最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
YouTuber逮捕動画引用事件
東京地裁令和4.10.28令和3(ワ)28420損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官 小田誉太郎
裁判官 國井陽平
*裁判所サイト公表 2022.11.16
*キーワード:引用、やむを得ないと認められる改変、氏名表示の省略
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■事案
YouTuberの動画を他のYouTuberが加工して配信したことが引用等にあたるかが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):YouTuber
本訴被告(反訴原告):YouTuber
--------------------
■結論
本訴一部認容、反訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、23条、32条、20条2項4号、19条3項
1 本件逮捕動画の投稿による社会的評価の低下の有無
2 名誉毀損に係る違法性阻却事由の有無
3 本件逮捕動画の投稿による肖像権・プライバシー権侵害の成否
4 原告の損害
5 原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
6 原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
7 原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
8 原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
9 原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
10 原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
11 原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
--------------------
■事案の概要
『本件本訴は、原告が、被告に対し、原告が警察官に逮捕された際の状況が撮影された「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題する動画(甲11に収録されている動画をいい、以下「本件逮捕動画」という。)を被告がインターネット上の動画投稿サイト「YouTube」(以下、単に「YouTube」という。)に投稿したことにより、名誉権、肖像権及びプライバシー権を侵害されたと主張して、不法行為に基づき、60万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年3月11日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『本件反訴は、被告が、原告に対し、原告がYouTube に複数の動画を投稿したこと等により、著作権(複製権及び公衆送信権)、著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)又はプライバシー権を侵害されたと主張して、不法行為に基づき、438万7900円及びこれに対する最後の不法行為の日である令和2年10月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H30.08 被告が自ら路上で撮影した動画を基に作成した本件逮捕動画を投稿
R02.09 原告が原告動画1、2を投稿
R02.10 原告が原告動画3を投稿
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■判決内容
<争点>
1 本件逮捕動画の投稿による社会的評価の低下の有無
2 名誉毀損に係る違法性阻却事由の有無
3 本件逮捕動画の投稿による肖像権・プライバシー権侵害の成否
4 原告の損害
本訴請求に関して、原告の名誉権及び肖像権が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料として、30万円の損害が認定されています(19頁以下)。
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5 原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
6 原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
(1)原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
反訴請求に関して、裁判所は、本件逮捕動画の著作者が被告(反訴原告)であるとした上で、原告が制作した原告動画1は、本件逮捕動画に係る創作的表現の一部について、原告の容ぼうにモザイク処理を付して、音声加工を施すなどして、これを複製したものであると判断。
原告(反訴被告)は、原告動画1をYouTubeに投稿していることから、本件逮捕動画に係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断しています(24頁以下)。
もっとも、原告(反訴被告)は引用の成立を主張しました。
この点について、裁判所は、諸事情を総合考慮した上で、原告動画1において本件逮捕動画を引用することは、公正な慣行に合致するものであり、引用の目的上正当な範囲内で行われたものと認めるのが相当であるとして、原告(反訴被告)の主張を認めています(26頁以下)。
(2)原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
結論として、裁判所は、原告による加工について、「やむを得ないと認められる改変」(20条2項4号)に該当するとして、被告の本件逮捕動画に係る同一性保持権が侵害されたものと認められていません(29頁以下)。
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7 原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
8 原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
(1)原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
裁判所は、本件イラストの著作者は被告であるとした上で、原告動画2において、被告動画1の一場面として表示するものの中に、本件イラストが表示されていることが認められ、原告は、原告動画2をYouTubeに投稿しており、本件イラストに係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断しています。
もっとも、引用の成立が認められています(30頁以下)。
(2)原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
結論として、氏名表示権やパブリシティ権を侵害するものではないと裁判所は判断しています(33頁)。
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9 原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
10 原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
11 原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
(1)原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
裁判所は、被告動画2の著作者は被告であるとした上で、原告動画3において、被告動画2の各場面が画像として表示されていることが認められ、原告は、原告動画3をYouTubeに投稿していることから、被告動画2の上記画像に係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断。
もっとも、引用の成立が認められています(33頁以下)。
(2)原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
同一性保持権、氏名表示権のいずれも侵害しない(20条2項4号、19条3項)と裁判所は判断しています(35頁以下)。
(3)原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
