最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
パワーポイントファイル営業秘密事件
東京地裁令和4.8.9令和3(ワ)9317損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官 古賀千尋
裁判官 國井陽平
*裁判所サイト公表 2022.8.30
*キーワード:営業秘密、著作物性
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■事案
営業秘密の取扱いやデータの著作物性が争点となった事案
原告:情報処理サービス会社
被告:原告元代表取締役A、情報処理サービス会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条6項
1 営業秘密の不正取得の成否
2 著作権侵害の成否
3 本件合意書の効力の帰属
4 本件合意書違反の有無
5 背任行為の有無
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■事案の概要
『原告の従業員であって後に被告会社に移籍したB(以下「B」という。)は、原告に在籍中に、別紙本件データ目録記載のファイルのうちスライド2枚目ないし8枚目の部分(以下「本件データ」といい、本件データの特定の頁をスライドの頁数に合わせて「本件データ2枚目」などということがある。)を作成した。そして、Bは、被告会社に移籍した後、別紙被告ら作成データ目録記載のファイルのうちスライド7枚目ないし13枚目の部分(甲5の6の電子メールに添付されたパワーポイントファイル7頁ないし13頁をいう(令和3年10月28日付け書面による準備手続調書参照)。以下、当該データを「被告ら作成データ」といい、被告ら作成データの特定の頁をスライドの頁数に合わせて「被告ら作成データ7枚目」などということがある。)を作成し、被告Aに対し、被告ら作成データを含むファイルを添付の上電子メール(甲5の6)を送信した。』
『本件は、原告が、本件データは営業秘密及び著作物に該当するとして、被告らに対し、(1)本件データに係る原告の著作権(複製権又は翻案権)を侵害して被告ら作成データを作成し、(2)原告の営業秘密である本件データを不正の手段により取得して原告の情報を持ち出し、(3)原告の従業員を被告会社に移籍させるように勧誘し、又は原告の顧客に対して被告会社への取引の切換えを勧奨したと主張し、以上の各行為が、被告Aに対しては不法行為又は債務不履行(原告と被告Aとの間で締結された合意違反)を構成し、被告会社に対しては共同不法行為を構成するとして、損害の一部である1億円及びこれに対する不法行為又は債務不履行後の日である平成30年4月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H29.10 原告代表者Cと被告Aが辞任に関する合意書検討
H30.01 Bが被告Aにファイルを送信
R03.04 本件訴訟提起
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■判決内容
<争点>
1 営業秘密の不正取得の成否
裁判所は、本件データの営業秘密(不正競争防止法2条6項)該当性を否定し、原告の主張を認めていません(29頁以下)。
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2 著作権侵害の成否
原告は、本件データについて、その個別の表現自体については創作的表現がないことを認めるものの、表としての体系、配列に創作性があるものと主張しました。
この点について、裁判所は、「本件データの表としての体系、配列は、情報を分かりやすく整理してこれを伝えるために、一般的によく使用されるものであるにすぎず、そこに一定の工夫がされていたとしても、表現それ自体ではないアイデア又はありふれた表現にすぎないというべきであり、創作性を認めることはできない。」として、本件データの著作物性を否定。
被告らによるデータの作成は、本件データの複製又は翻案に該当するものとはいえないとして、原告の主張を認めていません(31頁以下)。
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3 本件合意書の効力の帰属
本件合意書の当事者に関して、裁判所は、原告Cは個人として本件合意書を締結したものと認めるのが相当であるなどとして、被告Aに対する債務不履行に基づく損害賠償請求は理由がないと判断しています(32頁以下)。
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4 本件合意書違反の有無
原告は、被告Aが原告から情報を持ち出したことが本件合意書5項に違反するなどを理由に、本件合意書違反を主張しましたが、裁判所は、原告の主張を認めていません(35頁以下)。
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5 背任行為の有無
裁判所は、被告Aにおいて本件合意書に違反する行為が認められず、背任行為は認められないとして、原告の主張を認めていません(42頁以下)。
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■コメント
