最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
動画キャプチャ無断使用事件
東京地裁令和4.11.24令和3(ワ)24148損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2022.12.22
*キーワード:動画、キャプチャ、静止画、引用、時事の事件の報道、権利濫用、損害論
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■事案
動画からキャプチャした静止画をブログに無断掲載した事案
原告:インターネット情報サービス会社
被告:ブログ運営者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、23条、32条、41条、114条3項、民法1条3項
1 著作権(複製権、公衆送信権)侵害論
2 引用の抗弁の成否
3 時事の事件の報道の抗弁の成否
4 権利濫用の抗弁の成否
5 損害論
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■事案の概要
『本件は、原告が、別紙投稿記事目録記載のとおり、被告の管理するブログに原告が著作権を有する別紙動画目録記載の各動画(以下「本件各動画」という。)をキャプチャした静止画が投稿され、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償金984万9845円及びこれに対する不法行為後である令和2年5月11日(不法行為がされた期間の最終日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R03.03 発信者情報開示請求判決(対ジェイコム千葉 東京地裁令和3.3.26令和2(ワ)15010)
原告チャンネル:「令和の虎CHANNEL」
被告ブログ:「チラシの裏」
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■判決内容
<争点>
1 著作権(複製権、公衆送信権)侵害論
被告が、原告が著作権を有する各動画をキャプチャして被告が運営するブログに投稿した行為について、裁判所は少なくとも過失があるとして著作権侵害性を肯定しています(13頁以下)。
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2 引用の抗弁の成否
被告の本件各記事は、「いずれも、約30枚〜60枚程度の本件各動画からキャプチャした静止画を当該動画の時系列に沿ってそれぞれ貼り付けた上で、各静止画の間に、直後に続く静止画に対応する本件各動画の内容を1行〜数行程度で簡単に要約して記載し、最後に、本件各動画の閲覧者のコメントの抜粋や被告の感想を記載するという構成を基本的なパターンとして採用」したものでした。
被告は、本件各記事による本件各動画の利用は適法な引用(著作権法32条1項)にあたると反論しましたが、裁判所は、本件各記事における本件各動画の利用は、引用の目的との関係で社会通念上必要とみられる範囲を超えるものであり、正当な範囲内で行われたものとはいえないとして、引用の成立を認めていません(14頁以下)。
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3 時事の事件の報道の抗弁の成否
被告は、本件各記事における本件各動画の利用は、社会において有用で公衆の関心事となりそうな新しい事業を計画している一般企業家が存在する事実やその事業計画に対する投資家の判断・評価という近時の出来事を公衆に伝達することを主目的とするものであり、時事の事件の報道(41条)に当たる旨主張しました(15頁以下)。
この点について、裁判所は、本件各動画は、最終的に投資家が出資の可否を決定するプロセス等をエンタテインメントとして視聴に供する企画として制作されたものであり、「時事の事件」や「報道」には当たらないとして、被告の反論を認めていません。
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4 権利濫用の抗弁の成否
被告は、原告が「切り抜き動画」制作者による本件各動画の拡散を積極的に利用して原告チャンネルの登録者数の増加を図り、実際にその恩恵を享受しているにも関わらず、被告に対して本件各動画の著作権を行使することは権利の濫用に当たる旨を主張しましたが、裁判所は認めていません(16頁)。
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5 損害論
使用料相当額損害(114条3項) 200万円
発信者情報開示手続費用相当額損害 20万円
弁護士費用相当額損害 22万円
合計242万円(16頁以下)
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■コメント
映像からのキャプチャした静止画の使用料相当額の損害算定について、NHKエンタープライズの使用料規定などが参考とされ、被告の使用態様の実態が静止画(写真)の利用というよりも、映像(動画)の利用に近いとして、映像の使用料の規定が斟酌されています。
YouTubeでの第三者による「切り抜き動画」については、権利者の許諾の元での収益化のプラットフォームが確立していますが、それ以外の態様、ブログでの利用となると個別(相対)の許諾が前提となります。
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■関連判例
「令和の虎」発信者情報開示請求事件(対ジェイコム千葉)
東京地裁令和3.3.26令和2(ワ)15010発信者情報開示請求事件
判決文PDF
動画キャプチャ無断使用事件