被告は、原告が、原告動画3において、被告の郵便番号を公開することにより、被告のプライバシー権を侵害したと主張しましたが、裁判所は不法行為の成立を認めていません(37頁以下)。
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■コメント
動画での引用の肯否に関する事案となります。
YouTuber逮捕動画引用事件
東京地裁令和4.10.28令和3(ワ)28420損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官 小田誉太郎
裁判官 國井陽平
*裁判所サイト公表 2022.11.16
*キーワード:引用、やむを得ないと認められる改変、氏名表示の省略
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■事案
YouTuberの動画を他のYouTuberが加工して配信したことが引用等にあたるかが争点となった事案
本訴原告(反訴被告):YouTuber
本訴被告(反訴原告):YouTuber
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■結論
本訴一部認容、反訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、23条、32条、20条2項4号、19条3項
1 本件逮捕動画の投稿による社会的評価の低下の有無
2 名誉毀損に係る違法性阻却事由の有無
3 本件逮捕動画の投稿による肖像権・プライバシー権侵害の成否
4 原告の損害
5 原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
6 原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
7 原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
8 原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
9 原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
10 原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
11 原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
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■事案の概要
『本件本訴は、原告が、被告に対し、原告が警察官に逮捕された際の状況が撮影された「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題する動画(甲11に収録されている動画をいい、以下「本件逮捕動画」という。)を被告がインターネット上の動画投稿サイト「YouTube」(以下、単に「YouTube」という。)に投稿したことにより、名誉権、肖像権及びプライバシー権を侵害されたと主張して、不法行為に基づき、60万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年3月11日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
『本件反訴は、被告が、原告に対し、原告がYouTube に複数の動画を投稿したこと等により、著作権(複製権及び公衆送信権)、著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)又はプライバシー権を侵害されたと主張して、不法行為に基づき、438万7900円及びこれに対する最後の不法行為の日である令和2年10月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H30.08 被告が自ら路上で撮影した動画を基に作成した本件逮捕動画を投稿
R02.09 原告が原告動画1、2を投稿
R02.10 原告が原告動画3を投稿
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■判決内容
<争点>
1 本件逮捕動画の投稿による社会的評価の低下の有無
2 名誉毀損に係る違法性阻却事由の有無
3 本件逮捕動画の投稿による肖像権・プライバシー権侵害の成否
4 原告の損害
本訴請求に関して、原告の名誉権及び肖像権が侵害されたことによる精神的苦痛に対する慰謝料として、30万円の損害が認定されています(19頁以下)。
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5 原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
6 原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
(1)原告動画1の投稿による著作権侵害の成否
反訴請求に関して、裁判所は、本件逮捕動画の著作者が被告(反訴原告)であるとした上で、原告が制作した原告動画1は、本件逮捕動画に係る創作的表現の一部について、原告の容ぼうにモザイク処理を付して、音声加工を施すなどして、これを複製したものであると判断。
原告(反訴被告)は、原告動画1をYouTubeに投稿していることから、本件逮捕動画に係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断しています(24頁以下)。
もっとも、原告(反訴被告)は引用の成立を主張しました。
この点について、裁判所は、諸事情を総合考慮した上で、原告動画1において本件逮捕動画を引用することは、公正な慣行に合致するものであり、引用の目的上正当な範囲内で行われたものと認めるのが相当であるとして、原告(反訴被告)の主張を認めています(26頁以下)。
(2)原告動画1の投稿等による著作者人格権侵害の成否
結論として、裁判所は、原告による加工について、「やむを得ないと認められる改変」(20条2項4号)に該当するとして、被告の本件逮捕動画に係る同一性保持権が侵害されたものと認められていません(29頁以下)。
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7 原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
8 原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
(1)原告動画2の投稿による著作権侵害の有無
裁判所は、本件イラストの著作者は被告であるとした上で、原告動画2において、被告動画1の一場面として表示するものの中に、本件イラストが表示されていることが認められ、原告は、原告動画2をYouTubeに投稿しており、本件イラストに係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断しています。
もっとも、引用の成立が認められています(30頁以下)。
(2)原告動画2の投稿等による著作者人格権侵害の有無
結論として、氏名表示権やパブリシティ権を侵害するものではないと裁判所は判断しています(33頁)。
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9 原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
10 原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
11 原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
(1)原告動画3の投稿による著作権侵害の有無
裁判所は、被告動画2の著作者は被告であるとした上で、原告動画3において、被告動画2の各場面が画像として表示されていることが認められ、原告は、原告動画3をYouTubeに投稿していることから、被告動画2の上記画像に係る被告の複製権及び公衆送信権を侵害していると判断。
もっとも、引用の成立が認められています(33頁以下)。
(2)原告動画3の投稿による著作者人格権侵害の有無
同一性保持権、氏名表示権のいずれも侵害しない(20条2項4号、19条3項)と裁判所は判断しています(35頁以下)。
(3)原告動画3の投稿によるプライバシー権侵害の成否
被告は、原告が、原告動画3において、被告の郵便番号を公開することにより、被告のプライバシー権を侵害したと主張しましたが、裁判所は不法行為の成立を認めていません(37頁以下)。
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■コメント
動画での引用の肯否に関する事案となります。