最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
漫画村広告代理店事件
東京地裁令和3.12.21令和3(ワ)1333損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官 小口五大
裁判官 鈴木美智子
*裁判所サイト公表 2022.2.7
*キーワード:広告代理店、広告仲介業、幇助、注意義務、共同不法行為
--------------------
■事案
漫画村に広告掲載料を提供していたとして広告代理店の責任が争点となった事案
原告:漫画家
被告:インターネット広告代理業者ら
--------------------
■結論
請求認容
--------------------
■争点
条文 著作権法23条、民法719条2項、709条
1 被告らの幇助による共同不法行為の成否
2 被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無
3 被告らの故意又は過失の有無
4 損害論
--------------------
■事案の概要
『本件は,漫画家である原告が,インターネット上の漫画閲覧サイト(以下「本件ウェブサイト」という。)において原告の著作物である漫画が無断掲載されて原告の公衆送信権が侵害されているところ,被告らは本件ウェブサイトに掲載する広告主を募り,本件ウェブサイトの管理者に広告掲載料として運営資金の提供等をすることにより,上記公衆送信権侵害を幇助したと主張して,被告らに対し,共同不法行為者としての責任(民法719条2項,709条)に基づき,損害賠償金1100万円及びこれに対する原告の漫画が本件ウェブサイトに無断掲載された日のうち最も後の日である平成29年11月18日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H28.01 漫画村開設
H29.04 原告マンガ無断掲載
H29.05 被告らがD(メディアレップ)に広告料支払開始
H30.04 漫画村閉鎖
--------------------
■判決内容
<争点>
1 被告らの幇助による共同不法行為の成否
漫画村の運営資金源は、広告料収入がほとんど唯一のものであったとして、裁判所は結論として、被告らによる広告を出稿し、漫画村運営者側に広告料を支払っていた行為は、漫画村運営者による原告漫画の公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)であると判断しています(15頁以下)。
--------------------
2 被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無
裁判所は、被告らの共同不法行為に因って、原告漫画の公衆送信権の侵害行為が助長され容易となり、これに因って、原告が原告漫画の売上減少等の損害を被ったものであるというべきであるとして、因果関係を肯定しています(17頁)。
--------------------
3 被告らの故意又は過失の有無
裁判所は、被告らにおいては、遅くとも被告らが漫画村サイトへの広告配信サービスの提供を開始した平成29年5月の時点においては、本件ウェブサイトの属性、すなわち、本件ウェブサイトが著作権者等から許諾を得ずに違法に多数の漫画を掲載している蓋然性を認識していたものと認定。そして、人気漫画である原告漫画についても被告らにおいて、著作権(公衆送信権)侵害行為を行っているものであることを予見することが可能であったと判断。
被告らは、許諾を得ているかどうかを調査した上で、本件ウェブサイトへの広告掲載依頼を取り次ぐかどうかを決すべき注意義務を負っていたところ、本件ウェブサイトに掲載されている原告漫画について、著作権使用許諾契約が締結されているか否かを確認することを怠ったものであると判断。
結論として、被告らがDを介して本件ウェブサイトに広告を出稿し、漫画村運営者側に広告料を支払っていた行為(幇助行為)は、上記注意義務に違反した過失により行われたものと判断しています(19頁以下)。
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4 損害論
(1)財産的損害
原告漫画売上額109億4940万円×使用料相当額10%×寄与率1%=1000万円
(2)弁護士費用相当額損害
100万円
以上、合計1100万円が損害額として認定されています(22頁以下)。
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■コメント
ネット記事によると、原告は漫画家の赤松健さんで、全部認容でよかったです。
漫画村の事例判断ではありますが、広告配信サービス(アドネットワーク)における広告仲介業者の注意義務が明確にされた点でも、意義のある判決ではないでしょうか。
広告料が違法サイトの資金源になることを広告主も含めて、一層留意することが求められます。
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■参考サイト
「海賊サイトに広告を提供した広告代理店に著作権侵害の幇助責任を認めた事案[著作権裁判例紹介]令和3年12月21日東京地判」(2022.02.07)弁護士齋藤理央先生 I2練馬斉藤法律事務所
記事
「「漫画村」を“ほう助”した広告代理店「エムエムラボ」「グローバルネット」に1100万円の賠償判決、『魔法先生ネギま!』の赤松健さんが提訴」ITmedia(2021年12月21日 18時45分)
記事
赤松健先生のTwitter(2022年1月30日 午後0:36)
ツイート記事
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■参考判例
海賊版「漫画村」刑事事件
福岡地裁令和3.6.2令和1(わ)1181著作権法違反、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
記事
福岡地裁令和2.3.18令和1(わ)1008著作権法違反刑事事件
記事
漫画村広告代理店事件
