最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

現代美術作品和解条項違反事件(控訴審)

知財高裁令和4.8.25令和4(ネ)10027等損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官    中平 健
裁判官    都野道紀

*裁判所サイト公表 2022.9.22
*キーワード:訴訟上の和解、公表、現代美術、画商、美術商

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■事案

現代美術作品の取扱いに関する和解条項に違反したかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人・附帯被控訴人(1審被告):美術家相続人(訴訟承継人)
被控訴人・附帯控訴人(1審原告):現代美術美術商

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■結論

控訴棄却、附帯控訴棄却

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■争点

条文 著作権法4条、民法695条、130条、民事訴訟法267条

1 本件禁止条項に違反する行為の意義
2 本件作品1及び2に係る本件禁止条項違反の有無
3 本件作品3及び4に係る本件禁止条項違反の有無
4 本件作品5ないし9に係る本件禁止条項違反の有無
5 被告が責任を負う金額
6 旧民法130条の類推適用により、本件禁止条項の定める条件が成就していないものとみなすことができるか


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■事案の概要

『本件は、美術商である被控訴人(附帯控訴人、原審原告。以下「被控訴人」という。)が、現代美術の作家であったX(原審係属中の令和2年8月27日に死亡した。亡X)の相続人である控訴人(附帯被控訴人、原審被告。以下「控訴人」という。)に対し、亡Xが、被控訴人と亡Xとの間の訴訟上の和解(以下「前訴和解」という。)の和解条項2(4)(原判決第2の2(4)、本件禁止条項)に違反する態様で作品の公表等をしたと主張し、前訴和解の定める違約金1800万円及び前訴和解の債務不履行による損害賠償2億0910万円の合計2億2710万円並びにこれに対する債務不履行の後である平成30年12月24日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「旧民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『原判決は、被控訴人の請求を、違約金400万円及びこれに対する平成30年12月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却した。』

『控訴人は、原判決の控訴人敗訴部分の取消しとその取消しに係る部分につき被控訴人の請求の棄却を求めて控訴し、被控訴人は、原判決を、違約金1800万円及びこれに対する平成30年12月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じるように変更することを求めて附帯控訴した。なお、被控訴人は、当審において、損害賠償2億0910万円及びこれに対する平成30年12月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を取り下げ、請求を上記附帯控訴の趣旨(前記第1の2(2))のとおりに減縮した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件禁止条項に違反する行為の意義
2 本件作品1及び2に係る本件禁止条項違反の有無
3 本件作品3及び4に係る本件禁止条項違反の有無
4 本件作品5ないし9に係る本件禁止条項違反の有無
5 被告が責任を負う金額


争点1から5まで、原審の判断が控訴審でも維持されています。

6 旧民法130条の類推適用により、本件禁止条項の定める条件が成就していないものとみなすことができるか

争点6について、控訴人は、被控訴人はBをして、真実は本件作品1及び2を購入する意思がないにもかかわらず、本件画廊1に対して、販売価格や作品明細の問合せを行わせて、前訴和解条項違反の有無を調査又は確認するという範囲を超えて、亡Xが本件禁止条項に違反する債務不履行状態を作出したものであると主張。
亡Xが本件禁止条項に違反することにより利益を受ける被控訴人が、不正に本件禁止条項に違反する債務不履行状態を作出したものであるから、旧民法130条の類推適用により、亡Xの相続人である控訴人は、本件禁止条項の定める条件が成就していないものとみなすことができる旨控訴審で主張しました。

この点について、控訴審は、被控訴人が、不正に本件禁止条項に違反する債務不履行状態を作出したものとは認められないとして、控訴人の主張を認めていません(34頁以下)。

結論として、原審の判断が控訴審でも維持されています。

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■コメント

2020年8月に亡くなられた原口典之さんに関係する訴訟の控訴審となります。

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