最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
貸画廊名称使用差止事件(控訴審)
知財高裁令和4.6.30令和3(ネ)10096競業行為差止等請求本訴・損害賠償請求反訴控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 小川卓逸
裁判官 遠山敦士
【原審】
東京地裁令和3.10.29令和1(ワ)15716等競業行為差止等請求事件
判決文
別紙1
別紙2
別紙3
*裁判所サイト公表 2022.7.28
*キーワード:画廊、営業譲渡契約、営業妨害、商号、ロゴマーク
--------------------
■事案
貸画廊の営業譲渡契約の成否などを巡る事案
控訴人兼附帯被控訴人 (1審原告):貸画廊経営者
被控訴人兼附帯控訴人 (1審被告):貸画廊経営者
被控訴人 (1審被告):貸画廊
--------------------
■結論
原判決一部変更
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■争点
条文 著作権法21条、23条、商法16条1項、商標法36条1項、不正競争防止法2条1項19号、21号
1 本件営業譲渡契約の成否
2 1審原告の1審被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか
3 1審被告Yに対する、営業妨害行為の差止請求の当否
4 1審被告Yに対する、営業妨害行為の不法行為に基づく損害賠償請求の当否
5 1審原告に対する不競法2条1項21号の不正競争を理由とする損害賠償請求及び差止請求に関する争点(反訴請求関係)
6 1審被告Yの1審原告に対する被告各商標権の行使が権利の濫用に当たるか(反訴請求関係)
7 1審原告に対する著作権法112条1項に基づく差止請求の当否(反訴請求関係)
8 1審原告に対する不競法2条1項19号の不正競争を理由とする差止請求に関する争点(反訴請求関係)
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■事案の概要
『本件の本訴は、1審原告が、1審原告の元夫である1審被告Yとの間で、1審被告Yが「GALLERY ART POINT」の名称(以下「本件商号」という場合がある。)を使用して行っていた画廊(以下「本件画廊」という。)の営業について営業譲渡を受ける旨の合意(以下「本件画廊の営業譲渡契約」という場合がある。)をし、その合意後、「GALLERY ART POINT」の文字を含む別紙原告商標権目録(原判決別紙1)記載の登録商標(以下「原告商標」という。)に係る商標権(以下「原告商標権」という。)の設定登録を受けたが、1審被告Yから、1審原告が本件画廊で行う貸画廊等の営業に対し営業妨害を受けているなどと主張して、1審被告Yに対し、(1)本件画廊の営業譲渡契約又は商法16条1項に基づき、東京都中央区における貸画廊等の営業の差止め、(2)本件画廊の営業譲渡契約に基づき、本件商号、その日本語表記である「ギャラリーアートポイント」又はこれらに類似の名称を使用することの差止め、(3)本件画廊の営業譲渡契約又は営業権に基づき、1審原告の貸画廊及び企画画廊の営業に対する営業妨害行為の差止め、(4)不法行為に基づく損害賠償として1審被告Yの営業妨害行為による損害、原告商標権の侵害行為による損害及び弁護士費用相当の損害の合計403万7900円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、1審被告Y及び同人が代表取締役を務める1審被告会社による原判決別紙2被告ら標章目録記載1ないし5の各標章(以下「被告ら各標章」と総称し、同目録記載の番号に従って、それぞれを「被告ら標章1」などという。)の使用が原告商標権の侵害に当たるとして、1審被告らに対し、商標法36条1項及び2項に基づき、被告ら各標章の使用の差止め及び削除等を求める事案である。』
『本件の反訴は、原告商標権の設定登録後に「GALLERY ART POINT」の文字を含む別紙被告商標権目録(原判決別紙5)記載1及び2の各登録商標(以下「被告各商標」と総称し、同目録記載1の登録商標を「被告商標1」、同目録記載2の登録商標を「被告商標2」という。)に係る各商標権(以下「被告各商標権」と総称し、被告商標1に係る商標権を「被告商標権1」、被告商標2に係る商標権を「被告商標権2」という。)