最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
JOYFIT24店舗デザイン事件
東京地裁令和3.1.28平成30(ワ)38078等業務委託料請求事件PDF
別紙
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 棚井 啓
裁判官 佐藤雅浩
*裁判所サイト公表 2021.3.5
*キーワード:店舗デザイン、業務委託契約、ビジュアルアイデンティティ、キャラクター、使用許諾
--------------------
■事案
コインランドリーやヘッドスパ店舗のデザインやキーコンセプトの制作業務委託契約を巡る紛争
本訴原告・反訴被告:広告デザイン制作会社
本訴被告・反訴被告:フィットネスジム運営会社
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■結論
本訴一部認容、反訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、27条、114条3項、112条
1 コインランドリー事業について基本(店舗)デザインの制作についての報酬額の合意が成立していたか
2 本件スウェットパンツについて原告に報酬請求権が発生しているか
3 用賀店店舗設計費の合意が成立していたか
4 本件店舗外観用イラスト使用行為について原告が許諾していたか
5 モモクマに関する静止画、動画、編集画像及びイラストの利用についての合意内容
6 本件アニメーションイラスト使用行為についての原告の翻案権侵害の有無
7 原告が本件着ぐるみを被告に引き渡す義務があるか(反訴)
8 原告が被告から受領した金員をAにキックバックをしていたことによる損害賠償請求権(信義則上の債務不履行又は不法行為)の成否
9 解除原因又は無効原因の有無及びそれらに伴う損害額等
--------------------
■事案の概要
1 本訴
『本訴は,原告が,被告に対し,以下の各請求をする事案である。
ア コインランドリーの店舗のデザイン制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料201万9600円及び遅延損害金の支払
イ フィットネスジムの店舗の施設仕様,タオル,チラシ,ユニフォームの制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料894万1649円及び遅延損害金の支払
ウ ヘッドスパの店舗の内装設計についての業務委託契約に基づく業務委託料154万4400円及び遅延損害金の支払
エ ヘッドスパの店舗の外観に用いる原告が著作権を有するイラスト(別紙著作物目録1記載の各イラスト。以下「本件店舗外観用イラスト」という。)について,複製権又は翻案権の侵害を理由とする著作権法112条1項,2項に基づく侵害行為の停止,侵害行為によって制作した物の除去及び将来の侵害行為の防止等
オ 上記エの著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償金62万4000円及び遅延損害金の支払
カ 原告が著作権を有するイラスト(別紙著作物目録2記載の各著作物)について,翻案権の侵害を理由とする著作権法112条1項,2項に基づく侵害行為の停止,侵害行為によって制作した物の除去及び将来の侵害行為の防止等』
2 反訴
『反訴は,被告が,原告に対し,以下の各請求をする事案である。
(主位的請求)
ア 事業イメージを統一するためのキークリエイティブと呼ばれる一連のデザイン群等の制作及び納品に係る合意に基づく成果物の引渡し,それを被告の広告媒体に自由に利用できることの確認及びイラスト(別紙被告物件目録2記載のイラスト)を被告の広告媒体に自由に利用できることの確認
イ 上記アの成果物の引渡しを正当な理由なく拒んだことを理由とする債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償金200万円の支払
ウ A(以下「A」という。)に対してマージン名目で金銭を支払っていたことを理由とする準委任契約の善管注意義務違反(債務不履行),請負契約に付随する信義則上の義務違反(債務不履行),被告の不法行為又はAとの共同不法行為に基づく損害賠償金672万8383円の支払
(予備的請求)
エ 上記アのデザイン群等の制作及び納品に係る合意についての信頼関係破壊に基づく解除若しくは説明義務違反に基づく解除による原状回復請求権に基づく損害賠償金1億3685万5889円(うち2000万円についての一部請求)又は錯誤による意思表示の無効による不当利得返還請求権に基づく不当利得金831万6000円の支払』
(3頁以下)
<経緯>
H29.10 コインランドリー店舗デザイン設計見積り
H29.11 フィットネス事業ブランディング業務受託
H30.01 「モモクマ」着ぐるみ撮影、チラシ納品
H30.05 店舗外観用イラスト制作
H30.07 ヘッドスパ店舗デザイン企画見積り
H30.08 フィットネスタオル、チラシ制作、納品
R01.07 「モモクマ」イラストのアニメ使用
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■判決内容
<争点>
