最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ライブバー「X.Y.Z.→A」実演家事件
東京地裁令和3.4.16平成30(ワ)36307損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 吉野俊太郎
裁判官 三井大有
*裁判所サイト公表 2021.6.24
*キーワード:ジャスラック、約款、演奏の自由
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■事案
自作楽曲が演奏できなかったシンガーソングライターらがジャスラックを提訴した事案
原告:演奏家ら
被告:ジャスラック
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法113条11項
1 本件利用申込み拒否1の違法性等
2 本件約款の内容に係る違法性等
3 著作物の管理に係る違法性等
4 原告X2の請求(本件利用申込み拒否2の違法性等)
5 原告X3の請求(本件利用申込み拒否3の違法性等)
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■事案の概要
『原告X1が,著作権等管理事業者である被告に対し,(1)被告が同原告によるライブハウス「Live Bar X.Y.Z.→A」(以下「本件店舗」という。)における演奏利用許諾申込みを拒否したことが,同原告の演奏者としての権利,演奏の自由,著作者人格権を侵害する不法行為(第1の不法行為)に,(2)被告が,著作権信託契約約款(以下「本件約款」という。)において,原告X1が作詞・作曲した楽曲を自ら使用することの留保を認めず,同原告に不公正な取引契約を強いてきたことが,同原告の演奏の自由,著作者人格権を侵害する不法行為(第2の不法行為)に,(3)被告の楽曲管理の方法が不適切であるため,演奏した楽曲の使用料が同原告に配分されなかったことが,その著作権及び著作者人格権を侵害する不法行為(第3の不法行為)にそれぞれ該当するとして,上記第1の不法行為について,慰謝料100万円,得べかりし使用料相当額210円及び弁護士費用10万円,上記第2及び第3の不法行為について,各慰謝料50万円及び弁護士費用5万円並びにこれらに対する遅延損害金(うち220万円に対する平成29年1月1日から及びうち210円に対する平成28年5月12日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前。以下同じ。)所定の年5分の割合による金員)の支払』(以下、略)を求める事案
(2頁以下)
<経緯>
H21.05 店舗営業開始
H25.11 供託手続
H28.03 B、Cとの別訴(東京地方裁判所平成28年3月25日判決)
H28.05 原告X1が利用許諾申込
H28.10 別訴控訴審(知財高裁平成28年10月19日判決)
本件利用申込み拒否1:
『原告X1は,平成28年5月1日付けで,被告に対し,本件店舗で予定する同年6月9日のライブに「夏が恋しくて」,「散歩に行こう!」及び「is this really」(以下「本件3曲」という。)を含む被告の管理楽曲12曲を使用する旨の演奏利用許諾申込み(以下「本件利用申込み1」という。)をしたが(甲2),被告は,同年5月12日付けの書面をもって,本件店舗の「使用料相当額の清算が未了である現状に鑑み,貴殿からの演奏利用許諾のお申込みを受け付けることができません」として,同申込みの受付けを拒否した(以下「本件利用申込み拒否1」という。甲1)。』
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■判決内容
<争点>
1 本件利用申込み拒否1の違法性等
(1)著作権等管理事業法16条の「正当な理由」の有無について
原告らは、本件利用申込み拒否1は著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(33頁以下)。
(2)演奏の自由の侵害について
原告らは、本件利用申込み拒否1は憲法の保障する原告X1の演奏の自由を侵害する違憲な行為であると主張しましたが、裁判所は認めていません(39頁)。
(3)著作者人格権の侵害について
原告らは、原告X1の要望に反する本件利用申込み拒否1は、原告X1が作詞・作曲した曲について著作権法113条11項に基づいて、その著作者人格権の侵害とみなされると主張しましたが、裁判所は認めていません(40頁)。
(4)本件3曲に関する権利侵害について
原告らは、原告X1が本件3曲に係る実質的な受益者としての地位にあり、又は、被告に対して応諾強制権を有することを根拠として、本件利用申込み拒否1が違法であると主張しましたが、裁判所は認めていません(40頁以下)。
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2 本件約款の内容に係る違法性等
原告らは、原告X1が本件利用申込み拒否1によって自らが作詞・作曲した本件3曲さえも演奏することができなかったのは、被告が本件約款上、自らの著作物を使用する権利を留保することを認めず、不公正な取引方法を強いているためであると主張し、これが不公正な取引方法として原告X1に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(42頁以下)。
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3 著作物の管理に係る違法性等