の設定登録を受けた1審被告Yが、1審原告に対し、(ア)1審被告Yが1審原告に対し本件画廊の営業譲渡をした事実がないのに、1審原告がそのウェブサイトや広告物で、上記営業譲渡をあった旨を公表し、顧客にメール等で通知したことが、1審被告Yの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為として、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条1項に基づく上記行為の差止め及び同法4条に基づく損害賠償として569万5000円(売上減少による損害319万5000円及び信用毀損による無形損害ないし精神的損害250万円の合計額)及び遅延損害金の支払、(イ)不法行為に基づく損害賠償として1審原告による1審被告Yの画廊のインターンの業務の妨害行為に対する慰謝料50万円及び遅延損害金の支払、(ウ)画廊の内装費の半額に相当する132万円の不当利得返還及び遅延損害金の支払、(エ)1審原告による原判決別紙6原告標章目録記載の各標章(以下「原告各標章」と総称する。)の使用が、被告各商標権の侵害又は1審被告Yの著作物である原判決別紙7被告著作物目録記載のロゴマーク(以下「本件ロゴマーク」という。)に係る著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害に当たるとして、商標法36条1項又は著作権法112条1項に基づく上記使用の差止め、(オ)1審被告Yの特定商品等表示である「ギャラリーアートポイント」の商号に類似する1審原告の「artpoint.jp」のドメイン名の取得、保有及び使用が、不競法2条1項19号の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条1項に基づく上記取得等の差止めを求める事案である。』
『原審は、1審原告の本訴請求のうち、1審被告Yに対し、(4)の不法行為に基づく損害賠償として営業妨害行為による損害36万6560円及び弁護士費用相当の損害4万円の合計40万6560円並びにうち4960円に対する令和2年10月9日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金及びうち40万1600円に対する同日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、1審被告Yに対するその余の請求及び1審被告会社に対する請求をいずれも棄却し、また、1審被告Yの反訴請求のうち、(ア)の不競法3条1項に基づく差止請求、(エ)の商標法36条1項に基づく差止請求をいずれも認容し、(オ)の不競法3条1項に基づく差止請求のうち、「artpoint.jp」のドメイン名の保有及び使用の差止めを認める限度で一部認容し、(ア)の不競法4条に基づく損害賠償請求のうち、1審原告に対し、128万3060円(売上減少による損害28万3060円及び信用毀損による無形損害100万円の合計額)及びこれに対する判決確定の日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の反訴請求をいずれも棄却した。』
『そこで、1審原告は、原判決中敗訴部分を全部不服として控訴を提起し、1審被告Yは、附帯控訴の趣旨の限度で、原判決を不服として(本訴請求につき敗訴部分全部、反訴請求につき不競法4条に基づく損害賠償請求のうち、344万0530円(附帯控訴の趣旨(2))から128万3060円(原審認容額)を控除した差額215万7470円を棄却した部分)、附帯控訴を提起した。』
(3頁以下)
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■判決内容
<争点>
争点1乃至6、8は略
7 1審原告に対する著作権法112条1項に基づく差止請求の当否(反訴請求関係)
1審被告Yは、
(1)本件ロゴマークは1審被告Yを著作者とする著作物であるから、1審被告Yは本件ロゴマークに係る著作権を有する
(2)仮に本件ロゴマークの著作者がAであるとしても、1審被告Yの亡母CはAから本件画廊の経営権及びこれに付随する本件ロゴマークに係る著作権の譲渡を受け、さらに、1審被告Yは、亡Cから本件画廊の経営を引き継いだ際に、ロゴマークの著作権も引き継いだ
として、1審原告による原告各標章の使用は、1審被告Yが有する本件ロゴマークに係る著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害に当たる旨主張しました(28頁以下)。
この点について控訴審は、結論として、1審被告Yの1審原告に対する本件ロゴマークに係る著作権に基づく差止請求は理由がないと判断しています。
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■コメント
貸画廊の営業譲渡などを巡る紛争です。原審では商標権の争点との選択的請求で著作権に関する争点の判断がされていませんでしたが、控訴審では貸画廊の営業を行うことを妨げてはならない旨の義務を相互に負っていることを前提に、争点6において、1審被告Yの1審原告に対する被告各商標権の行使が信義則に反し、権利の濫用に当たると判断されて、商標権侵害性が否定されたことから著作権の争点の判断がされています。
