最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ホンダ50年社史事件
東京地裁令和3.12.8令和2(ワ)2426不当利得返還請求事件PDF
別紙(記述対比表)
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 矢野紀夫
*裁判所サイト公表 2022.2.10
*キーワード:翻案、社史
--------------------
■事案
自動車会社の社史に無断で書籍が翻案されて掲載されたとして紛争になった事案
原告:フリーライター
被告:自動車会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法27条
1 本件社史部分の翻案該当性
--------------------
■事案の概要
『本件は,別紙1原告著作物目録記載の書籍(以下「原告書籍」という。)の著作者である原告が,被告によって平成11年3月25日に発行された「語り継ぎたいこと チャレンジの50年」と題する被告の社史(以下「被告社史」という。)は原告書籍を無断で翻案したものであり,被告は翻案を許諾することの対価相当額200万円の支払を免れたとして,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年2月29日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
<経緯>
S54 被告が二輪世界GP参戦
S60 原告が被告関連会社と通訳、コーディネーター契約
S63 原告書籍刊行
H11 被告社史刊行
H17 原告が被告広報部とコーディネーター契約
原告書籍:「いつか勝てる ホンダが二輪の世界チャンピオンに復帰した日」
被告社史:「語り継ぎたいこと チャレンジの50年」
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件社史部分の翻案該当性
被告社史において、原告書籍の記述20箇所について翻案をしたかどうかが争点となりました。
裁判所は、翻案の意義(著作権法27条)、判断基準について言及した上で、各記述を検討。
・表現それ自体において同一性がない
・事実であって、表現それ自体でない部分で同一性があるにすぎない
・共通する部分はありふれた表現である
などとして、各記述について、創作的表現において同一性を有するとは認められないとして、結論として翻案該当性を否定しています(8頁以下)。
--------------------
■コメント
歴史を取り扱う場合、事実を記述することになるので、ネタ本があるとしても、どれだけそこの具体的な表現から離れるか、ということはあるかと思います。
「箱根富士屋ホテル物語」事件では、原審と控訴審で判断が分かれたりと、複製や翻案の判断は微妙な部分を孕むわけですが、事実やアイデアは独占できないのが大原則で、本件の対比表を見て「勝手に使っている」と憤慨するかどうかは、二輪に関する多数の著作をもつ原告だからこそなのかな、とは感じました。
また、そもそも、平成11年刊行の社史という、20年以上前の著作を問題にするのかも、背景を知りたいところです。
ホンダ50年社史事件
東京地裁令和3.12.8令和2(ワ)2426不当利得返還請求事件PDF
別紙(記述対比表)
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 矢野紀夫
*裁判所サイト公表 2022.2.10
*キーワード:翻案、社史
--------------------
■事案
自動車会社の社史に無断で書籍が翻案されて掲載されたとして紛争になった事案
原告:フリーライター
被告:自動車会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法27条
1 本件社史部分の翻案該当性
--------------------
■事案の概要
『本件は,別紙1原告著作物目録記載の書籍(以下「原告書籍」という。)の著作者である原告が,被告によって平成11年3月25日に発行された「語り継ぎたいこと チャレンジの50年」と題する被告の社史(以下「被告社史」という。)は原告書籍を無断で翻案したものであり,被告は翻案を許諾することの対価相当額200万円の支払を免れたとして,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年2月29日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
<経緯>
S54 被告が二輪世界GP参戦
S60 原告が被告関連会社と通訳、コーディネーター契約
S63 原告書籍刊行
H11 被告社史刊行
H17 原告が被告広報部とコーディネーター契約
原告書籍:「いつか勝てる ホンダが二輪の世界チャンピオンに復帰した日」
被告社史:「語り継ぎたいこと チャレンジの50年」
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件社史部分の翻案該当性
被告社史において、原告書籍の記述20箇所について翻案をしたかどうかが争点となりました。
裁判所は、翻案の意義(著作権法27条)、判断基準について言及した上で、各記述を検討。
・表現それ自体において同一性がない
・事実であって、表現それ自体でない部分で同一性があるにすぎない
・共通する部分はありふれた表現である
などとして、各記述について、創作的表現において同一性を有するとは認められないとして、結論として翻案該当性を否定しています(8頁以下)。
--------------------
■コメント
歴史を取り扱う場合、事実を記述することになるので、ネタ本があるとしても、どれだけそこの具体的な表現から離れるか、ということはあるかと思います。
「箱根富士屋ホテル物語」事件では、原審と控訴審で判断が分かれたりと、複製や翻案の判断は微妙な部分を孕むわけですが、事実やアイデアは独占できないのが大原則で、本件の対比表を見て「勝手に使っている」と憤慨するかどうかは、二輪に関する多数の著作をもつ原告だからこそなのかな、とは感じました。
また、そもそも、平成11年刊行の社史という、20年以上前の著作を問題にするのかも、背景を知りたいところです。