東京地裁令和4.11.24令和3(ワ)24148損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 杉浦正樹
裁判官 小口五大
裁判官 稲垣雄大
*裁判所サイト公表 2022.12.22
*キーワード:動画、キャプチャ、静止画、引用、時事の事件の報道、権利濫用、損害論
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■事案
動画からキャプチャした静止画をブログに無断掲載した事案
原告:インターネット情報サービス会社
被告:ブログ運営者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、23条、32条、41条、114条3項、民法1条3項
1 著作権(複製権、公衆送信権)侵害論
2 引用の抗弁の成否
3 時事の事件の報道の抗弁の成否
4 権利濫用の抗弁の成否
5 損害論
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■事案の概要
『本件は、原告が、別紙投稿記事目録記載のとおり、被告の管理するブログに原告が著作権を有する別紙動画目録記載の各動画(以下「本件各動画」という。)をキャプチャした静止画が投稿され、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、被告に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償金984万9845円及びこれに対する不法行為後である令和2年5月11日(不法行為がされた期間の最終日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R03.03 発信者情報開示請求判決(対ジェイコム千葉 東京地裁令和3.3.26令和2(ワ)15010)
原告チャンネル:「令和の虎CHANNEL」
被告ブログ:「チラシの裏」
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■判決内容
<争点>
1 著作権(複製権、公衆送信権)侵害論
被告が、原告が著作権を有する各動画をキャプチャして被告が運営するブログに投稿した行為について、裁判所は少なくとも過失があるとして著作権侵害性を肯定しています(13頁以下)。
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2 引用の抗弁の成否
被告の本件各記事は、「いずれも、約30枚〜60枚程度の本件各動画からキャプチャした静止画を当該動画の時系列に沿ってそれぞれ貼り付けた上で、各静止画の間に、直後に続く静止画に対応する本件各動画の内容を1行〜数行程度で簡単に要約して記載し、最後に、本件各動画の閲覧者のコメントの抜粋や被告の感想を記載するという構成を基本的なパターンとして採用」したものでした。
被告は、本件各記事による本件各動画の利用は適法な引用(著作権法32条1項)にあたると反論しましたが、裁判所は、本件各記事における本件各動画の利用は、引用の目的との関係で社会通念上必要とみられる範囲を超えるものであり、正当な範囲内で行われたものとはいえないとして、引用の成立を認めていません(14頁以下)。
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3 時事の事件の報道の抗弁の成否
被告は、本件各記事における本件各動画の利用は、社会において有用で公衆の関心事となりそうな新しい事業を計画している一般企業家が存在する事実やその事業計画に対する投資家の判断・評価という近時の出来事を公衆に伝達することを主目的とするものであり、時事の事件の報道(41条)に当たる旨主張しました(15頁以下)。
この点について、裁判所は、本件各動画は、最終的に投資家が出資の可否を決定するプロセス等をエンタテインメントとして視聴に供する企画として制作されたものであり、「時事の事件」や「報道」には当たらないとして、被告の反論を認めていません。
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4 権利濫用の抗弁の成否
被告は、原告が「切り抜き動画」制作者による本件各動画の拡散を積極的に利用して原告チャンネルの登録者数の増加を図り、実際にその恩恵を享受しているにも関わらず、被告に対して本件各動画の著作権を行使することは権利の濫用に当たる旨を主張しましたが、裁判所は認めていません(16頁)。
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5 損害論
使用料相当額損害(114条3項) 200万円
発信者情報開示手続費用相当額損害 20万円
弁護士費用相当額損害 22万円
合計242万円(16頁以下)
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■コメント
映像からのキャプチャした静止画の使用料相当額の損害算定について、NHKエンタープライズの使用料規定などが参考とされ、被告の使用態様の実態が静止画(写真)の利用というよりも、映像(動画)の利用に近いとして、映像の使用料の規定が斟酌されています。
YouTubeでの第三者による「切り抜き動画」については、権利者の許諾の元での収益化のプラットフォームが確立していますが、それ以外の態様、ブログでの利用となると個別(相対)の許諾が前提となります。
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■関連判例
「令和の虎」発信者情報開示請求事件(対ジェイコム千葉)
東京地裁令和3.3.26令和2(ワ)15010発信者情報開示請求事件
判決文PDF