貸画廊名称使用差止事件(控訴審)
知財高裁令和4.6.30令和3(ネ)10096競業行為差止等請求本訴・損害賠償請求反訴控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 小川卓逸
裁判官 遠山敦士
【原審】
東京地裁令和3.10.29令和1(ワ)15716等競業行為差止等請求事件
判決文
別紙1
別紙2
別紙3
*裁判所サイト公表 2022.7.28
*キーワード:画廊、営業譲渡契約、営業妨害、商号、ロゴマーク
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■事案
貸画廊の営業譲渡契約の成否などを巡る事案
控訴人兼附帯被控訴人 (1審原告):貸画廊経営者
被控訴人兼附帯控訴人 (1審被告):貸画廊経営者
被控訴人 (1審被告):貸画廊
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■結論
原判決一部変更
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■争点
条文 著作権法21条、23条、商法16条1項、商標法36条1項、不正競争防止法2条1項19号、21号
1 本件営業譲渡契約の成否
2 1審原告の1審被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか
3 1審被告Yに対する、営業妨害行為の差止請求の当否
4 1審被告Yに対する、営業妨害行為の不法行為に基づく損害賠償請求の当否
5 1審原告に対する不競法2条1項21号の不正競争を理由とする損害賠償請求及び差止請求に関する争点(反訴請求関係)
6 1審被告Yの1審原告に対する被告各商標権の行使が権利の濫用に当たるか(反訴請求関係)
7 1審原告に対する著作権法112条1項に基づく差止請求の当否(反訴請求関係)
8 1審原告に対する不競法2条1項19号の不正競争を理由とする差止請求に関する争点(反訴請求関係)
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■事案の概要
『本件の本訴は、1審原告が、1審原告の元夫である1審被告Yとの間で、1審被告Yが「GALLERY ART POINT」の名称(以下「本件商号」という場合がある。)を使用して行っていた画廊(以下「本件画廊」という。)の営業について営業譲渡を受ける旨の合意(以下「本件画廊の営業譲渡契約」という場合がある。)をし、その合意後、「GALLERY ART POINT」の文字を含む別紙原告商標権目録(原判決別紙1)記載の登録商標(以下「原告商標」という。)に係る商標権(以下「原告商標権」という。)の設定登録を受けたが、1審被告Yから、1審原告が本件画廊で行う貸画廊等の営業に対し営業妨害を受けているなどと主張して、1審被告Yに対し、(1)本件画廊の営業譲渡契約又は商法16条1項に基づき、東京都中央区における貸画廊等の営業の差止め、(2)本件画廊の営業譲渡契約に基づき、本件商号、その日本語表記である「ギャラリーアートポイント」又はこれらに類似の名称を使用することの差止め、(3)本件画廊の営業譲渡契約又は営業権に基づき、1審原告の貸画廊及び企画画廊の営業に対する営業妨害行為の差止め、(4)不法行為に基づく損害賠償として1審被告Yの営業妨害行為による損害、原告商標権の侵害行為による損害及び弁護士費用相当の損害の合計403万7900円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、1審被告Y及び同人が代表取締役を務める1審被告会社による原判決別紙2被告ら標章目録記載1ないし5の各標章(以下「被告ら各標章」と総称し、同目録記載の番号に従って、それぞれを「被告ら標章1」などという。)の使用が原告商標権の侵害に当たるとして、1審被告らに対し、商標法36条1項及び2項に基づき、被告ら各標章の使用の差止め及び削除等を求める事案である。』
『本件の反訴は、原告商標権の設定登録後に「GALLERY ART POINT」の文字を含む別紙被告商標権目録(原判決別紙5)記載1及び2の各登録商標(以下「被告各商標」と総称し、同目録記載1の登録商標を「被告商標1」、同目録記載2の登録商標を「被告商標2」という。)に係る各商標権(以下「被告各商標権」と総称し、被告商標1に係る商標権を「被告商標権1」、被告商標2に係る商標権を「被告商標権2」という。)