原告らは、被告がライブハウス等との利用許諾契約において所定の包括的利用許諾契約以外の契約を認めておらず、個々の演奏者からの利用許諾申込みの受付けを拒否しているため、原告X1は自己の著作物の利用状況を把握できず、正当な著作権使用料の配分を受けることができなかったものであり、被告による係る著作物管理方法は不適切かつ違法な管理方法であり不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(43頁以下)。
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4 原告X2の請求(本件利用申込み拒否2の違法性等)
原告らは、本件利用申込み拒否1と同様、本件利用申込み拒否2も著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(45頁以下)。
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5 原告X3の請求(本件利用申込み拒否3の違法性等)
原告らは,本件利用申込み拒否3についても,著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(46頁以下)。
結論として、原告らの請求は全部棄却されています。
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■コメント
ジャスラックに対する不満、不信を訴訟手続の中で表現するとすれば、こうした争点になるのかな、といったところです。
ちなみに、原告の、のぶよしじゅんこさんの楽曲を試聴してみると、とても穏やかな、そよぐ風のようなギターによる演奏です。
dミュージック
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■過去のブログ記事
ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)
知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10041著作権侵害差止等請求控訴事件
控訴審記事
ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(原審)
東京地裁平成28.3.25平成25(ワ)28704著作権侵害差止等請求事件
原審記事
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■参考サイト
「JASRACの許諾拒否は「合法」、自作曲のライブできなかった音楽家が敗訴」
(2021/4/16(金) 18:16配信 弁護士ドットコムニュース)
ヤフージャパンニュース
ライブバー「X.Y.Z.→A」実演家事件
東京地裁令和3.4.16平成30(ワ)36307損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 吉野俊太郎
裁判官 三井大有
*裁判所サイト公表 2021.6.24
*キーワード:ジャスラック、約款、演奏の自由
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■事案
自作楽曲が演奏できなかったシンガーソングライターらがジャスラックを提訴した事案
原告:演奏家ら
被告:ジャスラック
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法113条11項
1 本件利用申込み拒否1の違法性等
2 本件約款の内容に係る違法性等
3 著作物の管理に係る違法性等
4 原告X2の請求(本件利用申込み拒否2の違法性等)
5 原告X3の請求(本件利用申込み拒否3の違法性等)
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■事案の概要
『原告X1が,著作権等管理事業者である被告に対し,(1)被告が同原告によるライブハウス「Live Bar X.Y.Z.→A」(以下「本件店舗」という。)における演奏利用許諾申込みを拒否したことが,同原告の演奏者としての権利,演奏の自由,著作者人格権を侵害する不法行為(第1の不法行為)に,(2)被告が,著作権信託契約約款(以下「本件約款」という。)において,原告X1が作詞・作曲した楽曲を自ら使用することの留保を認めず,同原告に不公正な取引契約を強いてきたことが,同原告の演奏の自由,著作者人格権を侵害する不法行為(第2の不法行為)に,(3)被告の楽曲管理の方法が不適切であるため,演奏した楽曲の使用料が同原告に配分されなかったことが,その著作権及び著作者人格権を侵害する不法行為(第3の不法行為)にそれぞれ該当するとして,上記第1の不法行為について,慰謝料100万円,得べかりし使用料相当額210円及び弁護士費用10万円,上記第2及び第3の不法行為について,各慰謝料50万円及び弁護士費用5万円並びにこれらに対する遅延損害金(うち220万円に対する平成29年1月1日から及びうち210円に対する平成28年5月12日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前。以下同じ。)所定の年5分の割合による金員)の支払』(以下、略)を求める事案
(2頁以下)
<経緯>
H21.05 店舗営業開始
H25.11 供託手続
H28.03 B、Cとの別訴(東京地方裁判所平成28年3月25日判決)
