最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

#KuTooツイート引用事件(控訴審)

知財高裁令和4.3.29令和3(ネ)10060損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官    小林康彦
裁判官    小川卓逸

*裁判所サイト公表 2022.6.20
*キーワード:ツイート、引用、侮辱、名誉棄損、著作者人格権みなし侵害

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■事案

ツイート内容の書籍掲載が引用にあたるかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):ツイッター投稿者
被控訴人(1審被告):#KuTooの活動者、出版社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法32条、20条、113条11項

1 本件見開きにおける本件ツイートの掲載が32条1項の引用に当たるか否か
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉感情侵害による不法行為の成否
4 名誉権侵害による不法行為の成否(追加請求関係)
5 著作者人格権のみなし侵害(113条11項)の成否(追加請求関係)

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,ソーシャル・ネットワーキング・サービスである「Twitter」(以下「ツイッター」という。)の原判決別紙「スレッド上の投稿一覧」記載のスレッド(以下「本件スレッド」という。)に控訴人が投稿したツイート(原判決39頁)に係る原判決別紙「原告ツイート」の投稿内容欄記載の文字情報(以下「本件ツイート」という。)が言語の著作物であり,被控訴人Yが,その全文を複製した上で,これを批判する文章を執筆し,被控訴人会社が別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)に別紙対象著作物のとおりの態様で本件ツイートを掲載して出版した行為が,控訴人の著作権(複製権及び譲渡権),著作者人格権(同一性保持権)及び名誉感情の侵害に当たる旨主張し,被控訴人らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償として,220万3300円及びこれに対する令和元年11月12日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,著作権法112条1項及び2項に基づき,本件書籍の複製等の差止め及び廃棄を求めた事案である。』

『原審は,被控訴人らが本件ツイートを本件書籍に掲載した行為は,同法32条1項の引用に当たり,控訴人の著作権を侵害するものではなく,また,被控訴人らの上記行為によって,控訴人の同一性保持権を侵害したと認めることはできないし,控訴人の名誉感情を侵害する不法行為の成立も認められない旨判断し,控訴人の上記各請求をいずれも棄却した。
 控訴人は,原判決を不服(ただし,損害賠償請求の遅延損害金の起算日は令和元年11月20日)として,本件控訴を提起した。』

『その後,控訴人は,当審において,被控訴人らの上記行為が,控訴人の名誉権の侵害及び名誉又は声望を害する方法による本件ツイートの利用による著作者人格権のみなし侵害(著作権法113条11項(令和2年法律第48号による改正前は同条7項))に当たる旨主張し,被控訴人らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償として110万円及びこれに対する同日(不法行為の日である本件書籍の出版日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める請求を追加した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件見開きにおける本件ツイートの掲載が32条1項の引用に当たるか否か

結論として、引用にあたるとした原審の判断を控訴審は維持しています(13頁以下)。

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2 同一性保持権侵害の成否

結論として、同一性保持権侵害性を否定した原審の判断を控訴審は維持しています(16頁以下)。

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3 名誉感情侵害による不法行為の成否

原審同様、名誉感情侵害による不法行為の成立を控訴審も否定しています(18頁)。

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4 名誉権侵害による不法行為の成否(追加請求関係)

本件見開きの記載によって控訴人の社会的評価が低下するものとは認められないとして、控訴人の名誉権侵害による不法行為の成否に関する追加請求は認められていません(18頁以下)。

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5 著作者人格権のみなし侵害(113条11項)の成否(追加請求関係)

控訴人は、被控訴人Yが本件見開きの左頁で本件ツイートを、控訴人が被控訴人Yに対して、直接返信したような形で掲載して、右頁で事実に反する説明をしたことは、控訴人の名誉又は声望を害する方法により控訴人の著作物である本件ツイートを利用したものといえるとして、113条11項により控訴人の著作者人格権を侵害する行為とみなされる旨主張しました。
しかし、控訴審は控訴人の主張を認めていません(20頁以下)。

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■コメント

「#KuToo(クートゥー)靴から考える本気のフェミニズム」書籍事件の控訴審となります。
控訴審で追加の請求がありましたが、原審の判断を維持し、結論としては全部棄却となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁令和3.5.26令和2(ワ)19351損害賠償等請求事件
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