最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スティック春巻商品パッケージ写真事件

東京地裁令和4.3.30令和2(ワ)32121著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    矢野紀夫
裁判官    佐々木亮

*裁判所サイト公表 2022.3.31
*キーワード:写真、物撮り、商品、パッケージ、複製、翻案

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■事案

スティック春巻写真の商品パッケージでの利用の複製性、翻案性が争点となった事案

原告:食品企画開発販売会社
被告:食品企画開発販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 被告写真3の著作権侵害の成否
2 被告写真1及び2の差止め及び廃棄の必要性

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■事案の概要

『本件は、原告が、被告に対し、別紙原告写真目録記載の写真(以下「原告写真」という。)が写真の著作物に該当し、被告が被告商品目録1及び被告商品目録2記載のラベルシール(以下、前者を「被告ラベルシール1」、後者を「被告ラベルシール2」という。)を商品に付して販売する行為が原告の原告写真に係る著作権(複製権及び譲渡権)を侵害し、別紙被告商品目録3記載のラベルシール(以下「被告ラベルシール3」という。)を商品に付して販売する行為が原告の原告写真に係る著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)を侵害すると主張して、著作権法112条1項及び2項に基づき、被告ラベルシール1ないし3の各写真部分(スティック春巻、野菜及び白い皿を被写体とする部分をいう。以下同じ。)の複製、改変、譲渡及び頒布の差止め並びに廃棄を求めるとともに、被告ラベルシール3に係る著作権侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求として著作権法114条1項による損害額及び弁護士費用相当額の各損害金並びにそれらの合計額に対する訴状送達の日の翌日である令和3年1月27日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H27.08 原告が外注で写真を撮影
H28.10 原告が訴外朋社にパッケージデザイン制作委託
R01.09 被告が朋社にパッケージデザイン制作委託
     朋社が原告写真を無断使用
R02.03 原告が被告に内容証明郵便送付
R02.04 被告が被告ラベルシール3の写真部分(被告写真3)を制作

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の成否

被告によって新たに撮影された被告写真3が、原告写真を複製又は翻案したものにあたるかどうかについて、裁判所は、複製、翻案の意義について言及した上で、原告写真と被告写真3の共通点6か所を検討(13頁以下)。
裁判所は、共通点に係る表現はいずれもありふれたものであると判断。これらの共通点を全体として観察しても、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められないとして複製又は翻案の成立を否定しています。

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2 被告写真1及び2の差止め及び廃棄の必要性

被告が原告写真の無断使用の事実を認めた被告ラベルシール1及び2について、裁判所は、被告は被告ラベルシール1及び2については全部を焼却処分しているなどとして、本件において、被告が被告ラベルシール1及び2の各写真部分(被告写真1及び2)を複製、改変、譲渡又は頒布する行為の差し止めや廃棄の必要性は認められないと判断しています(19頁以下)。

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■コメント

判決文の末尾に別紙が添付されていて、どのような写真であるかがわかります。
原告写真も被告写真3もライティングを考えて撮影されていることが伺えます。
「えびチーズ春巻き」でGoogle画像検索をすると、様々な春巻きの配置の画像が出てきます。
原告からすると、侵害事例があったうえで、懲りずに似通った画像を制作して利用してきたと考えたのも、あるいは無理からぬところともいえます。
とはいえ、みずみずしいスイカ事件やスメルゲット事件といった先例からしますと、商品パッケージ用のスティック春巻きのシンプルなブツ撮り写真は、デッドコピーでもない限り侵害性を認めるのは難しそうです。

原告写真(判決別紙より)
原告写真スティック春巻き

被告写真3
被告商品3