H28.05 原告X1が利用許諾申込
H28.10 別訴控訴審(知財高裁平成28年10月19日判決)
本件利用申込み拒否1:
『原告X1は,平成28年5月1日付けで,被告に対し,本件店舗で予定する同年6月9日のライブに「夏が恋しくて」,「散歩に行こう!」及び「is this really」(以下「本件3曲」という。)を含む被告の管理楽曲12曲を使用する旨の演奏利用許諾申込み(以下「本件利用申込み1」という。)をしたが(甲2),被告は,同年5月12日付けの書面をもって,本件店舗の「使用料相当額の清算が未了である現状に鑑み,貴殿からの演奏利用許諾のお申込みを受け付けることができません」として,同申込みの受付けを拒否した(以下「本件利用申込み拒否1」という。甲1)。』
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■判決内容
<争点>
1 本件利用申込み拒否1の違法性等
(1)著作権等管理事業法16条の「正当な理由」の有無について
原告らは、本件利用申込み拒否1は著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(33頁以下)。
(2)演奏の自由の侵害について
原告らは、本件利用申込み拒否1は憲法の保障する原告X1の演奏の自由を侵害する違憲な行為であると主張しましたが、裁判所は認めていません(39頁)。
(3)著作者人格権の侵害について
原告らは、原告X1の要望に反する本件利用申込み拒否1は、原告X1が作詞・作曲した曲について著作権法113条11項に基づいて、その著作者人格権の侵害とみなされると主張しましたが、裁判所は認めていません(40頁)。
(4)本件3曲に関する権利侵害について
原告らは、原告X1が本件3曲に係る実質的な受益者としての地位にあり、又は、被告に対して応諾強制権を有することを根拠として、本件利用申込み拒否1が違法であると主張しましたが、裁判所は認めていません(40頁以下)。
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2 本件約款の内容に係る違法性等
原告らは、原告X1が本件利用申込み拒否1によって自らが作詞・作曲した本件3曲さえも演奏することができなかったのは、被告が本件約款上、自らの著作物を使用する権利を留保することを認めず、不公正な取引方法を強いているためであると主張し、これが不公正な取引方法として原告X1に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(42頁以下)。
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3 著作物の管理に係る違法性等
原告らは、被告がライブハウス等との利用許諾契約において所定の包括的利用許諾契約以外の契約を認めておらず、個々の演奏者からの利用許諾申込みの受付けを拒否しているため、原告X1は自己の著作物の利用状況を把握できず、正当な著作権使用料の配分を受けることができなかったものであり、被告による係る著作物管理方法は不適切かつ違法な管理方法であり不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は認めていません(43頁以下)。
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4 原告X2の請求(本件利用申込み拒否2の違法性等)
原告らは、本件利用申込み拒否1と同様、本件利用申込み拒否2も著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(45頁以下)。
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5 原告X3の請求(本件利用申込み拒否3の違法性等)
原告らは,本件利用申込み拒否3についても,著作権等管理事業法16条の「正当な理由」を欠いた違法なものであると主張しましたが、裁判所は認めていません(46頁以下)。
結論として、原告らの請求は全部棄却されています。
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■コメント
ジャスラックに対する不満、不信を訴訟手続の中で表現するとすれば、こうした争点になるのかな、といったところです。
ちなみに、原告の、のぶよしじゅんこさんの楽曲を試聴してみると、とても穏やかな、そよぐ風のようなギターによる演奏です。
dミュージック
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■過去のブログ記事
ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)
知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10041著作権侵害差止等請求控訴事件
控訴審記事
ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(原審)
東京地裁平成28.3.25平成25(ワ)28704著作権侵害差止等請求事件
原審記事
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■参考サイト
「JASRACの許諾拒否は「合法」、自作曲のライブできなかった音楽家が敗訴」
(2021/4/16(金) 18:16配信 弁護士ドットコムニュース)
ヤフージャパンニュース