最高裁判所HP 下級裁判所裁判例速報より

編物動画YouTube削除事件

京都地裁令和3.12.21令和2(ワ)1874損害賠償請求事件PDF

京都地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 長谷部幸弥
裁判官    中山裕貴
裁判官    浦恩城泰史

*裁判所サイト公表 2022.3.18
*キーワード:YouTube、contentsID、動画削除、異議申立、編み物、編物、過失相殺

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■事案

YouTubeに対して侵害通知をして他人のコンテンツの配信を停止させた行為が不法行為にあたるかどうかが争点となった事案

原告:編物動画投稿者
被告:編物動画投稿者、古美術商

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 民法709条

1 本件侵害通知による不法行為責任の成否
2 被告Dの責任の有無
3 損害の発生及びその額
4 過失相殺

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■事案の概要

『本件は,原告が,動画共有サービス「YouTube」(以下,同サービス及びその運営主体を「YouTube」という。また,YouTubeの利用者を「利用者」,利用者のうち動画投稿を行う者を「投稿者」という。)に投稿した動画が,被告らからの著作権侵害に関する通知によって削除されたことは,不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として,118万7227円(精神的損害100万円,経済的損害7万9297円,弁護士費用10万7930円)及びこれに対する不法行為の日である令和2年2月6日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁)

<経緯>

R1.8 原告が原告動画2を投稿
R2.2 原告が原告動画1を投稿
R2.2 被告BがYouTubeに著作権侵害通知
   原告動画削除
R2.8 動画復元 

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■判決内容

<争点>

1 本件侵害通知による不法行為責任の成否

(1)著作権侵害性

原告動画が被告動画の著作権を侵害しているかどうかについて、裁判所は、手法といった技術内容の表現については、著作権法上の保護の範囲は比較的狭いと説示した上で、両動画は編み方の説明ないし表現方法として殊更に類似しているとは認められないなどとして、著作権侵害性を認めていません(10頁以下)。

(2)被告Bの重過失等

裁判所は、YouTubeに対して著作権侵害通知をする者は、著作権侵害通知に異議申立てが認められているにしても、対象動画の削除やチャンネルの停止等の一定の効果が結び付けられていることからすれば、著作権侵害の有無について少なくとも一定の確認等を行った上でこれをすべきであり、これを怠って著作権侵害通知を行った場合、その態様によっては対象動画の投稿者に対する不法行為が成立し得ると判断。
本件では、被告Bは独自の見解に基づき通知をしていたことなどから、被告Bの注意義務違反の程度は著しく、少なくとも重過失があったと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(12頁以下)。

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2 被告Dの責任の有無

被告Bと共同経営者である被告Dの責任について、裁判所は、結論として、本侵害通知による不法行為に関して、被告Dも共同不法行為者(ないしは幇助者)として被告Bと同様の責任を負うと認定しています(16頁以下)。

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3 損害の発生及びその額

(1)精神的苦痛に対する損害 5万円
(2)広告収益に関する損害  1万7929円
(3)弁護士費用相当額損害    6792円

以上、合計7万4721円が損害額として認定されています(17頁以下)。

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4 過失相殺

YouTubeに対する異議申立手続に関して、原告側に賠償額を減額することを相当とする程度の過失があったとは言えないとして、被告らの過失相殺の主張は認められていません(18頁以下)。

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■コメント

一方的な思い込み、独自の見解でYouTubeに対して侵害通知をして他人のコンテンツの配信を阻止した事案となります。
被告に重過失が認められており、また、京都地裁の判断なので事例判断ではありますが、今日的な著作権事件として先例的な事例になるかと思います。

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■参考サイト

「編み物ユーチューバーらに賠償命令 著作権侵害していない動画の削除要請で」
(京都新聞2021年12月21日 15:26)
記事

【編み物著作権裁判】YouTuber対YouTuber裁判の行方を弁護士が解説
2021/12/23 原告代理人加藤弁護士
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編み物YouTuber裁判判決への疑問に弁護士がお答えします!(2021/12/27)
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弁護士齋藤理央 I2練馬斉藤法律事務所(午後11:32 2022年3月18日)
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