最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ショッピングモール開発企画書事件
東京地裁令和4.3.30令和1(ワ)25550設計図面の複製の差止め等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2022.3.31
*キーワード:企画書、著作者性
--------------------
■事案
多摩ニュータウン用地の複合施設建設に関する企画書の著作者性などが争点となった事案
原告:商業施設建設コンサル会社
被告:不動産会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項2号、民法709条、商法512条
1 不法行為に基づく損害賠償請求権の存否
2 著作権又は著作者人格権侵害に基づく差止請求権の存否
3 商法512条に基づく報酬請求権の存否
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、被告に対し、(1)被告が原告を欺いて別紙書類目録記載の書類(以下「本件企画書」という。)の利用許諾をさせたことは、本件企画書の著作者である原告に対する不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、損害金(合計23億8886円3015円のうち10億円)及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法(以下同じ。)所定の遅延損害金の支払を求め、(2)被告が、本件企画書を複製及び改変し、別紙図面(1)及び(2)によって表現される建築(以下「本件建物」という。)を複製して、本件企画書に係る原告の複製権及び同一性保持権並びに本件建物に係る原告の複製権を侵害するおそれがあるとして、著作権法112条1項に基づき、本件企画書の複製及び改変並びに本件建物の建築の差止めを求め、(3)原告が、被告に本件企画書の利用を許諾するなどして、被告が公有地の開発事業の事業予定者として選定されるためのコンサルティング業務を行ったことについて、商法512条に基づき、相当の額の報酬(合計10億8619万6877円のうち10億円)及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である。
なお、不法行為に基づく損害賠償請求(上記(1))と商法512条に基づく報酬請求(上記(3))は選択的併合の関係にある。 』
(2頁)
<経緯>
S40 多摩ニュータウン開発計画建設開始
H28 八王子市が本件土地の用途変更
H29 東京都が多摩ニュータウン事業用地事業者募集要項(G−70)配布
H29 被告が本件土地の買受申込書を東京都に提出
H30 プレゼン実施
H30 東京都が被告を本件開発事業の事業予定者に決定
H30 都議会議決、被告と東京都が仮契約
H30 東京都が原告にあっせん委託料支払い
H30 東京都と被告が正式契約
H30 原告が被告に内容証明通知
本件企画書:多摩ニュータウン事業用地(G−70)事業計画ご提案書類
--------------------
■判決内容
<争点>
1 不法行為に基づく損害賠償請求権の存否
本件企画書の利用許諾関係について、裁判所は、結論として被告の欺罔行為及び契約締結上の過失は認められず、不法行為は成立しないと判断しています(29頁以下)。
--------------------
2 著作権又は著作者人格権侵害に基づく差止請求権の存否
(1)原告が本件企画書等の著作者か否か
原告は、本件企画書の作成に際して、本件土地の開発計画を立案し、建設設計事務所等から提出された検討結果を総合的に取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業を行ったこと、また、建築計画等の制作において設計図面等の著作権は発注者である取りまとめ会社に帰属する慣例があることなどを理由に、原告が本件企画書の著作者であると主張しました(31頁以下)。
この点について、裁判所は、
「単に計画を立案したというのみではアイデアの提供にとどまるし、他社による検討結果を取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業をしたとしても、当該他社の創作的表現を本件企画書に記載したのみでは、当該作業を通じて、本件企画書に原告の思想又は感情を創作的に表現したことにはならないというべきである。」
としたうえで、
「本件全証拠によっても、原告が本件企画書等の作成にどのように関与したのかは明らかではないから、本件企画書等が「著作物」に該当するとしても、原告がこれを「創作」したと認めることはできない」と判断。
結論として、原告が、本件企画書等の著作者(著作権法2条1項2号)であるとは認められないとしています。
(2)差止めの必要性
原告は、被告が本件企画書を複製、改変したり、本件企画書の別紙図面(1)及び(2)に従って本件建物を建築したりする蓋然性が高いとして、差止めの必要性があると主張しました(32頁以下)。
この点について、裁判所は、本件全証拠によっても、被告が実際に本件企画書を複製、改変したという事実は認められないなどとして、結論として、差止めの必要性を認めていません。
--------------------
3 商法512条に基づく報酬請求権の存否
裁判所は、結論として原告の被告に対する本件仲介行為は、客観的にみて、被告のためにしたものということはできず、「他人のために」した行為(商法512条)に該当すると認めることはできないとして、原告の主張を容れていません(33頁以下)。
--------------------
■コメント
ショッピングモール「(仮称)ビバモール八王子多摩美大前」の開発に関連する事案のようです。
【八王子市】6月完成予定の大きな大きなビバモール、あと3ヶ月余りで完成するの?工事の様子を見てきました
