最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

漫画「勇者のクズ」ビットトレント無断配信事件(対KDDI)

東京地裁令和3.1.26令和2(ワ)20083発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐伯良子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2021.3.4
*キーワード:発信者情報開示請求、漫画、P2P、ファイル共有ソフト

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■事案

漫画「勇者のクズ」がファイル共有ソフトのビットトレントで無断配信された事案

原告:漫画家
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条

1 原告が本件各著作物の著作権を有するか
2 権利侵害の明白性
3 本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか
4 権利行使のための必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告の著作物の複製物が被告の提供するプロバイダを経由して送信されたことによって,原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたところ,損害賠償請求権の行使のために必要であると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき,上記の権利侵害に係る発信者情報である別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各情報」という。)の開示を求める事案である』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件各著作物の著作権を有するか

原告は、「ナカシマ723」との名称で活動する漫画家及びイラストレーターであり、本件各著作物を含む「勇者のクズ」という題名の漫画(1巻1話)を創作したこと、したがって、同漫画の一部であり、人物やセリフが記載された本件各著作物の著作権を原告が有することが認定されています(4頁)。

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2 権利侵害の明白性

原告の著作物である本件各著作物を複製することにより作成された電子データが、ビットトレントを通じて氏名不詳者から送信されており、氏名不詳者によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると裁判所は判断しています(4頁以下)。

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3 本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか

プロバイダ責任制限法2条3号所定の特定電気通信役務提供者である被告が保有する本件各情報は、原告の権利の侵害に係る発信者情報であると裁判所は認定しています。

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4 権利行使のための必要性

本件は本件各情報は原告の損害賠償請求権の行使のために必要である場合であると裁判所は認定しています(6頁)。

結論として、判決が認容されています。

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■コメント

3月4日に発信者情報開示請求事件の判決が本件と併せ3件、公開されています。
いずれも原告側代理人が同じです。

・漫画「勇者のクズ」事件(対ビッグローブ) 東京地裁令和3.1.26令和2(ワ)20960
 判決文
・漫画「望まぬ不死の冒険者」事件(対ビッグローブ) 東京地裁令和3.1.26令和2(ワ)24110
 判決文

また、ファイル共有ソフトBitTorrent漫画無断配信事件(対NTTぶらら) 東京地裁令和3.2.8令和2(ワ)19976(判決記事)も平野敬弁護士がご担当です。

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■追記(2021/3/12)

東京地裁令和2.12.25令和2(ワ)20130発信者情報開示請求事件(対エキサイト)
判決文
(3/12裁判所サイト公開)

漫画「勇者のクズ」事件(対ソフトバンク) 東京地裁令和3.3.19令和2(ワ)19880発信者情報開示請求事件