最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ホテル画像CCライセンス違反事件

東京地裁令和4.5.31令和3(ワ)9618著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    鈴木美智子
裁判官    稲垣雄大

*裁判所サイト公表 2022.11.30
*キーワード:写真、クリエイティブコモンズ、氏名表示権

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■事案

クリエイティブコモンズライセンス条件に違反して画像を利用した事案

原告:写真家(ドイツ)
被告:不動産仲介会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、19条、114条3項、112条1項

1 原告写真は著作物に当たるか
2 原告写真の利用につき原告の同意があったか
3 被告が原告写真を利用したことにつき故意又は過失があるか
4 損害額
5 原告の請求は権利の濫用に当たるか
6 過失相殺の成否
7 被告が原告の著作権を侵害するおそれがあるか

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告は、原告の著作物である写真を複製して自身のウェブサイトに無断で掲載し、同写真に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)並びに著作者人格権(氏名表示権)を侵害したと主張して、被告に対し、民法709条及び著作権法114条3項に基づき、11万円の損害賠償及びこれに対する令和2年8月17日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告により同写真の著作権が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、同写真を複製し、自動公衆送信し、又は送信可能化することの差止めを求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H29.07 原告がドローン撮影、Flickrに掲載
R02.08 ライターBが記事を作成、本件ウェブサイトに掲載
R02.12 被告が警告書受領、被告写真を削除

本件ウェブサイト:&RESORTLife

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■判決内容

<争点>

1 原告写真は著作物に当たるか

原告写真は、原告が「天候の良好な日の日中に、シンガポール共和国に所在するマリーナ・ベイ・サンズホテルを被写体として、ドローンを使用して、同ホテルの屋上を空から斜めに見下ろす角度で、同ホテルの屋上全体と周囲の景観等との調和を図りつつ撮影したもの」でした。
裁判所は、原告写真の著作物性(著作権法2条1項1号)を肯定しています(9頁以下)。

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2 原告写真の利用につき原告の同意があったか

原告は、本件投稿サイトの利用者がクリエイティブ・コモンズに規定された条件として、原告が著作者である旨を表示するという条件を満たす方法で利用する場合に限り、利用者による原告写真の複製、公衆送信等に同意していました。
裁判所は、被告は、被告写真を本件ウェブサイトに掲載するに当たり、原告がその著作者である旨を表示せず、原告の同意をうかがわせる事情もないとして、原告の同意の存在を否定しています(10頁)。

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3 被告が原告写真を利用したことにつき故意又は過失があるか

裁判所は、被告は本件ライターの記事をウェブサイトに掲載するに際して、本件ライターに被告写真の出典を尋ねるなどして、被告写真が第三者の著作権ないし著作者人格権を侵害するものに該当しないことを確認することが可能であり、それにより同侵害を回避することが可能であり、被告においてはその旨の注意義務が存したものと認められると判断。
その上で、被告は、そのような確認をしないまま被告写真を本件ウェブサイトに掲載したことが認められ、被告が第三者の著作権や著作者人格権を侵害することのないように注意を払ったことをうかがわせる事情は認められないとして、被告に原告写真の利用につき過失があったと認めるのが相当であると判断しています(10頁以下)。

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4 損害額

裁判所は、諸般の事情を勘案して、本件において原告が原告写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)の行使につき受けるべき金銭の額(114条3項)は4万円と認定。また、氏名表示権侵害に係る慰謝料1万円、弁護士費用相当額損害を1万円と認定しています(12頁)。

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5 原告の請求は権利の濫用に当たるか

被告は、原告の請求が組織的なコピーレフト・トロールによる権利濫用行為の一環であることは明らかであるなどと主張しましたが、裁判所は認めていません(12頁以下)。

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6 過失相殺の成否

過失相殺についての被告の主張を裁判所は認めていません(13頁)。

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7 被告が原告の著作権を侵害するおそれがあるか

裁判所は、被告が原告写真に係る原告の著作権を侵害するおそれが認められると判断しています(13頁以下)。

結論として、請求一部認容となっています。

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■コメント

クリエイティブコモンズライセンス条項に違反する利用態様に関する事例となります。

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