の設定登録を受けた1審被告Yが、1審原告に対し、(ア)1審被告Yが1審原告に対し本件画廊の営業譲渡をした事実がないのに、1審原告がそのウェブサイトや広告物で、上記営業譲渡をあった旨を公表し、顧客にメール等で通知したことが、1審被告Yの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為として、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条1項に基づく上記行為の差止め及び同法4条に基づく損害賠償として569万5000円(売上減少による損害319万5000円及び信用毀損による無形損害ないし精神的損害250万円の合計額)及び遅延損害金の支払、(イ)不法行為に基づく損害賠償として1審原告による1審被告Yの画廊のインターンの業務の妨害行為に対する慰謝料50万円及び遅延損害金の支払、(ウ)画廊の内装費の半額に相当する132万円の不当利得返還及び遅延損害金の支払、(エ)1審原告による原判決別紙6原告標章目録記載の各標章(以下「原告各標章」と総称する。)の使用が、被告各商標権の侵害又は1審被告Yの著作物である原判決別紙7被告著作物目録記載のロゴマーク(以下「本件ロゴマーク」という。)に係る著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害に当たるとして、商標法36条1項又は著作権法112条1項に基づく上記使用の差止め、(オ)1審被告Yの特定商品等表示である「ギャラリーアートポイント」の商号に類似する1審原告の「artpoint.jp」のドメイン名の取得、保有及び使用が、不競法2条1項19号の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条1項に基づく上記取得等の差止めを求める事案である。』
『原審は、1審原告の本訴請求のうち、1審被告Yに対し、(4)の不法行為に基づく損害賠償として営業妨害行為による損害36万6560円及び弁護士費用相当の損害4万円の合計40万6560円並びにうち4960円に対する令和2年10月9日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金及びうち40万1600円に対する同日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、1審被告Yに対するその余の請求及び1審被告会社に対する請求をいずれも棄却し、また、1審被告Yの反訴請求のうち、(ア)の不競法3条1項に基づく差止請求、(エ)の商標法36条1項に基づく差止請求をいずれも認容し、(オ)の不競法3条1項に基づく差止請求のうち、「artpoint.jp」のドメイン名の保有及び使用の差止めを認める限度で一部認容し、(ア)の不競法4条に基づく損害賠償請求のうち、1審原告に対し、128万3060円(売上減少による損害28万3060円及び信用毀損による無形損害100万円の合計額)及びこれに対する判決確定の日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の反訴請求をいずれも棄却した。』
『そこで、1審原告は、原判決中敗訴部分を全部不服として控訴を提起し、1審被告Yは、附帯控訴の趣旨の限度で、原判決を不服として(本訴請求につき敗訴部分全部、反訴請求につき不競法4条に基づく損害賠償請求のうち、344万0530円(附帯控訴の趣旨(2))から128万3060円(原審認容額)を控除した差額215万7470円を棄却した部分)、附帯控訴を提起した。』
(3頁以下)
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■判決内容
<争点>
争点1乃至6、8は略
7 1審原告に対する著作権法112条1項に基づく差止請求の当否(反訴請求関係)
1審被告Yは、
(1)本件ロゴマークは1審被告Yを著作者とする著作物であるから、1審被告Yは本件ロゴマークに係る著作権を有する
(2)仮に本件ロゴマークの著作者がAであるとしても、1審被告Yの亡母CはAから本件画廊の経営権及びこれに付随する本件ロゴマークに係る著作権の譲渡を受け、さらに、1審被告Yは、亡Cから本件画廊の経営を引き継いだ際に、ロゴマークの著作権も引き継いだ
として、1審原告による原告各標章の使用は、1審被告Yが有する本件ロゴマークに係る著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害に当たる旨主張しました(28頁以下)。
この点について控訴審は、結論として、1審被告Yの1審原告に対する本件ロゴマークに係る著作権に基づく差止請求は理由がないと判断しています。
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■コメント
貸画廊の営業譲渡などを巡る紛争です。原審では商標権の争点との選択的請求で著作権に関する争点の判断がされていませんでしたが、控訴審では貸画廊の営業を行うことを妨げてはならない旨の義務を相互に負っていることを前提に、争点6において、1審被告Yの1審原告に対する被告各商標権の行使が信義則に反し、権利の濫用に当たると判断されて、商標権侵害性が否定されたことから著作権の争点の判断がされています。