最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

性描写イラスト事件(控訴審)

知財高裁令和3.9.30令和3(ネ)10036著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 菅野雅之
裁判官    中村 恭
裁判官    岡山忠広

東京地裁令和3.3.30令和1(ワ)30833著作権等の侵害に基づく削除等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    横山真通
裁判官    奥 俊彦

*裁判所サイト公表 2021.10.13
*キーワード:イラスト、翻案、アイデア、著作物性

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■事案

性描写を内容とするイラストと文章の翻案権侵害性が争点となった事案

控訴人(1審原告) :個人
被控訴人(1審被告):個人

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法23条、27条

1 翻案権 、公衆送信権、送信可能化権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,原判決別紙原告作品目録記載1の文章(以下「原告文章」という。)及び同目録記載2−1ないし2−3のイラスト(以下「原告イラスト」といい,原告文章とあわせて「原告作品」という。)を制作して,ツイッター上の自らのアカウントに投稿した控訴人が,被控訴人がインターネット上のウェブサイトに掲載した原判決別紙被告作品目録記載1−1ないし1−3のイラスト(以下「被告イラスト」という。)及び同目録記載2の文章(以下「被告文章」といい,被告イラストとあわせて「被告作品」という。)は著作物である原告作品に依拠して制作されたものであり,被告作品をウェブサイトに掲載した行為は原告作品に関する控訴人の翻案権,公衆送信権・送信可能化権及び同一性保持権を侵害するものである旨主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条に基づいて,上記ウェブサイトに被告作品を掲載した全ての記事の削除を求めるとともに,(2)不法行為による損害賠償請求権に基づいて,逸失利益等394万6758円及びこれに対する不法行為の後である令和元年12月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『原判決は,被告作品はいずれも原告作品を翻案したものではなく,また,被告作品は原告作品とは別の著作物であって同一性保持権を侵害するものではない旨判断して,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴をした。』(1頁以下)

<経緯>

H30.12 原告が原告イラストをツイッターに掲載
H31.01 被告が被告文章を被告サイトに掲載
R01.05 原告が原告文章をツイッターに掲載
R01.06 被告が被告イラストを被告サイトに掲載

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■判決内容

<争点>

1 翻案権 、公衆送信権、送信可能化権侵害の有無

原告作品と被告作品は、いずれも身長差のある設定の2人の登場人物が、一般的には困難と思われている体位で性行為を行っている描写を内容とするものでした。
原審では、裁判所は翻案や同一性保持権の意義について言及した上で、原告文章と被告イラスト、また、原告イラストと被告文章を対比して検討。
原審は、描写設定自体はアイデアにすぎず、表現それ自体ではなく、また、表現としてみたとしても平凡かつありふれたものであるとして、創作性がない部分で同一性があるにとどまると判断。
結論として、被告イラストは原告文章を翻案したものではなく、また、被告文章は原告イラストを翻案したものではないと判断していました。
控訴審も、原審の判断を維持して控訴を棄却しています(5頁以下)。

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■コメント

両作品のイラストや文章が別紙添付されていないので詳細が分かりませんが、「ONE PIECE」に登場するキャラクター設定(ルフィ、ロー)を利用した性的行為の描写を内容とするイラストと文章のようです(控訴人の補充主張 3頁以下参照)。