1 コインランドリー事業について基本(店舗)デザインの制作についての報酬額の合意が成立していたか
被告は、フィットネスジムにコインランドリーを併設することを検討、新しいコインランドリー事業の店舗のデザイン等の制作を原告に依頼しました。
原告は、コインランドリーの店舗のデザイン業務の業務委託料について、各店舗のデザインの基礎となる「基本(店舗)デザイン」(マスターデザイン)の制作についての報酬額を498万9600円(税込)とする合意が成立していた旨主張しました。
この点について、裁判所は、交渉の経緯、各見積書の内容や支払い方法、施工状況などを勘案。
結論としては、甲2見積書(2)に記載された、原告の被告に対するコインランドリーの店舗のデザイン制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料201万9600円(税抜187万円)及び遅延損害金の支払の請求には理由があると判断されています(24頁以下)。
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2 本件スウェットパンツについて原告に報酬請求権が発生しているか
トレーニングウェアのデザインに瑕疵があるかどうかが争点となりましたが、裁判所は仕事が未完成であるとか、瑕疵があるとの被告の反論を認めず、原告の報酬請求を認めています(30頁以下)。
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3 用賀店店舗設計費の合意が成立していたか
被告は、被告がヘッドスパ事業に関する用賀店の内装の設計を依頼したのはインテリアデザイン会社であって原告ではなく、原告に関する手数料について合意をした事実はないと反論しましたが、裁判所は、被告が注文者、原告が元請業者、インテリアデザイン会社が下請業者とする合意があったと認定しています(39頁以下)。
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4 本件店舗外観用イラスト使用行為について原告が許諾していたか
原告が制作したイラストがヘッドスパ店舗の外観に使用されていました。
被告は、原告に対して本件ロゴブックの対価を支払っており、そこには本件ロゴブックのロゴマークと連続性を有する本件店舗外観用イラストの使用の対価も含まれると反論しました。
この点について、裁判所は、
「本件店舗外観用イラストは,本件ロゴブックに記載された樹木全体のロゴマークの一部を切り出した上で,それと小さなロゴマークやキャッチコピーを組み合わせるなどしたものであり,樹木の一部分である枝葉が特に印象に残る形で表現されている,全体としてまとまりのある表現であり,樹木全体を表現する本件ロゴブックに記載されたロゴマークとは別の著作物ということができる。被告は本件ロゴブックの対価を支払っているが,被告に対し,本件ロゴブックに記載されているのとは異なる著作物である本件店舗外観用イラストについての使用許諾がされたとは認められない。」
などとして、原告の許諾の存在を否定しています(40頁以下)。
結論として、原告のイラストに関する複製権(著作権法21条)侵害、使用料相当額損害(114条3項)、弁護士費用相当額損害などを認定しています。
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5 モモクマに関する静止画、動画、編集画像及びイラストの利用についての合意内容
被告のフィットネス事業のキャラクターとして、ピンク色の熊「モモクマ」イラストが原告によって制作されました。
被告は、原告との間では少なくとも黙示的にモモクマに関するイラスト、静止画、動画、レタッチ済の静止画を被告の広告媒体などに自由に利用できる旨の合意があったと主張しました。
この点について、裁判所は、キークリエイティブ開発によって制作されたモモクマのイラスト、写真と、それらを利用して制作される個別具体的な物品や広告は、別個のものであるという理解を前提として取り扱われていたと認定。
結論として、モモクマのイラスト、静止画等について、原告が納品したモモクマのイラスト、写真が使用された物品やウェブサイトを被告が使用することを超えて、そのイラストや静止画自体を被告が原告が納品した物品やウェブサイト以外で使用することは合意されていたとは認められないと裁判所は判断しています(45頁以下)。
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6 本件アニメーションイラスト使用行為についての原告の翻案権侵害の有無
モモクマイラストをアニメーション化した本件アニメーションイラストの使用行為について、被告は有償で制作されて納品を受けたイラストを利用しているにすぎず、使用許諾がされていると反論しました。
この点について、裁判所は上記の合意内容の認定の通り、原告と被告との間ではモモクマのイラストを自由に使用できる合意はなく、被告による本件アニメーションイラスト使用行為は原告の本件モモクマ著作物についての翻案権(著作権法27条)を侵害するものであると判断しています(48頁以下)。
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7 原告が本件着ぐるみを被告に引き渡す義務があるか(反訴)
