最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ヴィジュアル系バンド専属契約事件
東京地裁令和4.4.28令和1(ワ)35186損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 仲田憲史
裁判官 棚井 啓
*裁判所サイト公表 2022.12.27
*キーワード:バンド名称、専属契約、契約終了、パブリシティ権、信用毀損
--------------------
■事案
バンドの専属契約終了後の事務所側の通知内容の不法行為性が争点となった事案
原告:バンドメンバー4名
被告:音楽マネジメント事務所、代表者
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 不正競争防止法2条1項21号
1 営業の自由、職業選択の自由侵害
2 名誉権侵害、営業上の信用棄損
3 パブリシティ権侵害
--------------------
■事案の概要
『本件は、被告有限会社Sirene(以下「被告会社」)と専属的マネージメント契約を締結してバンド活動に従事していた原告らが、同契約終了後、同じバンド名で活動を継続しようとしたところ、被告会社が、同バンドについては同契約に基づき契約終了後6か月間、実演を目的とする契約を締結することが禁止されているが被告会社はその活動を許諾していない、商標権は被告会社に帰属しており原告らが同バンド名を使用することを許諾していないなどと記載された文書を関係者に配るなどしたことについて、原告らが、原告らの営業権、職業選択の自由、名誉権、営業上の信用(不正競争防止法2条1項21号)、パブリシティ権を侵害する不法行為に当たるとして、被告会社の代表者である被告E(以下「被告E」という。)に対しては民法709条に基づき、被告会社に対しては民法709条又は会社法350条に基づき、各原告につき99万円の損害賠償及び不法行為の日の後の日である、訴状送達の日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。』
(3頁)
<経緯>
H22.08 原被告間で専属契約締結
H30.01 契約更新
H30.10 グループ活動休止
H31.04 被告会社に解除通知書送付
R01.07 合意により終了
R01.08 被告会社がライブハウスに通知書送付
R01.10 グループ名称使用妨害差止仮処分却下(東京地裁)
R02.07 東京高裁却下決定取消、グループ名称使用妨害禁止命令決定(抗告事件)
■専属契約書
第9条 契約期間及び解約期間終了後の措置は以下のとおりとする。
(1)本契約の有効期間は、平成30年1月1日より2年間とする。
・・・
(5)実演家は、契約期間終了後6ヶ月間、甲への事前の承諾なく、
甲以外の第三者との間で、マネージメント契約等実演を目的とする
いかなる契約も締結することはできない。
--------------------
■判決内容
<争点>
1 営業の自由、職業選択の自由侵害
(1)本件各通知による本件グループ名を用いた活動の妨害
被告会社は、契約終了後の6カ月間の実演制限とグループ名称の商標権制限を通知していました(18頁以下)。
裁判所は、まず、契約書9条(5)の条項について無効とはいえず、仮に無効だとしても本件各通知の不法行為の成立を否定しています。
次に、本件各通知をした時点で、被告会社が本件グループ名について商標権を有していたとは認められず、本件グループ名を標章とする商標権が被告会社に帰属している旨の通知の記載は虚偽であると裁判所は判断。結論として、原告らの営業活動に制約を加え、損失をもたらすものであると判断しています。
そのほか、原告らは、被告会社らが原告らの肖像の使用の停止を求めたことが、営業の自由、職業選択の自由を侵害すると主張しましたが、裁判所は認めていません(25頁以下)。
(2)損害論
各原告について、
損害20万円
弁護士費用相当額損害2万円
合計22万円
(26頁以下)
--------------------
2 名誉権侵害、営業上の信用棄損
結論として、原告らの主張する被告会社らによる名誉権侵害、営業上の信用棄損の成立は認められていません(28頁以下)。
--------------------
3 パブリシティ権侵害
原告らは、本件各通知により商標権は被告会社が保持しており、本件グループ名を用いることは許諾しないなどと通知して原告らが本件グループ名を使用して活動することを妨害しているとして、原告らのパブリシティ権が侵害されたと主張しました(29頁以下)。
結論として、裁判所は、原告らの主張を認めていません。
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■コメント
新聞記事によると、知財高裁で東京地裁の判断が変更されたようです。
なお、バンド名称にパブリシティ権が認められるかどうかについて、下記の判例評釈参照。
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■参考サイト
「V系バンドが全面勝訴 活動妨害で元事務所に知財高裁が賠償命令」
朝日新聞デジタル 有料記事 村上友里 2022年12月26日 19時58分
記事
「FEST VAINQUEURに関するご報告」
レイ法律事務所
2019年12月9日
プレスリリース
2020年7月14日
プレスリリース
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■参考文献
東京高決令和2年7月10日令和元年(ラ)2075号について
諏訪野大「ヴィジュアル系ロックバンドの名称にパブリシティ権を認めた事例―FEST VAINQUEUR事件―」『THE INVENTION 発明』2021年5号44頁以下
判例評釈PDF
ヴィジュアル系バンド専属契約事件