東京地裁令和3.12.21令和3(ワ)1333損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官 小口五大
裁判官 鈴木美智子
*裁判所サイト公表 2022.2.7
*キーワード:広告代理店、広告仲介業、幇助、注意義務、共同不法行為
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■事案
漫画村に広告掲載料を提供していたとして広告代理店の責任が争点となった事案
原告:漫画家
被告:インターネット広告代理業者ら
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法23条、民法719条2項、709条
1 被告らの幇助による共同不法行為の成否
2 被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無
3 被告らの故意又は過失の有無
4 損害論
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■事案の概要
『本件は,漫画家である原告が,インターネット上の漫画閲覧サイト(以下「本件ウェブサイト」という。)において原告の著作物である漫画が無断掲載されて原告の公衆送信権が侵害されているところ,被告らは本件ウェブサイトに掲載する広告主を募り,本件ウェブサイトの管理者に広告掲載料として運営資金の提供等をすることにより,上記公衆送信権侵害を幇助したと主張して,被告らに対し,共同不法行為者としての責任(民法719条2項,709条)に基づき,損害賠償金1100万円及びこれに対する原告の漫画が本件ウェブサイトに無断掲載された日のうち最も後の日である平成29年11月18日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H28.01 漫画村開設
H29.04 原告マンガ無断掲載
H29.05 被告らがD(メディアレップ)に広告料支払開始
H30.04 漫画村閉鎖
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■判決内容
<争点>
1 被告らの幇助による共同不法行為の成否
漫画村の運営資金源は、広告料収入がほとんど唯一のものであったとして、裁判所は結論として、被告らによる広告を出稿し、漫画村運営者側に広告料を支払っていた行為は、漫画村運営者による原告漫画の公衆送信権の侵害行為を補助しあるいは容易ならしめる行為(幇助行為)であると判断しています(15頁以下)。
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2 被告らの行為と原告の損害との因果関係の有無
裁判所は、被告らの共同不法行為に因って、原告漫画の公衆送信権の侵害行為が助長され容易となり、これに因って、原告が原告漫画の売上減少等の損害を被ったものであるというべきであるとして、因果関係を肯定しています(17頁)。
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3 被告らの故意又は過失の有無
裁判所は、被告らにおいては、遅くとも被告らが漫画村サイトへの広告配信サービスの提供を開始した平成29年5月の時点においては、本件ウェブサイトの属性、すなわち、本件ウェブサイトが著作権者等から許諾を得ずに違法に多数の漫画を掲載している蓋然性を認識していたものと認定。そして、人気漫画である原告漫画についても被告らにおいて、著作権(公衆送信権)侵害行為を行っているものであることを予見することが可能であったと判断。
被告らは、許諾を得ているかどうかを調査した上で、本件ウェブサイトへの広告掲載依頼を取り次ぐかどうかを決すべき注意義務を負っていたところ、本件ウェブサイトに掲載されている原告漫画について、著作権使用許諾契約が締結されているか否かを確認することを怠ったものであると判断。
結論として、被告らがDを介して本件ウェブサイトに広告を出稿し、漫画村運営者側に広告料を支払っていた行為(幇助行為)は、上記注意義務に違反した過失により行われたものと判断しています(19頁以下)。
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4 損害論
(1)財産的損害
原告漫画売上額109億4940万円×使用料相当額10%×寄与率1%=1000万円
(2)弁護士費用相当額損害
100万円
以上、合計1100万円が損害額として認定されています(22頁以下)。
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■コメント
ネット記事によると、原告は漫画家の赤松健さんで、全部認容でよかったです。
漫画村の事例判断ではありますが、広告配信サービス(アドネットワーク)における広告仲介業者の注意義務が明確にされた点でも、意義のある判決ではないでしょうか。
広告料が違法サイトの資金源になることを広告主も含めて、一層留意することが求められます。
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■参考サイト
「海賊サイトに広告を提供した広告代理店に著作権侵害の幇助責任を認めた事案[著作権裁判例紹介]令和3年12月21日東京地判」(2022.02.07)弁護士齋藤理央先生 I2練馬斉藤法律事務所
記事
「「漫画村」を“ほう助”した広告代理店「エムエムラボ」「グローバルネット」に1100万円の賠償判決、『魔法先生ネギま!』の赤松健さんが提訴」ITmedia(2021年12月21日 18時45分)
記事
赤松健先生のTwitter(2022年1月30日 午後0:36)
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■参考判例
海賊版「漫画村」刑事事件
福岡地裁令和3.6.2令和1(わ)1181著作権法違反、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
記事
福岡地裁令和2.3.18令和1(わ)1008著作権法違反刑事事件
記事