被告は、原告が平成30年1月26日に行われた本件撮影会で使用された本件着ぐるみ、本件撮影会で撮影された静止画の元データ(TIFFデータ)、編集作業後の静止画データ、動画のデータを引き渡す旨の合意があったと主張しました(49頁以下)。
この点について、裁判所はこうした合意の存在を認めず、被告が主張する債務不履行に基づく損害賠償請求を否定しています。
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8 原告が被告から受領した金員をAにキックバックをしていたことによる損害賠償請求権(信義則上の債務不履行又は不法行為)の成否
コンサルタントAへのマージン15%の支払について、結論としては、原告がマージン分を上乗せして被告に報酬を請求したことを前提とした原告の信義則上の義務違反又は不法行為上の注意義務違反は認められないと裁判所は判断しています(51頁以下)。
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9 解除原因又は無効原因の有無及びそれらに伴う損害額等
原告がコンサルタントAに対してキックバックをしていたことなどにより信頼関係が破壊されたことは原告と被告との間の契約の解除事由になる、また利用範囲についての説明義務違反が解除事由になる、さらに、錯誤無効の反論を被告はしましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(53頁以下)。
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■コメント
被告のフィットネスジムは街中でよく見かけますが、フィットネス事業や美容事業のブランディング契約、ビジュアル・アイデンティティ制作契約に関する紛争となります。
会員向けコインランドリーサービスは金町店が第1号施工店のようですが、現在でもサービスが継続しているか、サイトからはわかりませんでした。
こうした契約紛争に接すると、デザイン制作(制作費)と制作物の利用(使用料)は、予算作成にあたり、現場担当者はいちど分けて考えるクセを付ける必要があると感じるところです。
なお、今年に入って、大阪高裁判決に続き、デザインコンセプト企画制作を巡る契約上の紛争に関する裁判例の公開が続きました。
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■過去のブログ記事
ビジュアルアイデンティティ(VI)制作委託契約事件(控訴審)
大阪高裁令和3.1.21令和2(ネ)597著作権侵害差止等請求控訴事件
記事
JOYFIT24店舗デザイン事件
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別紙
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*裁判所サイト公表 2021.3.5
*キーワード:店舗デザイン、業務委託契約、ビジュアルアイデンティティ、キャラクター、使用許諾
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■事案
コインランドリーやヘッドスパ店舗のデザインやキーコンセプトの制作業務委託契約を巡る紛争
本訴原告・反訴被告:広告デザイン制作会社
本訴被告・反訴被告:フィットネスジム運営会社
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■結論
本訴一部認容、反訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、27条、114条3項、112条
1 コインランドリー事業について基本(店舗)デザインの制作についての報酬額の合意が成立していたか
2 本件スウェットパンツについて原告に報酬請求権が発生しているか
3 用賀店店舗設計費の合意が成立していたか
4 本件店舗外観用イラスト使用行為について原告が許諾していたか
5 モモクマに関する静止画、動画、編集画像及びイラストの利用についての合意内容
6 本件アニメーションイラスト使用行為についての原告の翻案権侵害の有無
7 原告が本件着ぐるみを被告に引き渡す義務があるか(反訴)
8 原告が被告から受領した金員をAにキックバックをしていたことによる損害賠償請求権(信義則上の債務不履行又は不法行為)の成否
9 解除原因又は無効原因の有無及びそれらに伴う損害額等
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■事案の概要
1 本訴
『本訴は,原告が,被告に対し,以下の各請求をする事案である。
ア コインランドリーの店舗のデザイン制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料201万9600円及び遅延損害金の支払
イ フィットネスジムの店舗の施設仕様,タオル,チラシ,ユニフォームの制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料894万1649円及び遅延損害金の支払
ウ ヘッドスパの店舗の内装設計についての業務委託契約に基づく業務委託料154万4400円及び遅延損害金の支払
