オーサグラフ世界地図事件(対慶応義塾)−著作権 共同著作権確認請求事件判決(知的財産裁判例集)−


最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

オーサグラフ世界地図事件(対慶応義塾)

東京地裁令和3.6.4令和2(ワ)25127「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    小川 暁
裁判官    矢野紀夫

*裁判所サイト公表 2021.6.25
*キーワード:確認の利益、著作者、地図

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■事案

オーサグラフ世界地図の著作者性が争点とされた事案

原告:幾何学分野研究者
被告:慶応義塾大学

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■結論

請求却下

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■争点

1 確定の利益の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,別紙3の(1)記載の「AuthaGraph Map」世界地図(以下「本件地図」という。)が原告及び被告の設置する慶應義塾大学大学院の准教授であるB(以下「B」という。)の両名を発明者とする作成原理・作成方法を用いて作成された共同著作物であることの確認を求める事案である。』

<経緯>

R2.10 原告が被告大学とBを提訴
R3.04 Bと分離(別件訴訟)

B:慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授

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■判決内容

<争点>

1 確定の利益の有無

確認訴訟での即時確定の利益の有無について、裁判所は、

「本件においては,Bによる講義の内容が「オーサグラフ世界地図はBが発明したものである」というものとなったこと,上記講義と同内容の論文が学術論文誌に掲載されたこと,本件ウェブサイト内に本件地図とともに本件地図はBが発明したものである旨の説明文が掲載されたことについて,それらが被告に起因するものであることを認めるに足りる証拠はない。また,被告は,本件地図に係る著作権又は著作者人格権が自らにあるとは主張しておらず,今後,被告がこのような主張をすることをうかがわせる事情も認められない。そうすると,原告の有する権利又は法的地位に存在する危険又は不安が被告に起因するものであるとはいえない。」

として、原告と被告大学との間で原告及びBが本件地図に係る著作権及び著作者人格権を有することを確認することについて、即時確定の利益が認められないと判断。本件訴えは不適法、却下されています(4頁以下)。

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■コメント

オーサグラフ世界地図は、ウィキペディアによると、「各地域を比較的歪みの少ない形と正しい面積比率で表すことのできる世界地図投影法として考案された」もので、画像を見ると、長方形の右端に南極が描かれているような世界地図です。