最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ボイスドラマ共同著作者事件(控訴審)

知財高裁令和4.6.13令和3(ネ)10017共同著作権に基づく利得分配請求等控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官    浅井 憲
裁判官    中島朋宏

*裁判所サイト公表 2022.6.16
*キーワード:ドラマ、共同著作者、制作請負契約、報酬額

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■事案

ボイスドラマの共同著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :音声編集者
被控訴人(1審被告):シナリオ創作者ら

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■結論

原判決一部変更

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■争点

条文 著作権法2条1項12号、65条1項

1 控訴人が本件各作品の共同著作者であるか
2 被控訴人らの利得の有無及び額又は共有著作権の侵害を理由とする控訴人の損害の有無及び額
3 本件制作契約の成否、内容等
4 報酬額の合意の有無
5 報酬債務の弁済等の有無
6 報酬の不払を理由とする控訴人の損害の有無及び額

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■事案の概要

『本件は、控訴人が、被控訴人らに対し、(1)控訴人は、原判決別紙作品目録記載の各作品(ボイスドラマ)につき持分2分の1の共有著作権を有するところ、被控訴人らは、同各作品の売上金を全て取得したと主張し、不当利得返還請求又は共有著作権を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求として、上記売上金の2分の1の範囲内である464万円及びこれに対する履行の請求の日の翌日であり不法行為の後である平成31年1月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め、(2)控訴人は、同各作品の制作に関し、被控訴人らとの間で請負契約(以下「本件制作契約」という。)を締結した上、仕事を完成して引き渡したと主張し、本件制作契約に基づいて、報酬985万円及びこれに対する完成引渡しの後である同日から支払済みまで前同旨の遅延損害金の連帯支払を求め、(3)控訴人は、被控訴人らが上記(1)及び(2)の金員を支払わなかったことにより健康被害を被ったと主張し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金50万円及びこれに対する履行の請求の日の翌日であり不法行為の後である同日から支払済みまで前同旨の遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として本件各控訴を提起した。』
(2頁)

<経緯>

H29.02 ボイスドラマ制作、サイト配信販売
H30.06 制作費用の相殺、支払い
H30.08 原告が150万円請求、被告らが拒絶

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■判決内容

<争点>

1 控訴人が本件各作品の共同著作者であるか
2 被控訴人らの利得の有無及び額又は共有著作権の侵害を理由とする控訴人の損害の有無及び額

原審同様、控訴審でも本件各作品における控訴人の共同著作者性が否定されています(10頁以下)。

■原審のあてはめ部分
「原告は,本件各作品の制作を企図した被告Aから,制作への協力を依頼され,台詞を読み上げる声優の候補者を数人紹介し,被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形で,効果音の収録や編集の作業を担当したにとどまっているものでありこれらの原告の関与の性質・内容に照らせば,ボイスドラマであるという本件各作品の性質に照らしてもなお,原告が,本件各作品の制作に際し,創作行為を行ったものとみることは困難というほかない。そうすると,本件各作品の制作に際するこれらの関与について,原告が,創作と評価されるに足りる程度の精神的活動をしたものとまで認めるに足りないというべきであり,原告が本件各作品の共同著作者に当たるものとは認められない。」(原審7頁以下)

■控訴審
「仮に、控訴人が従事した個々の作業の中で、控訴人の判断に基づいて収録すべき効果音を選定したり、修正すべき音声を修正したりすることなどがあったとしても、これらの行為をもって、創作と評価されるに足りる程度の精神的活動であると認めることはできない。その他、控訴人が本件各作品につき創作と評価されるに足りる程度の精神的活動を行ったものと認めるに足りる証拠はない。」(控訴審11頁)

結論として、原審同様、共同著作者性が否定され、共有著作権の侵害を理由とする控訴人の主張は認められていません。

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3 本件制作契約の成否、内容等
4 報酬額の合意の有無
5 報酬債務の弁済等の有無
6 報酬の不払を理由とする控訴人の損害の有無及び額

原審では、制作契約に基づく報酬の未払額が認定されず、全部棄却の判断でしたが、控訴審では、制作契約に基づく被控訴人Y1(1審被告A)の控訴人に対する未払報酬債務の額(元本)が合計18万9680円と認定されています。

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■コメント

ボイスドラマの制作にあたり、声優の紹介や効果音の収録編集、アドバイスなど、どのような程度、態様で関与すれば共同して創作行為を行ったとされて、ドラマの共同著作者となり得るか(事案の程度、態様での関与だと創作行為とされない)が分かる事例となります。
なお、作品目録が原審末尾に別紙として添付されていて、11作品のタイトルからアダルト系とわかります。

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■原審判例

東京地裁令和3.1.21平成30(ワ)37847共同著作権に基づく利得分配請求等事件
判決文PDF