エ ヘッドスパの店舗の外観に用いる原告が著作権を有するイラスト(別紙著作物目録1記載の各イラスト。以下「本件店舗外観用イラスト」という。)について,複製権又は翻案権の侵害を理由とする著作権法112条1項,2項に基づく侵害行為の停止,侵害行為によって制作した物の除去及び将来の侵害行為の防止等
オ 上記エの著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償金62万4000円及び遅延損害金の支払
カ 原告が著作権を有するイラスト(別紙著作物目録2記載の各著作物)について,翻案権の侵害を理由とする著作権法112条1項,2項に基づく侵害行為の停止,侵害行為によって制作した物の除去及び将来の侵害行為の防止等』
2 反訴
『反訴は,被告が,原告に対し,以下の各請求をする事案である。
(主位的請求)
ア 事業イメージを統一するためのキークリエイティブと呼ばれる一連のデザイン群等の制作及び納品に係る合意に基づく成果物の引渡し,それを被告の広告媒体に自由に利用できることの確認及びイラスト(別紙被告物件目録2記載のイラスト)を被告の広告媒体に自由に利用できることの確認
イ 上記アの成果物の引渡しを正当な理由なく拒んだことを理由とする債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償金200万円の支払
ウ A(以下「A」という。)に対してマージン名目で金銭を支払っていたことを理由とする準委任契約の善管注意義務違反(債務不履行),請負契約に付随する信義則上の義務違反(債務不履行),被告の不法行為又はAとの共同不法行為に基づく損害賠償金672万8383円の支払
(予備的請求)
エ 上記アのデザイン群等の制作及び納品に係る合意についての信頼関係破壊に基づく解除若しくは説明義務違反に基づく解除による原状回復請求権に基づく損害賠償金1億3685万5889円(うち2000万円についての一部請求)又は錯誤による意思表示の無効による不当利得返還請求権に基づく不当利得金831万6000円の支払』
(3頁以下)
<経緯>
H29.10 コインランドリー店舗デザイン設計見積り
H29.11 フィットネス事業ブランディング業務受託
H30.01 「モモクマ」着ぐるみ撮影、チラシ納品
H30.05 店舗外観用イラスト制作
H30.07 ヘッドスパ店舗デザイン企画見積り
H30.08 フィットネスタオル、チラシ制作、納品
R01.07 「モモクマ」イラストのアニメ使用
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■判決内容
<争点>
1 コインランドリー事業について基本(店舗)デザインの制作についての報酬額の合意が成立していたか
被告は、フィットネスジムにコインランドリーを併設することを検討、新しいコインランドリー事業の店舗のデザイン等の制作を原告に依頼しました。
原告は、コインランドリーの店舗のデザイン業務の業務委託料について、各店舗のデザインの基礎となる「基本(店舗)デザイン」(マスターデザイン)の制作についての報酬額を498万9600円(税込)とする合意が成立していた旨主張しました。
この点について、裁判所は、交渉の経緯、各見積書の内容や支払い方法、施工状況などを勘案。
結論としては、甲2見積書(2)に記載された、原告の被告に対するコインランドリーの店舗のデザイン制作等についての業務委託契約に基づく業務委託料201万9600円(税抜187万円)及び遅延損害金の支払の請求には理由があると判断されています(24頁以下)。
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2 本件スウェットパンツについて原告に報酬請求権が発生しているか
トレーニングウェアのデザインに瑕疵があるかどうかが争点となりましたが、裁判所は仕事が未完成であるとか、瑕疵があるとの被告の反論を認めず、原告の報酬請求を認めています(30頁以下)。
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3 用賀店店舗設計費の合意が成立していたか
被告は、被告がヘッドスパ事業に関する用賀店の内装の設計を依頼したのはインテリアデザイン会社であって原告ではなく、原告に関する手数料について合意をした事実はないと反論しましたが、裁判所は、被告が注文者、原告が元請業者、インテリアデザイン会社が下請業者とする合意があったと認定しています(39頁以下)。
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4 本件店舗外観用イラスト使用行為について原告が許諾していたか
原告が制作したイラストがヘッドスパ店舗の外観に使用されていました。
被告は、原告に対して本件ロゴブックの対価を支払っており、そこには本件ロゴブックのロゴマークと連続性を有する本件店舗外観用イラストの使用の対価も含まれると反論しました。
この点について、裁判所は、
