであるから、本件脚本が報道の目的で利用される場合であっても、本件脚本に係る控訴人らの公表権が制限されると解することはできない。したがって、仮に、本件記事の掲載が時事の事件の報道に該当し、本件脚本が当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られる著作物であり、かつ、本件週刊誌において、本件脚本が報道の目的上正当な範囲内で利用されたものであったとしても、本件脚本を控訴人らに無断で本件週刊誌に掲載する行為は、本件脚本に係る控訴人らの公表権を侵害するものである。」として、被控訴人新潮社の主張を認めていません(26頁)。

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■コメント

原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

東京地裁令和4.7.29令和2(ワ)22324損害賠償等請求事件
原審記事