最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

CADソフト海賊版販売事件

大阪地裁令和3.11.9令和3(ワ)3208損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官    杉浦一輝
裁判官    峯健一郎

*裁判所サイト公表 2021.11.16
*キーワード:損害論、消滅時効、損益相殺、過失相殺

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■事案

オートデスク製品の海賊版を販売した者の損害論が争点となった事案

原告:CADソフト開発販売会社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法114条3項、民法724条

1 被告販売行為による不法行為の成否
2 被告の故意又は過失の有無
3 損害の発生及びその額
4 損益相殺、過失相殺、消滅時効の成否

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■事案の概要

『本件は,機械や構造物の設計,製図等のCAD機能等を有するアプリケーションプログラム(以下「原告製品」という。)の著作権者である原告が,被告は,原告の許諾を受けずに複製された原告製品の海賊版製品(以下「本件海賊版製品」という。)について,インターネットオークションサイト(以下「本件サイト」という。)で入札を募り,落札者に対し,本件海賊版製品を販売したと主張して,著作権(複製権,譲渡権等)侵害の不法行為(民法709条)を理由に,著作権法114条3項に基づき,損害合計11億6059万6750円の一部である6000万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成30年10月25日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 』

<経緯>

H26 被告がヤフオクで海賊版を販売
R03 被告が著作権法違反等罪により有罪判決
R03 原告が本訴提起

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■判決内容

<争点>

1 被告販売行為による不法行為の成否

被告は、海外サイトにおいて原告製品の海賊版を無料でダウンロードし、オークションサイトにおいて原告製品に係る本件海賊版製品の入札を募って各落札者に対して本件海賊版製品を販売したと裁判所は認定。かかる被告販売行為が原告の著作権(複製権、譲渡権)を侵害し、不法行為を構成することは明らかであると判断しています(7頁以下)。

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2 被告の故意又は過失の有無

被告に原告の著作権侵害についての故意があったことは明らかであると裁判所は判断しています(8頁)。

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3 損害の発生及びその額

(1)著作権法114条3項に基づく使用許諾料相当の損害

原告製品の永久ライセンス版の定価をもって、原告が原告製品の著作権の行使につき受けるべき価額であると認めるのが相当であると裁判所は判断。損害額を合計10億5509万6750円と認定しています(8頁以下)。

(2)弁護士費用相当の損害

弁護士費用相当額損害 1億0550万円(10頁)

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4 損益相殺、過失相殺、消滅時効の成否

被告の損益相殺、過失相殺の主張は認められていません(10頁以下)。
また、原告は、被告が本件海賊版製品を出品した当時、被告に対する損害賠償請求が可能な程度に損害及び加害者を認識していたとして、原告の損害賠償請求はその頃から3年の経過により時効消滅した旨、被告は主張しました。
しかし、裁判所は、原告が夥しい数の原告製品の海賊版がネットオークションサイトに出品されている状況を抽象的に認識したからといって、そのことから被告に対する損害賠償請求が可能な程度に損害及び加害者を知ったものとは認められないと判断。
また、原告が大阪府警察から原告製品の海賊版が本件サイトに出品されていることについて、告訴する意思の確認等を受けた令和2年9月18日以降に本件訴えに係る損害賠償請求の損害及び加害者を知ったものと認められると判断。被告の消滅時効についての主張も認められていません(11頁以下)。

結論として、一部請求額である6000万円の請求が全部認容されています。

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■コメント

オートデスク社のAutoCAD製品かと思われますが、その海賊版販売で刑事事件にもなった事案の損害論の事例となります。