最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
桜のイラスト複製事件
大阪地裁令和4.12.12令和3(ワ)5086損害賠償請求事件PDF
別紙
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 杉浦一輝
裁判官 布目真利子
*裁判所サイト公表 2022.-.-
*キーワード:イラスト、デザイン、グッズ、複製、翻案
--------------------
■事案
桜のイラストの100均グッズへの複製、翻案が争点となった事案
原告:イラストレーター
被告:紙製品製造販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項15号、21条、27条
1 侵害論
--------------------
■事案の概要
『本件は、桜を題材とする後記原告各イラストを作成した原告が、被告による桜を題材とするイラストが描かれた後記被告各製品の販売行為が、原告各イラストに係る原告の著作権(複製権及び翻案権)並びに同一性保持権を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)による損害賠償請求権に基づき、合計5544万円(著作権侵害による著作権法114条3項に基づく損害額4940万円、同一性保持権侵害による無形損害100万円、弁護士費用相当額504万円)の一部である2000万円及びこれに対する不法行為の後日である令和3年6月10日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H23.12 原告イラスト1作成、ポストカード販売
H25.12 原告イラスト2作成
H30.09 原告が見本市に出展
R02.02 被告製品販売
--------------------
■判決内容
<争点>
1 侵害論
裁判所は、複製、翻案の意義に言及した上で、原被告イラストの桜の花の構成要素などを分析。そして、被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうかを検討しています(26頁以下)。
【構成要素】
正面視花要素(めしべの花柱から柱頭方向の延長上から観察する態様)
側面視花要素(側方ないしやや斜め下方から上方視したもの)
つぼみ要素(つぼみを描いたもの)
かすれ要素(白地にピンクないし淡いピンク色のかすれが配された不整形の略円状のまとまり)
スタンピング要素(花の白いスタンピング)
(1)被告イラスト2に関する判断
裁判所は、原告イラスト1(官製はがき大の大きさのもの)を全体としてみて著作物性を肯定した上で、類否判断について原告イラストの表現上の本質的な特徴部分かどうかを被告イラスト2(紙袋の側面に配置されたもの)との対比の中で検討しています。
原告が主張した9つの特徴点のうちの8つの類否について、裁判所は、結論として被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上創作性がない部分において、原告イラスト1と同一性を有するにとどまるものであり、これに接する者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得することはできないと判断。
被告イラスト2は、原告イラスト1の複製及び翻案に当たらず、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するものとはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもないと判断しています。
(2)被告イラスト2以外の被告イラストに関する判断
また、被告イラスト2以外の被告イラストに関して、被告各製品(包装紙や便箋など)に用いられる被告各イラストが原告イラスト1の複製ないし翻案に当たり、かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうかが検討されています(30頁以下)。
結論としては、被告製品1及び3乃至19に描かれた桜を題材とした被告イラスト2以外のイラストは、原告イラスト1の複製及び翻案に当たらないと裁判所は判断。
被告が被告製品1及び3乃至19を販売した行為が、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するものとはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもないと判断しています。
--------------------
■コメント
被告製品は100円均一ショップ向けの紙袋やメモパッド、のし袋などでした。原告と被告は見本市で名刺交換をしていたという事実はあったようです。
別紙が添付されていますが、花弁の描かれ方(28頁以下)の違いやスタンピング、スパッタリングの有無などは看て取れるところです。
ちなみに、原告デザインをGoogleで画像検索すると、被告製品「SAKURA GOCOCHI」シリーズがキャンドゥで販売されていたことや、原告のものと思われる2022年3月1日のツイートのなかで、原告製品と被告製品の対比もみることができます。
また、原告の(ものと思われる)インスタを拝見すると、桜シリーズとして綺麗なデザインのカードなどが分かります。
桜を題材にデザインしたイラストや美術の著作物はそれこそ無数にあるので(乙号証 23頁以下参照)、トレースしたような事実が立証できないと(安易に侵害性を認めると桜のデザインの新規の創作活動を狭めてしまうので)複製権侵害性の判断はハードルが高い分野のデザインかもしれません。
とはいえ、Google画像検索すると、似ているようで、似ていない桜のデザインがたくさん出てくるので、これだけテイストが似てしまうと、類否の判断は微妙なところではあります。
桜のイラスト複製事件
大阪地裁令和4.12.12令和3(ワ)5086損害賠償請求事件PDF
