最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

聖教新聞無断転載事件

東京地裁令和3.4.23令和2(ワ)27196損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官    小川 暁
裁判官    矢野紀夫

*裁判所サイト公表 2021.6.1
*キーワード:損害論

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■事案

新聞掲載の画像や記事を無断転載した事例

原告:宗教団体
被告:原告元会員

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、20条1項、114条3項、民法1条3項

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告が著作権を有する別紙1写真目録記載の各写真(以下,同目録の番号に対応させて「本件写真1」などといい,併せて「本件各写真」という。),別紙2編集著作物目録(1)記載の各新聞紙面(以下,同目録の番号に対応させて「本件紙面1」などといい,併せて「本件各紙面」という。)及び別紙3編集著作物目録(2)記載のPDF形式の電子ファイル(以下「本件ファイル」という。)をそれぞれ複製したものを,被告がその管理運営するウェブサイト内に掲載したことによって本件各写真,本件各紙面及び本件ファイルに係る原告の著作権(自動公衆送信権)を侵害し,また,その際,被告が本件紙面4及び本件紙面6に掲載された各記事をそれぞれ左右に概ね2分割して複製した画像データを上記ウェブサイト内に掲載したことによって本件紙面4及び本件紙面6に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害したとして,不法行為に基づく損害賠償として,合計100万8000円(著作権侵害に対する著作権法114条3項による使用料相当額の損害合計70万8000円,著作者人格権侵害による無形損害合計20万円,弁護士費用10万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年11月22日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

(1)自動公衆送信権侵害性

聖教新聞に掲載された画像や記事を被告が運営するサイトに無断で転載した行為について、裁判所は自動公衆送信権を侵害すると判断しています(12頁以下)。
なお、被告は、引用(32条1項)に該当するなどと反論しましたが、裁判所は認めていません。

(2)同一性保持権侵害性

被告の行為は、新聞紙面上に掲載された一つの記事を紙面上の写真や文章が分断されるような形で分割し、そのように左右に分割された記事の画像をあえて上下に配置して掲載することによって紙面上の記事の一覧性を損なわせているとして、裁判所は、被告の一連の行為は、原告の意思に反して原告の著作物を切除し、変更するものであるとして、原告の同一性保持権を侵害すると判断しています(13頁以下)。

なお、被告は、本件損害賠償請求が権利濫用に当たると反論しましたが、裁判所は認めていません(15頁以下)。

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2 損害論

(1)著作権侵害 小計32万円(114条3項)

(ア)本件各写真の自動公衆送信権侵害

年額1万5000円×2年間掲載×使用点数4=12万円

(イ)本件各紙面の自動公衆送信権侵害

年額8000円×2年間掲載×使用点数11=17万6000円

(ウ)本件ファイルの自動公衆送信権侵害

年額8000円×3年間掲載×使用点数1=2万4000円

(2)著作者人格権侵害 小計4万円

(3)弁護士費用相当額損害 4万円

合計 40万円(16頁以下)

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■コメント

無断転載した点数や掲載期間の長さからそれなりの損害額が認定されていますが、損害額の算定にあたり、報道写真のレンタルフォトの使用料などが勘案されています。