東京地裁令和4.4.28令和1(ワ)35186損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 仲田憲史
裁判官 棚井 啓
*裁判所サイト公表 2022.12.27
*キーワード:バンド名称、専属契約、契約終了、パブリシティ権、信用毀損
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■事案
バンドの専属契約終了後の事務所側の通知内容の不法行為性が争点となった事案
原告:バンドメンバー4名
被告:音楽マネジメント事務所、代表者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項21号
1 営業の自由、職業選択の自由侵害
2 名誉権侵害、営業上の信用棄損
3 パブリシティ権侵害
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■事案の概要
『本件は、被告有限会社Sirene(以下「被告会社」)と専属的マネージメント契約を締結してバンド活動に従事していた原告らが、同契約終了後、同じバンド名で活動を継続しようとしたところ、被告会社が、同バンドについては同契約に基づき契約終了後6か月間、実演を目的とする契約を締結することが禁止されているが被告会社はその活動を許諾していない、商標権は被告会社に帰属しており原告らが同バンド名を使用することを許諾していないなどと記載された文書を関係者に配るなどしたことについて、原告らが、原告らの営業権、職業選択の自由、名誉権、営業上の信用(不正競争防止法2条1項21号)、パブリシティ権を侵害する不法行為に当たるとして、被告会社の代表者である被告E(以下「被告E」という。)に対しては民法709条に基づき、被告会社に対しては民法709条又は会社法350条に基づき、各原告につき99万円の損害賠償及び不法行為の日の後の日である、訴状送達の日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。』
(3頁)
<経緯>
H22.08 原被告間で専属契約締結
H30.01 契約更新
H30.10 グループ活動休止
H31.04 被告会社に解除通知書送付
R01.07 合意により終了
R01.08 被告会社がライブハウスに通知書送付
R01.10 グループ名称使用妨害差止仮処分却下(東京地裁)
R02.07 東京高裁却下決定取消、グループ名称使用妨害禁止命令決定(抗告事件)
■専属契約書
第9条 契約期間及び解約期間終了後の措置は以下のとおりとする。
(1)本契約の有効期間は、平成30年1月1日より2年間とする。
・・・
(5)実演家は、契約期間終了後6ヶ月間、甲への事前の承諾なく、
甲以外の第三者との間で、マネージメント契約等実演を目的とする
いかなる契約も締結することはできない。
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■判決内容
<争点>
1 営業の自由、職業選択の自由侵害
(1)本件各通知による本件グループ名を用いた活動の妨害
被告会社は、契約終了後の6カ月間の実演制限とグループ名称の商標権制限を通知していました(18頁以下)。
裁判所は、まず、契約書9条(5)の条項について無効とはいえず、仮に無効だとしても本件各通知の不法行為の成立を否定しています。
次に、本件各通知をした時点で、被告会社が本件グループ名について商標権を有していたとは認められず、本件グループ名を標章とする商標権が被告会社に帰属している旨の通知の記載は虚偽であると裁判所は判断。結論として、原告らの営業活動に制約を加え、損失をもたらすものであると判断しています。
そのほか、原告らは、被告会社らが原告らの肖像の使用の停止を求めたことが、営業の自由、職業選択の自由を侵害すると主張しましたが、裁判所は認めていません(25頁以下)。
(2)損害論
各原告について、
損害20万円
弁護士費用相当額損害2万円
合計22万円
(26頁以下)
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2 名誉権侵害、営業上の信用棄損
結論として、原告らの主張する被告会社らによる名誉権侵害、営業上の信用棄損の成立は認められていません(28頁以下)。
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3 パブリシティ権侵害
原告らは、本件各通知により商標権は被告会社が保持しており、本件グループ名を用いることは許諾しないなどと通知して原告らが本件グループ名を使用して活動することを妨害しているとして、原告らのパブリシティ権が侵害されたと主張しました(29頁以下)。
結論として、裁判所は、原告らの主張を認めていません。
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■コメント
新聞記事によると、知財高裁で東京地裁の判断が変更されたようです。
なお、バンド名称にパブリシティ権が認められるかどうかについて、下記の判例評釈参照。
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■参考サイト
「V系バンドが全面勝訴 活動妨害で元事務所に知財高裁が賠償命令」
朝日新聞デジタル 有料記事 村上友里 2022年12月26日 19時58分
記事
「FEST VAINQUEURに関するご報告」
レイ法律事務所
2019年12月9日
プレスリリース
2020年7月14日
プレスリリース
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■参考文献
東京高決令和2年7月10日令和元年(ラ)2075号について
諏訪野大「ヴィジュアル系ロックバンドの名称にパブリシティ権を認めた事例―FEST VAINQUEUR事件―」『THE INVENTION 発明』2021年5号44頁以下
判例評釈PDF