最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

競艇勝舟投票券自動購入ソフト事件

大阪地裁令和3.1.21平成30(ワ)5948損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官    杉浦一輝
裁判官    島村陽子

*裁判所サイト公表 2021.3.8
*キーワード:プログラム、複製、翻案

   --------------------

■事案

競艇の勝舟投票券を自動的に購入するソフトウェアの翻案権侵害性などが争点となった事案

原告:ソフト開発者ら
被告:ソフト開発会社ら

   --------------------

■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項10号の2、21条、27条、114条2項

1 原告プログラムの著作物性
2 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか
3 権利者の許諾
4 被告らの共同不法行為責任
5 損害の発生及び損害額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,競艇の勝舟投票券(以下「舟券」という。)を自動的に購入する等の機能を有するソフトウェア(以下「原告ソフトウェア」という。)に係るプログラム(以下「原告プログラム」という。)について著作権を共有する原告らが,被告らが制作し,販売していた同様の機能を有するソフトウェア(以下「被告ソフトウェア」という。)に係るプログラム(以下「被告プログラム」という。)は,原告プログラムを複製又は翻案したものであり,被告らは被告ソフトウェアを販売して利益を得たと主張して,著作権法114条2項に基づき,被告ら各自に対し,著作権侵害の共同不法行為による損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
 被告有限会社エーワンリサーチ(以下「被告エーワン」という。)は,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出せず,請求原因事実を争うことを明らかにしない。』
(2頁)

<経緯>

H19   原告が「ボートスナイパー」販売
H27.11 原告がOEM「SPECTER9」制作、提供
H28.05 被告ソフト販売

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告プログラムの著作物性

裁判所は、原告プログラムの著作物性を肯定しています(著作権法2条1項10号の2 14頁以下)。

   --------------------

2 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか

裁判所は、被告プログラムは被告P4が訴外P7より入手した原告プログラムについて、被告P3において逆コンパイルを行うと共に難読化を解除して期待値と称する機能を追加した以外は、逆コンパイルによって得られた原告プログラムの機能をそのまま利用したものであるとして、少なくともそのまま利用した部分においては被告プログラムは原告プログラムを複製したものということができると認定。
また、より勝率が高くなることが期待される買目を計算して推奨し、舟券を自動購入する機能を追加した点を捉えれば、翻案にあたると判断。
結論として、被告プログラムの作成は、原告プログラムについての原告らの著作権を侵害するものであると判断されています(16頁以下)。

   --------------------

3 権利者の許諾

被告らは、原告プログラムについてはこれを開発したP7が権利者であり、被告P4は原告プログラムを複製し改変することについて、P7の許諾を得た旨反論しました。
この点について、裁判所は、原告らはワイブキーによりコピープロテクトを施した上で原告ソフトウェアをP7に交付しその都度代金の支払いを受けており、P7が原告らより原告プログラムの著作権を譲り受けた事情はなく、また、P7の許諾自体が認められないとして、被告らの主張を認めていません(17頁以下)。

   --------------------

4 被告らの共同不法行為責任

結論として、被告らは被告プログラムの作成及び被告ソフトウェアの販売について共同不法行為責任を負うと認定されています(18頁以下)。

   --------------------

5 損害の発生及び損害額

被告ソフトウェア69本×販売価格60万円=4140万円
被告ソフトウェア1本×販売価格100万円= 100万円
合計4240万円(著作権法114条2項)

(18頁以下)


   --------------------

■コメント

BoatSniper(ボートスナイパー)で検索すると、原告運営と思われるサイトがヒットします。
自動化ツールですと、株式、FX(為替)といった投資分野のツールでも紛争事案を見かけます。