「本件店舗外観用イラストは,本件ロゴブックに記載された樹木全体のロゴマークの一部を切り出した上で,それと小さなロゴマークやキャッチコピーを組み合わせるなどしたものであり,樹木の一部分である枝葉が特に印象に残る形で表現されている,全体としてまとまりのある表現であり,樹木全体を表現する本件ロゴブックに記載されたロゴマークとは別の著作物ということができる。被告は本件ロゴブックの対価を支払っているが,被告に対し,本件ロゴブックに記載されているのとは異なる著作物である本件店舗外観用イラストについての使用許諾がされたとは認められない。」
などとして、原告の許諾の存在を否定しています(40頁以下)。
結論として、原告のイラストに関する複製権(著作権法21条)侵害、使用料相当額損害(114条3項)、弁護士費用相当額損害などを認定しています。
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5 モモクマに関する静止画、動画、編集画像及びイラストの利用についての合意内容
被告のフィットネス事業のキャラクターとして、ピンク色の熊「モモクマ」イラストが原告によって制作されました。
被告は、原告との間では少なくとも黙示的にモモクマに関するイラスト、静止画、動画、レタッチ済の静止画を被告の広告媒体などに自由に利用できる旨の合意があったと主張しました。
この点について、裁判所は、キークリエイティブ開発によって制作されたモモクマのイラスト、写真と、それらを利用して制作される個別具体的な物品や広告は、別個のものであるという理解を前提として取り扱われていたと認定。
結論として、モモクマのイラスト、静止画等について、原告が納品したモモクマのイラスト、写真が使用された物品やウェブサイトを被告が使用することを超えて、そのイラストや静止画自体を被告が原告が納品した物品やウェブサイト以外で使用することは合意されていたとは認められないと裁判所は判断しています(45頁以下)。
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6 本件アニメーションイラスト使用行為についての原告の翻案権侵害の有無
モモクマイラストをアニメーション化した本件アニメーションイラストの使用行為について、被告は有償で制作されて納品を受けたイラストを利用しているにすぎず、使用許諾がされていると反論しました。
この点について、裁判所は上記の合意内容の認定の通り、原告と被告との間ではモモクマのイラストを自由に使用できる合意はなく、被告による本件アニメーションイラスト使用行為は原告の本件モモクマ著作物についての翻案権(著作権法27条)を侵害するものであると判断しています(48頁以下)。
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7 原告が本件着ぐるみを被告に引き渡す義務があるか(反訴)
被告は、原告が平成30年1月26日に行われた本件撮影会で使用された本件着ぐるみ、本件撮影会で撮影された静止画の元データ(TIFFデータ)、編集作業後の静止画データ、動画のデータを引き渡す旨の合意があったと主張しました(49頁以下)。
この点について、裁判所はこうした合意の存在を認めず、被告が主張する債務不履行に基づく損害賠償請求を否定しています。
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8 原告が被告から受領した金員をAにキックバックをしていたことによる損害賠償請求権(信義則上の債務不履行又は不法行為)の成否
コンサルタントAへのマージン15%の支払について、結論としては、原告がマージン分を上乗せして被告に報酬を請求したことを前提とした原告の信義則上の義務違反又は不法行為上の注意義務違反は認められないと裁判所は判断しています(51頁以下)。
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9 解除原因又は無効原因の有無及びそれらに伴う損害額等
原告がコンサルタントAに対してキックバックをしていたことなどにより信頼関係が破壊されたことは原告と被告との間の契約の解除事由になる、また利用範囲についての説明義務違反が解除事由になる、さらに、錯誤無効の反論を被告はしましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(53頁以下)。
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■コメント
被告のフィットネスジムは街中でよく見かけますが、フィットネス事業や美容事業のブランディング契約、ビジュアル・アイデンティティ制作契約に関する紛争となります。
会員向けコインランドリーサービスは金町店が第1号施工店のようですが、現在でもサービスが継続しているか、サイトからはわかりませんでした。
こうした契約紛争に接すると、デザイン制作(制作費)と制作物の利用(使用料)は、予算作成にあたり、現場担当者はいちど分けて考えるクセを付ける必要があると感じるところです。
なお、今年に入って、大阪高裁判決に続き、デザインコンセプト企画制作を巡る契約上の紛争に関する裁判例の公開が続きました。
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■過去のブログ記事
ビジュアルアイデンティティ(VI)制作委託契約事件(控訴審)
大阪高裁令和3.1.21令和2(ネ)597著作権侵害差止等請求控訴事件
記事