最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

鉄道写真トリミング事件

東京地裁令和4.4.15令和3(ワ)23928損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    小川 暁
裁判官    矢野紀夫

*裁判所サイト公表 2022.5.6
*キーワード:写真、ツイッター、インスタグラム、トリミング、同一性保持権、氏名表示権、損害論

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■事案

他人の画像を無断でトリミングしてツイッターなどで使用した事案

原告:個人
被告:個人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法19条、20条

1 同一性保持権侵害の成否
2 氏名表示権侵害の成否
3 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が、別紙原告写真目録記載1の写真(以下「原告写真1」という。)をトリミングして同被告写真目録記載1の写真(以下「被告写真1」という。)を、同原告写真目録記載2の写真(以下「原告写真2」という。)をトリミングして同被告写真目録記載2の写真(以下「被告写真2」という。)を、それぞれ作成し、原告の氏名を表示することなく、ツイッターに被告写真1の掲載を含む投稿をし、インスタグラムに被告写真1及び2の掲載を含む投稿をしたことにより、原告写真1及び2に係る原告の著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害したと主張して,不法行為に基づき,合計60万円(慰謝料50万円及び弁護士費用10万円)及びこれに対する令和2年7月14日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

R2.7  原告写真1、2撮影、原告がTwitterに投稿
    被告が被告写真1をTwitterに投稿
    被告が被告写真1、2をインスタグラムに投稿
    原告が被告に使用中止メッセージ送信
    被告が投稿を削除

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■判決内容

<争点>

1 同一性保持権侵害の成否

被告写真1及び2は、原告写真1及び2を正方形にトリミングして被告が作成したものであるとして、同一性保持権侵害性を裁判所は肯定しています(6頁以下)。
なお、被告は、インスタグラムの仕様として正方形にトリミングされるものであり、「やむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)にあたると主張しましたが、裁判所は認めていません。

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2 氏名表示権侵害の成否

被告によって原告写真1がトリミングされた上で、右下に白文字の筆記体でツイッター等のアカウントのユーザー名である「B以下省略」と記載がされて被告写真1が作成され、ツイッター及びインスタグラムに投稿がされていました。
また、被告は原告写真2をトリミングした被告写真2を作成し、インスタグラムに投稿をしていました。
この点について、裁判所は、被告は原告写真1及びに2に係る原告の氏名表示権を侵害したと認めるのが相当であると判断しています。
なお、被告は、反論として、原告写真1及び2には、原告に著作権があることを示す原告のウォーターマークの記載はなく、被告がこれを削除したわけではないなどと主張しましたが、裁判所は認めていません(7頁以下)。

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3 損害額

(1)同一性保持権侵害(慰謝料)

原告写真各5万円 小計10万円

(2)氏名表示権侵害(慰謝料)

・被告写真1の掲載を含む本件投稿1につき2万円
・被告写真1及び2の掲載を含む本件投稿2につき4万円
・被告写真1及び2の掲載を含む本件投稿3につき4万円

小計10万円

(3)弁護士費用相当額損害

4万円

合計24万円(8頁以下)

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■コメント

原告の写真がどのようなものか、別紙に添付がないので詳細は分かりませんが、鉄道写真だったようです。
被告写真2については、同一性保持権侵害のほか、積極的な原告の氏名表示をしていない点も慰謝料の対象として損害額が算定されています。