別紙
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 松阿彌隆
裁判官 杉浦一輝
裁判官 布目真利子
*裁判所サイト公表 2022.-.-
*キーワード:イラスト、デザイン、グッズ、複製、翻案
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■事案
桜のイラストの100均グッズへの複製、翻案が争点となった事案
原告:イラストレーター
被告:紙製品製造販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項15号、21条、27条
1 侵害論
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■事案の概要
『本件は、桜を題材とする後記原告各イラストを作成した原告が、被告による桜を題材とするイラストが描かれた後記被告各製品の販売行為が、原告各イラストに係る原告の著作権(複製権及び翻案権)並びに同一性保持権を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)による損害賠償請求権に基づき、合計5544万円(著作権侵害による著作権法114条3項に基づく損害額4940万円、同一性保持権侵害による無形損害100万円、弁護士費用相当額504万円)の一部である2000万円及びこれに対する不法行為の後日である令和3年6月10日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H23.12 原告イラスト1作成、ポストカード販売
H25.12 原告イラスト2作成
H30.09 原告が見本市に出展
R02.02 被告製品販売
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■判決内容
<争点>
1 侵害論
裁判所は、複製、翻案の意義に言及した上で、原被告イラストの桜の花の構成要素などを分析。そして、被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうかを検討しています(26頁以下)。
【構成要素】
正面視花要素(めしべの花柱から柱頭方向の延長上から観察する態様)
側面視花要素(側方ないしやや斜め下方から上方視したもの)
つぼみ要素(つぼみを描いたもの)
かすれ要素(白地にピンクないし淡いピンク色のかすれが配された不整形の略円状のまとまり)
スタンピング要素(花の白いスタンピング)
(1)被告イラスト2に関する判断
裁判所は、原告イラスト1(官製はがき大の大きさのもの)を全体としてみて著作物性を肯定した上で、類否判断について原告イラストの表現上の本質的な特徴部分かどうかを被告イラスト2(紙袋の側面に配置されたもの)との対比の中で検討しています。
原告が主張した9つの特徴点のうちの8つの類否について、裁判所は、結論として被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上創作性がない部分において、原告イラスト1と同一性を有するにとどまるものであり、これに接する者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得することはできないと判断。
被告イラスト2は、原告イラスト1の複製及び翻案に当たらず、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するものとはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもないと判断しています。
(2)被告イラスト2以外の被告イラストに関する判断
また、被告イラスト2以外の被告イラストに関して、被告各製品(包装紙や便箋など)に用いられる被告各イラストが原告イラスト1の複製ないし翻案に当たり、かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうかが検討されています(30頁以下)。
結論としては、被告製品1及び3乃至19に描かれた桜を題材とした被告イラスト2以外のイラストは、原告イラスト1の複製及び翻案に当たらないと裁判所は判断。
被告が被告製品1及び3乃至19を販売した行為が、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するものとはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもないと判断しています。
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■コメント
被告製品は100円均一ショップ向けの紙袋やメモパッド、のし袋などでした。原告と被告は見本市で名刺交換をしていたという事実はあったようです。
別紙が添付されていますが、花弁の描かれ方(28頁以下)の違いやスタンピング、スパッタリングの有無などは看て取れるところです。
ちなみに、原告デザインをGoogleで画像検索すると、被告製品「SAKURA GOCOCHI」シリーズがキャンドゥで販売されていたことや、原告のものと思われる2022年3月1日のツイートのなかで、原告製品と被告製品の対比もみることができます。
また、原告の(ものと思われる)インスタを拝見すると、桜シリーズとして綺麗なデザインのカードなどが分かります。
桜を題材にデザインしたイラストや美術の著作物はそれこそ無数にあるので(乙号証 23頁以下参照)、トレースしたような事実が立証できないと(安易に侵害性を認めると桜のデザインの新規の創作活動を狭めてしまうので)複製権侵害性の判断はハードルが高い分野のデザインかもしれません。
とはいえ、Google画像検索すると、似ているようで、似ていない桜のデザインがたくさん出てくるので、これだけテイストが似てしまうと、類否の判断は微妙なところではあります。