号外NET 八王子市 https://hachioji.goguynet.jp/2022/03/12/viva-mall-hachiouji-tamabidaimae-2/
ショッピングモール開発企画書事件
東京地裁令和4.3.30令和1(ワ)25550設計図面の複製の差止め等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2022.3.31
*キーワード:企画書、著作者性
--------------------
■事案
多摩ニュータウン用地の複合施設建設に関する企画書の著作者性などが争点となった事案
原告:商業施設建設コンサル会社
被告:不動産会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項2号、民法709条、商法512条
1 不法行為に基づく損害賠償請求権の存否
2 著作権又は著作者人格権侵害に基づく差止請求権の存否
3 商法512条に基づく報酬請求権の存否
--------------------
■事案の概要
『本件は、原告が、被告に対し、(1)被告が原告を欺いて別紙書類目録記載の書類(以下「本件企画書」という。)の利用許諾をさせたことは、本件企画書の著作者である原告に対する不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、損害金(合計23億8886円3015円のうち10億円)及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法(以下同じ。)所定の遅延損害金の支払を求め、(2)被告が、本件企画書を複製及び改変し、別紙図面(1)及び(2)によって表現される建築(以下「本件建物」という。)を複製して、本件企画書に係る原告の複製権及び同一性保持権並びに本件建物に係る原告の複製権を侵害するおそれがあるとして、著作権法112条1項に基づき、本件企画書の複製及び改変並びに本件建物の建築の差止めを求め、(3)原告が、被告に本件企画書の利用を許諾するなどして、被告が公有地の開発事業の事業予定者として選定されるためのコンサルティング業務を行ったことについて、商法512条に基づき、相当の額の報酬(合計10億8619万6877円のうち10億円)及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である。
なお、不法行為に基づく損害賠償請求(上記(1))と商法512条に基づく報酬請求(上記(3))は選択的併合の関係にある。 』
(2頁)
<経緯>
S40 多摩ニュータウン開発計画建設開始
H28 八王子市が本件土地の用途変更
H29 東京都が多摩ニュータウン事業用地事業者募集要項(G−70)配布
H29 被告が本件土地の買受申込書を東京都に提出
H30 プレゼン実施
H30 東京都が被告を本件開発事業の事業予定者に決定
H30 都議会議決、被告と東京都が仮契約
H30 東京都が原告にあっせん委託料支払い
H30 東京都と被告が正式契約
H30 原告が被告に内容証明通知
本件企画書:多摩ニュータウン事業用地(G−70)事業計画ご提案書類
--------------------
■判決内容
<争点>
1 不法行為に基づく損害賠償請求権の存否
本件企画書の利用許諾関係について、裁判所は、結論として被告の欺罔行為及び契約締結上の過失は認められず、不法行為は成立しないと判断しています(29頁以下)。
--------------------
2 著作権又は著作者人格権侵害に基づく差止請求権の存否
(1)原告が本件企画書等の著作者か否か
原告は、本件企画書の作成に際して、本件土地の開発計画を立案し、建設設計事務所等から提出された検討結果を総合的に取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業を行ったこと、また、建築計画等の制作において設計図面等の著作権は発注者である取りまとめ会社に帰属する慣例があることなどを理由に、原告が本件企画書の著作者であると主張しました(31頁以下)。
この点について、裁判所は、
「単に計画を立案したというのみではアイデアの提供にとどまるし、他社による検討結果を取りまとめ、本件企画書に落とし込む作業をしたとしても、当該他社の創作的表現を本件企画書に記載したのみでは、当該作業を通じて、本件企画書に原告の思想又は感情を創作的に表現したことにはならないというべきである。」
としたうえで、
「本件全証拠によっても、原告が本件企画書等の作成にどのように関与したのかは明らかではないから、本件企画書等が「著作物」に該当するとしても、原告がこれを「創作」したと認めることはできない」と判断。
結論として、原告が、本件企画書等の著作者(著作権法2条1項2号)であるとは認められないとしています。
(2)差止めの必要性
原告は、被告が本件企画書を複製、改変したり、本件企画書の別紙図面(1)及び(2)に従って本件建物を建築したりする蓋然性が高いとして、差止めの必要性があると主張しました(32頁以下)。
この点について、裁判所は、本件全証拠によっても、被告が実際に本件企画書を複製、改変したという事実は認められないなどとして、結論として、差止めの必要性を認めていません。
--------------------
3 商法512条に基づく報酬請求権の存否
裁判所は、結論として原告の被告に対する本件仲介行為は、客観的にみて、被告のためにしたものということはできず、「他人のために」した行為(商法512条)に該当すると認めることはできないとして、原告の主張を容れていません(33頁以下)。
--------------------
■コメント
ショッピングモール「(仮称)ビバモール八王子多摩美大前」の開発に関連する事案のようです。
【八王子市】6月完成予定の大きな大きなビバモール、あと3ヶ月余りで完成するの?工事の様子を見てきました
号外NET 八王子市 https://hachioji.goguynet.jp/2022/03/12/viva-mall-hachiouji-tamabidaimae-2/