最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

Flickr掲載写真CCライセンス利用許諾違反事件

東京地裁令和4.7.13令和3(ワ)21405著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    間明宏充
裁判官    バヒスバラン薫

*裁判所サイト公表 2022.7.25
*キーワード:CCライセンス、クリエイティブコモンズ、利用許諾違反、写真、損害論

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■事案

写真共有サイトFlickrに掲載された画像がCCライセンスに違反して利用された事案

原告:個人
被告:着物浴衣買取サイト運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、19条、114条3項

1 被告による著作権及び著作者人格権の侵害行為の有無
2 被告の故意又は過失の有無
3 損害の発生の有無及び額
4 本件写真の使用許諾の有無
5 差止めの必要性

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告がその管理運営するウェブサイトに別紙著作物目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を基にして作成した画像(別紙被告写真目録記載の画像。以下「本件画像」という。)をアップロードしたことが、原告の本件写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)及び氏名表示権を侵害し、又は公衆による複製権侵害を幇助したと主張して、被告に対し、著作権に基づき、本件写真の複製、自動公衆送信及び送信可能化の差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、合計33万9734円(ライセンス料相当額23万9734円、著作者人格権侵害による慰謝料5万円及び弁護士費用相当額5万円)及びこれに対する不法行為の日である平成29年11月4日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H29.11 被告が被告サイトに画像掲載
R03.01 原告が警告書通知

本件写真の概要:黄色、茶色、橙色等の花が全体的に描かれた薄黄緑色の浴衣の上に無地の深い青紫色の帯を重ねて撮影したもの

CCライセンス:「License: Attribution-ShareAlike License」(使用許諾:表示−継承使用許諾)

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■判決内容

<争点>

1 被告による著作権及び著作者人格権の侵害行為の有無

著作者の表示等を条件としてのみ利用許諾をするCCライセンスに違反して、被告が原告の写真を被告サイトに掲載したことについて、裁判所は原告の複製権、自動公衆送信権及び氏名表示権を侵害するものであると判断しています(8頁以下)。

なお、被告は、被告サイトは外注会社による制作であり、被告は侵害主体ではないと反論しました。この点について、裁判所は、本件写真を使用することによる最終的な利益帰属主体は被告であることから、被告自らが本件画像をアップロードしたと同視できるとして、被告の反論を認めていません。

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2 被告の故意又は過失の有無

被告は、ライセンス表示が英文で記載されており、非常に分かりにくいなどと主張しましたが、裁判所は、被告の主張は理由がないなどとして、本件被告サイトに著作者を表示せずに本件画像を掲載したことについて、被告には少なくとも過失があったと認定しています(9頁以下)。

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3 損害の発生の有無及び額

(1)使用料相当額損害(著作権法114条3項)

セカンダリーページ掲載(協同組合日本写真家ユニオン使用料規程参照)

初年度5万円+3年度分×2万円=11万円

(2)慰謝料

氏名表示権侵害による慰謝料額 3万円

(3)弁護士費用相当額損害

1万円

合計15万円 (10頁以下)

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4 本件写真の使用許諾の有無

被告は、本件写真の転載元であるビジュアルハントには、「DOWNLOAD FOR FREE」とあり、ビジュアルハント上では本件写真が無償で使用できる素材であったなどと主張しましたが、裁判所は認めていません(12頁以下)。

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5 差止めの必要性

現時点において、被告が本件写真に係る原告の著作権を「侵害するおそれ」(112条1項)を認めることはできないとして、裁判所は差止めの必要を認めていません(13頁)。

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■コメント

具体的な画像の内容はわかりませんが、浴衣や帯に関する画像のようです。
CCライセンスが付された画像は転載元である画像素材サイトでもライセンス内容が確認可能でしたが、その条件に違反して利用した事案です。

https://visualhunt.com のビジュアルハントが本事案の転載元である「ビジュアルハント」と同一か、わかりませんが、「浴衣」といったキーワードで検索すると、関連する画像が表示されて、ソース名や著者名、ライセンスの内容が表示されますので、このサイトであれば、とても「なにをしても自由で無料」な画像素材サイトとは見えません。

原告代理人は山本隆司先生です。昨年のCCライセンス違反事件(東京地裁令和3.10.12令和3(ワ)5285著作権侵害差止等請求事件)も山本先生が代理人の事案でした。

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■過去のブログ記事

CCライセンス違反損害賠償請求事件
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