協業関係者間での営業秘密の取扱いやデータの著作物性が争点となった事案となります。
パワーポイントファイル営業秘密事件
東京地裁令和4.8.9令和3(ワ)9317損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 中島基至
裁判官 古賀千尋
裁判官 國井陽平
*裁判所サイト公表 2022.8.30
*キーワード:営業秘密、著作物性
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■事案
営業秘密の取扱いやデータの著作物性が争点となった事案
原告:情報処理サービス会社
被告:原告元代表取締役A、情報処理サービス会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条6項
1 営業秘密の不正取得の成否
2 著作権侵害の成否
3 本件合意書の効力の帰属
4 本件合意書違反の有無
5 背任行為の有無
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■事案の概要
『原告の従業員であって後に被告会社に移籍したB(以下「B」という。)は、原告に在籍中に、別紙本件データ目録記載のファイルのうちスライド2枚目ないし8枚目の部分(以下「本件データ」といい、本件データの特定の頁をスライドの頁数に合わせて「本件データ2枚目」などということがある。)を作成した。そして、Bは、被告会社に移籍した後、別紙被告ら作成データ目録記載のファイルのうちスライド7枚目ないし13枚目の部分(甲5の6の電子メールに添付されたパワーポイントファイル7頁ないし13頁をいう(令和3年10月28日付け書面による準備手続調書参照)。以下、当該データを「被告ら作成データ」といい、被告ら作成データの特定の頁をスライドの頁数に合わせて「被告ら作成データ7枚目」などということがある。)を作成し、被告Aに対し、被告ら作成データを含むファイルを添付の上電子メール(甲5の6)を送信した。』
『本件は、原告が、本件データは営業秘密及び著作物に該当するとして、被告らに対し、(1)本件データに係る原告の著作権(複製権又は翻案権)を侵害して被告ら作成データを作成し、(2)原告の営業秘密である本件データを不正の手段により取得して原告の情報を持ち出し、(3)原告の従業員を被告会社に移籍させるように勧誘し、又は原告の顧客に対して被告会社への取引の切換えを勧奨したと主張し、以上の各行為が、被告Aに対しては不法行為又は債務不履行(原告と被告Aとの間で締結された合意違反)を構成し、被告会社に対しては共同不法行為を構成するとして、損害の一部である1億円及びこれに対する不法行為又は債務不履行後の日である平成30年4月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H29.10 原告代表者Cと被告Aが辞任に関する合意書検討
H30.01 Bが被告Aにファイルを送信
R03.04 本件訴訟提起
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■判決内容
<争点>
1 営業秘密の不正取得の成否
裁判所は、本件データの営業秘密(不正競争防止法2条6項)該当性を否定し、原告の主張を認めていません(29頁以下)。
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2 著作権侵害の成否
原告は、本件データについて、その個別の表現自体については創作的表現がないことを認めるものの、表としての体系、配列に創作性があるものと主張しました。
この点について、裁判所は、「本件データの表としての体系、配列は、情報を分かりやすく整理してこれを伝えるために、一般的によく使用されるものであるにすぎず、そこに一定の工夫がされていたとしても、表現それ自体ではないアイデア又はありふれた表現にすぎないというべきであり、創作性を認めることはできない。」として、本件データの著作物性を否定。
被告らによるデータの作成は、本件データの複製又は翻案に該当するものとはいえないとして、原告の主張を認めていません(31頁以下)。
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3 本件合意書の効力の帰属
本件合意書の当事者に関して、裁判所は、原告Cは個人として本件合意書を締結したものと認めるのが相当であるなどとして、被告Aに対する債務不履行に基づく損害賠償請求は理由がないと判断しています(32頁以下)。
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4 本件合意書違反の有無
原告は、被告Aが原告から情報を持ち出したことが本件合意書5項に違反するなどを理由に、本件合意書違反を主張しましたが、裁判所は、原告の主張を認めていません(35頁以下)。
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5 背任行為の有無
裁判所は、被告Aにおいて本件合意書に違反する行為が認められず、背任行為は認められないとして、原告の主張を認めていません(42頁以下)。
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■コメント
協業関係者間での営業秘密の取扱いやデータの著作物性が争点となった事案となります。