最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

オーサグラフ世界地図共同著作者事件(対研究者)

東京地裁令和4.3.25令和2(ワ)25127「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    小川 暁
裁判官    矢野紀夫

*裁判所サイト公表 2022.4.8
*キーワード:地図、著作者性、共同著作者

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■事案

地図の共同著作者性が争点となった事案

原告:デザイン・サイエンティスト
被告:研究者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法14条、64条、65条

1 本件地図1ないし4の著作者

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告に対し、日本国際地図学会の「平成21年度定期大会発表論文・資料集」中の論文「オーサグラフによる矩形世界地図」(以下「本件論文1」という。)に「図1:筆者が考案する世界地図」として掲載された地図(別紙1の(1)。以下「本件地図1」という。)及び「図2:平面充填地図とそこから切り出せる世界地図」として掲載された地図(別紙1の(2)。以下「本件地図2」という。)並びに慶應義塾大学湘南藤沢学会の「KEIO SFC JOURNAL Vol.17 No.1」中の論文「正多面体図法を用いた歪みの少ない長方形世界地図図法の提案」(以下「本件論文2」という。)に「図7 本論文で取り上げる世界地図」として掲載された地図(別紙2の(1)。以下「本件地図3」という。)及び「図17 平面充填地図」として掲載された地図(別紙2の(2)。以下「本件地図4」という。)について、原告が被告とともに共同著作権及び著作者人格権を有することの確認を求める事案である。』

『原告は、前記第1の1及び2記載のとおり、被告とともに共同著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めているが、その趣旨としては、原告が共同著作物である本件地図1ないし4に係る共有著作権(著作権法65条1項)及び著作者人格権(同法64条1項)を有することの確認を求めるものと解される。』(2頁)

<経緯>

S63 原告が研究所設立
H07 被告が原告から論文指導を受ける
H11 原告が被告に論文提出中止要請
H12 原被告が共同研究開始
H12 原被告が本件覚書締結
H21 被告が本件発表、本件論文1作成
H29 被告が本件論文2作成
H30 被告が虚偽事実告知流布を理由に提訴(東京地裁H30(ワ)2115)

本件発表:日本国際地図学会平成21年度定期大会「オーサグラフによる矩形世界地図」研究発表
本件論文1:「オーサグラフによる矩形世界地図」
本件論文2:「正多面体図法を用いた歪みの少ない長方形世界地図図法の提案」

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■判決内容

<争点>

1 本件地図1ないし4の著作者

本件地図1ないし4に関する被告の著作者性について、裁判所は、

「仮に本件論文1に掲載された本件地図1及び2並びに本件論文2に掲載された本件地図3及び4に著作物性が認められるとしても、本件地図1ないし4は、原告の思想又は感情が創作的に表現されたものではなく、被告のみの思想又は感情が創作的に表現されたものと認めるのが相当であり、原告及び被告の各氏名が記載された本件論文1に掲載された本件地図1及び2について、著作権法14条に基づき、原告及び被告が著作者であると推定されたとしても、その推定は覆されるというべきである。」

と判断。原告の著作者性を否定し、原告の主張を容れていません(11頁以下)。

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■コメント

対慶応義塾の事件では請求却下、被告による原告に対する虚偽事実告知不正競争防止法事件訴訟については、一部認容となっています。

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■関連判例

オーサグラフ世界地図事件(対慶応義塾)
東京地裁令和3.6.4令和2(ワ)25127「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件
記事

世界地図作成技法「オーサグラフ」虚偽事実告知事件
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判決文