最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

新聞記事無断クリッピング事件

東京地裁令和4.10.6令和2(ワ)3931損害賠償請求事件PDF
別紙

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐伯良子
裁判官    仲田憲史

*裁判所サイト公表 2022.10.11
*キーワード:新聞記事、クリッピング、イントラネット、損害論

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■事案

新聞記事を無断でクリッピングして社内イントラネットで利用した事案

原告:新聞社
被告:鉄道会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、114条3項

1 本件イントラネット掲載記事と原告が著作権を有する記事
2 損害論

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告に対し、被告が原告の著作物たる原告が発行する新聞の記事をスキャンして画像データを作成しそれを社内イントラネット用の記録媒体に保存し、被告従業員が同イントラネットに接続して同画像データを閲覧できるようにしたことが、原告の複製権及び公衆送信権を侵害したことに当たるとして、民法709条又は同法715条に基づき、損害賠償及び各掲載日の後の日からの平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件イントラネット掲載記事と原告が著作権を有する記事

平成30年度掲載記事133本について、いずれも著作物性があり、原告に著作権が帰属すると裁判所は判断。
被告がこれらの記事を切り抜くなどした上で、その画像データを作成し、本件イントラネットによる送信用の記録媒体に記録して本件イントラネットに掲載したことは、本件イントラネットが接続されてこれを閲覧できた者等に照らせば、これらの記事に対して有する原告の複製権及び公衆送信権を侵害したと認められると裁判所は判断しています。

また、平成30年度以前の本件イントラネットに掲載された記事について、具体的な記事の内容や本数を直接裏付ける証拠はないものの、被告が本件イントラネットに掲載した記事があったと裁判所は推認。諸事情を勘案して、掲載記事本数を推計しています(9頁以下)。

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2 損害論

本件に係る被告による侵害態様等を総合的に考慮し、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間にかかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相当であると判断。
(15頁以下)。

・平成30年度以前 458本掲載 137万4000円
・平成30年度掲載 133本掲載  39万9000円

弁護士費用相当額損害 15万円

合計 192万3000円

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■コメント

平成17年(2005年)に被告が鉄道開業した直後から被告が運営する鉄道に関する記事等について、画像データを作成し、本件イントラネットに掲載をしていたといった、長期に亘る無断クリッピング利用の事例です。

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■参考サイト

社内掲示板に記事を無断掲載 中日新聞、つくばエクスプレス運営会社を提訴
2020/2/17 18:26 産経新聞社
記事

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■追記

本紙記事をめぐる著作権侵害訴訟の判決に対する控訴について
2022年10月18日 18時18分 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/208846?rct=release